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コッコラの実の誘惑 8

 赤黒い光と巻き上がった煙が何故か黒。

 その中で高笑いをする男が一人、勝利を確信しての笑いだ。

 彼がこれまで生きてきた中で、己よりも劣る魔力量の者に敗北するなど有り得ない。

 否、許されないのだ。

「………あぁ、やっぱ、ルリルラは残ったかぁ」

 臭気が充満していてもわかる、その気配。

 ドラクニア人特有の、強者特有の、高い魔力。

 満足そうに笑みを浮かべ、煙が晴れるのを待つ。グルダにとって、ルリルラ以外は替えのきく材料(・・)に過ぎない。

「遅いっ!」

 有り得ない声にグルダが目を見開く。

 気配はない。

 だが、もとより魔力量が低いのだ。充満する濃い臭気のような魔力の中ではわからない。しかしアレを防げるのはルリルラ以外有り得ず、あのタイミングでは絶対に間に合わなかった筈だ。

「馬鹿な…」

 だが耳に届いたそれが幻聴だとも思いたくなかった。

 充満していた魔力が薄れ始め、ぽつぽつと確認出来る存在にグルダはぎりっと唇を噛む。

 絶えているべき者が、その一撃を放たれる前と同じように在る。

 生きているがゆえの反応がそこにあり、それにともない奇妙な違和感を感じ始める。

「何だ…?」

 訝しげに呟いたグルダに、

「だったら話を通せ!」

 と、その場にある筈のない、男の声が続いた。

「そこは察する!!」

「無茶言うなっ!」

 大声で交わされる会話は、完全に2人だけで行われている。

 煙が晴れて現れてきたのは腰に両腕を当てて仁王立ちするエティの姿だったが、その少し手前に、1本の槍が突き刺さっていた。二股のそれの刃の付け根には紅い石が輝いており、不可思議な魔力を放つ槍。

 大地を抉る様子から、その槍が、エティとその背にいる女達を庇うような働きをしたのだとグルダは悟り、血が滲むほどに唇をかみ締める。

「…ふざける、なっ!」

 腹の底から憎悪をこめた声に、左によっていたエティの視線がグルダへと以降するのにあわせて、その隣に舞い降りる影。

「結界が役に立たないとは、口ばかりか。どいつもこいつも…っ!!」

「あの程度、あってもなくても変わらんだろうが」

「…なんっ!?」

 素直な感想は、火に油を注いだだけだった。

「デューってホント、空気読まないよね~」

「お前には言われたくないが」

「まぁ、いいや。後、お願いね」

「待て。よくないだろ………ったく!」

 へろりと告げて駆け出すその背に伸ばした腕が宙を切り、舌打ち一つ。

 諦めたように盛大な溜息を吐き出してから、愛槍に手をかける。

 何があったのか全く理解できていなかったルリルラもここにきてようやく状況に追いついた。どう考えても回避不能であったあの攻撃を往なしたのが、地に刺さっていたあの槍だったこと、それの持ち主が目の前の赤い髪の人物でエティと知り合いであること。

「あの、ありがとうございます。私達よりもエティさんを」

「気にしなくていい。………お前から視て、あれに援護は必要に見えるか?」

 あきれ返ったような声音に、ルリルラは視線を促す。

 そこにあるのはさきほど目にしていたそれの巻き戻しのようだった。攻勢がエティ、守勢がグルダ。グルダの表情には焦りしか見られない。

 無言が全てを物語る。

「相変わらず出鱈目すぎる…」

 ぽつりと呟かれたそれは、愚痴のようにも聞こえた。

更新が遅くなり申し訳ありません。

長くなりすぎたため、分断しました。短いです。

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