15話
深夜の道路を一台のバイクが、制限速度ギリギリ、もしくは少しアウトの速度で走り抜ける。
「ねぇ、私に運転させてよ。絶対私の方が早いって」
運転する連慈の腰にしがみついた絵瑠は、何度目かのお願いをした。運転する連慈は、ハンドルをわずかに操作し、車と車のその間を抜けて行く。
ヘルメットに内蔵してあるマイクを使用しているため、二人の会話に苦労はない。私にはほぼ無関係だが。
「やだね。お前に運転させたら、着いたころには俺がダウンしちまう。だいたい、スカートじゃねぇか」
「心配してくれるんだ。でも、大丈夫! 中はスパッツだから」
大丈夫の意味が分からなかった私と連慈は嘆息する。
「ところでよ、編花は何で行っちまったんだろうな」
「あんたのこと嫌いになったんじゃないの?」
「あれは謝ったろうが。編花も気にしてないって言ってたし」
「あの子の方が大人ってことよ」
呆れたように言うと言葉を続ける。
「もしくは、家族の仇に会いに行ったのか……」
「あいつは言ったんだぜ? 復讐はダメだって」
「理想は理性の一部じゃないわ」
連慈がそうだな、と呟いた時、灯から通信が入る。
『灯よ。二人とも聞こえてる?』
「聞こえてますぜ」
「こっちも聞こえてますわ」
『こっちで調べたんだけど、やっぱり研究所に潜入された形跡はないわ。そして、上野駅付近の防犯カメラの映像に編花ちゃんらしい女の子が映ってたわ』
連慈はクソと毒吐く。
『悪い話はもう一つ。遊人との連絡がつかない。どうやら移民街で突入が始まったらしいの。十五分前に大量の不発弾が見つかったとかで、近隣住民の退去が実施されてね。遊人との連絡も一切取れてないわ』
連慈は舌打つ。
「最高のタイミングじゃないですかい」
「もし、上野に編花ちゃんいたら……」
「潜り込むのは容易だろうな」
『とりあえず二人は急いで現場に向かって。何かわかったら連絡するわ』
連慈は承諾の意を伝えるとアクセルを思い切り捻った。




