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剣と魔法どっちが強いの?  作者: HOBITTO THE ORK
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第一話

魔法、それは古来より不思議な力として崇められ、特別な人間しか使えない力・・・


そんな力を、とある世界に住んでいる人々は、生まれつき全員が使うことができた。


そんな世界は、まさに魔法の世界と呼ぶのにふさわしいだろう。


だが、その魔法の世界には一つ大きな問題があった。


強大な魔力を持ち、その力を使って人々を苦しめる魔王がいた。


人々は、魔法という特別な力を持ちながらも、その圧倒的な強さを持つ魔王に誰も立ち向かうことができなかった。


だが、そこに一人の若者が現れた。


彼の名は、ヘル・ウィザード。


ヘルは、自身の実力だけでは魔王を倒せないと考え、世界を放浪して仲間を集め、その仲間たちとともに魔王に立ち向かったのだ。


そして、ついにヘルとその仲間たちは、長い間の魔王の呪縛から人々を解放し、世界は自由にとなった。


つまり、魔王を倒したのである!


人々は、歓喜の声をあげ誰もがヘルのことを英雄と呼び讃えた。


だが、ヘルは魔王を倒すと同時に消息を絶ってしまった。


ヘルの仲間も、ヘルの行方は知らない。


そして、何百年経った今でも彼の行方は誰も知らない・・・


**********


ここは、剣の世界。


魔法の世界とは違い、この世界の人々は、生まれて間もないうちに親から剣を持たせられ、剣とともに生きていくのだ。


赤ん坊に凶器を持たせるなんて、親は何を考えているんだ!と思うかもしれないが、この世界ではこれが普通なのだ。


この世界では、剣は命と同じくらい大切なもので、死ぬ時まで片時も離すことのないものなのだ。


この世界の人に大切なものアンケートをとったら、間違いなくは剣と命が1位タイになるだろう。


お金より剣。家族より剣。それが常識だ。


まさに、生活必需品といっても過言ではない。


そんな世界の子供達は、小さな頃から剣技を磨き、お互いに競い合う。


まさに剣士にあらずんば人にあらず状態である。


そんな世界のとある村でも、やはり剣の稽古は当たり前のものとなっていた。


いつもの遊び場では、四人の少年が剣の組手をしていている。


素早い動きとそれ相応の剣技をぶつけ合い、まるで本物の試合をしているかのようだ。


この世界では、生まれて間もない頃から剣とともに生活するゆえに、たとえ小さな子供とはいえそれなりに剣を扱うことができるのだ。


だが、そんな世界にもやはり才能というものは存在する。


今組手をしているうちの一人の少年は、もう一人の組手相手である少年の剣を全て自身の剣でさばき、そして最後は相手の少年の剣を自身の剣で弾き飛ばしたのだ。


キィーン!!!


弾かれた剣は、空中をくるくると周り、二人の少年から数メートル先の地面に突き刺ささり、見ていた二人の少年はそれを呆然と眺める。


普通、剣の組手では寸止めなどで勝敗が決まる。


だから、必死に相手の攻撃をかわし、最後に一発、寸止めで決めればそれで勝ちなのだ。


だが、その少年は相手の剣を弾き飛ばし、無力化して勝利を獲得したのである。


誰が見ても、この少年の実力は、普通の子供のそれよりもはるかに上の領域というのは確実だ。


この少年の名は、無頼(ぶらい)刀磨(とうま)


刀磨は、自身の剣を背中の鞘にしまうと、先ほどの組手の際に飛ばしてしまった相手の少年の剣を拾いに行った。


相手の少年は、刀磨に対してほんの少しの恐怖と嫌悪感を抱きながら横目でその様子を見ていた。


二人の組手を見ていた少年達も、刀磨に睨みつけるような視線を向けている。


刀磨はそんなことには気づかずに、相手の少年の剣を地面から抜くと相手の少年に手渡しした。


すると、相手の少年は無言で奪い取るように剣を刀磨の手から取り、剣を鞘にしまった。


【刀磨】「また俺の勝ちだな」


自分がこの場から浮いている存在だとは気づかずに、刀磨はニコッと笑いながらそう言った。


【刀磨の相手】「当たり前だろ。お前に勝てるわけねーよ」


刀磨とは目も合わさずにそう吐き捨てると、その少年は刀磨から離れていった。


【刀磨】「なあ、他に誰か俺と試合しようよ!」


無邪気な笑顔を浮かべて残りの二人に向かって刀磨は言った。


【少年A】「俺は遠慮しとくよ。お前とやっても…な〜…」


【少年B】「僕も…同じく」


二人の少年は、刀磨の申し出を断った。


すでに刀磨と自分たちとではレベルが違いすぎることに気づいていたからだ。


【刀磨】「そんなことないって!なあ、誰かやろうよ!」


だが、刀磨は理解できなかった。彼らの刀磨に対する気持ちを・・・


そんな鈍感な刀磨に呆れたのか、先ほど刀磨に負けた少年が、背を向けたまま怒鳴り声を上げた!


【刀磨の相手】「お前しつこいんだよ!はっきり言ってさ!

気づけよ!お前浮いてんだよ!そんなに試合したいんだったら俺らみたいな雑魚とじゃなくて大人とやれよ!!!」


そう言うと、その少年は走って行ってしまい、その少年を追いかけるようにして、残りの二人もその広場からいなくなった。広場には、刀磨だけが一人ぽつんと残ってしまった・・・


そして、広場からは誰もいなくなった。


**********


残された刀磨は、しばらくしてからいつも自分が修行している森へと向かうことにした。


【刀磨】「ったく、あいつらなんなんだよ。揃いも揃って」


道の小石に八つ当たりしながら、足を動かす。


(俺が勝つに決まってるだって?やってみなきゃわかんねーだろうがよ)


刀磨はただ、みんなと遊びたかっただけなのだ。


なのに、ただ一生懸命やっただけでみんなに嫌われる意味が、彼にはまだ理解できなかった。


**********


刀磨は、森に着くと同時に、溜まっていた鬱憤(うっぷん)を晴らすべく、素早く剣を抜刀して、森の大木に向かって振り下ろした。


(ちくしょう!ちくしょう!)


いくら大人とはいえ、剣で木を斬るのにはそれ相応の実力とコツがいる。


だが、刀磨の才能はそれをあざ笑うかのように一瞬にして木をなぎ倒す。


倒された木の切断面は、とても綺麗に斬られていた。


(なんで!なんで)


刀磨はそのまま周りにある木をどんどん斬っていった。


【刀磨】「なんでみんな俺と遊んでくれないんだよ!!!」


刀磨の嘆き越えが、森じゅうに響き渡る!


そのまま木を伐採しているうちに刀磨は大きな岩を見つけた。


剣で岩を斬るなど、世界中でも名のある剣豪くらいだ。


だが、刀磨の才能はそれすらも軽く凌駕した。


肩に剣を乗せ、そのまま岩に向かって縦に振り下ろす。


次の瞬間、岩が真ん中から真っ二つに斬れた!


【刀磨】「ハハッまじかよ」


(岩斬っちゃったよ…)


自分でも、岩なんて斬れるとは思っていなかった。


剣が岩に弾かれ、そのまま転ぶと思っていた。


(俺は、こんなにも強いのか?)


だが実際には、岩は火花すら散らさずに綺麗に真っ二つになり、刀磨の愛剣は無傷のままだ。


【刀磨】「なんでも斬れるのかよ…俺」


剣を握っている手を見つめながら、自分に呆れるように刀磨は呟いた。


顔を上げた先に、湖が見えた。


【刀磨】「フフッまさかな」


刀磨は剣を握ったまま、湖に近づいていった。


湖の前に立つと、精神を集中させた・・・


(湖なんて、斬れるわけないけど、ものの試しだよな)


自身の中に眠る力を全て引き出すために。


剣を中段に構え、目を瞑る・・・


(ドクン…ドクン…今だ!)


剣と自分の鼓動が重なった瞬間、刀磨は剣を振った!


瞬間、激しい風切り音がなり、湖にまっすぐな線ができ、水紋が広がった!


そして、次の瞬間、その線を境に湖の水が二つに割れたのだ!


【刀磨】「斬れたよおい…なんでだよ。なんで俺はこんなに強いんだよ!!!」


刀磨は自分でも驚き呆れていたが、その数秒後に湖は元に戻った。


水なので一瞬は二つに分かれるがすぐに戻るのだ。


【刀磨】「はーあ。なんか腹減ったな」


剣を鞘にしまうと、先ほど自分で木を斬り倒した時にできた切り株に座り、刀磨は食事をとることにする。


目の前には先ほど一瞬だけ真っ二つににした綺麗な湖が広がっている。景色的には、ベストポジションだ。


【刀磨】「あーあ!こんなにいいとこあんのに一人で食うなんて、俺ってかわいそうだな!」


皮肉そうに湖に向かってそう叫び、腰の巾着に手を伸ばす。


巾着の中には、朝に母から作ってもらったおむすびが入っている。


巾着を開け、竹の葉に包まれているおむすびを手に取り、竹の葉を取って食べようと、竹の葉を取ろうとした時、刀磨はおむすびを落としてしまったのだ!


慌ててそれを拾おうとするが、おむすびはどんどん湖に向かって転がっていってしまう。


おむすびころりんすっトントンと、どこかで聞いたことのあるようなリズムが似合うくらいにおむすびはコロコロと転がっていく。


【刀磨】「待て!!!俺の昼飯!!!」


大きく目を見開いて叫んでも、止まるわけはないのだが、刀磨は必死におむすびを追いかけた!


おむすびが湖に落ちようとする直前で、刀磨は間一髪でおむすびをとることに成功した。


【刀磨】「よっしゃあ!俺ナイスキャッチ!」


刀磨がそう言って下を向くと、湖が広がっていた。


【刀磨】「え?え!?うわー!!」


バシャン!!!


おむすびはとったものの勢い余って刀磨は湖に落ちてしまったのだ。


剣を背負っている分、体は浮かずにどんどん水の中へと沈んでいく。


口に中に水が入り、叫ぶことすらできない。


(誰か!助けて!)


水の中で必死にもがいたが、刀磨の中の酸素がなくなり、刀磨の意識が薄れていく・・・


(俺のことを助ける奴なんて、いないよな…いっそこのまま、誰にも知られずに死んだほうが…)


すると、いきなり湖の底から白い光が現れ刀磨の体を包んだ!


薄れゆく意識の中で、刀磨はその白い光を目で捉えたが、白い光に包まれた瞬間、意識が完全になくなった・・・

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