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ワーカホリック  作者: 茶ノ木蔵人
王都に響き渡る唄
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第13話:内外憂慮

「では今から言う説明を頭に入れておいて下さい。多分もう察しているとは思いますが、これに記載されているのは我が国の派閥となり、名前を書かれている者はある程度の権力を有しています。しかし全てに気を配る必要はありません。覚えて欲しいのは右下に記載されている一団の名前と爵位です」


 侑人は今さっき覚えたばかりの名前を思い浮かべ、マリアとアンナは名前の書かれた紙を食い入るように見つめる。そこには七人の名前と爵位が記載されていた。


 カーティス・スペンサー・デア・クローゼ大公(王弟)

 ファーディナンド・リースマン・オストロ・デア公爵

 サイラス・モントカ・タメルダ・アスター侯爵

 ゲオグル・フランシス・プロノイ・オストロ伯爵

 パスカル・レーライ・トアター・パラディール伯爵

 ディーン・トビー・クームズ・ブラッドリー子爵

 アラン・スウマイ・レットール・オーツ男爵


「最初に書かれているのは陛下の実の弟君であらせられる、カーティス大公殿下です。六年前にとある事件を起こし対外的(・・・)に謹慎中の身になりますので、王都へ足を運ばれる事はまずありません。しかしこの方の存在自体が少々の問題を孕んでおりますので、最初に書かせて頂きました」

「権力争い……という事なのかな?」

「マリアの言う通りです。しかし過去に起こった事件の詳細は、陛下のご意向もあり語る事はできませんのでご容赦下さい」


 一見すると今のアルクィンは穏やかな笑みを浮かべている様に見えるが、纏っている空気はその逆だ。国家機密に関する情報で、侑人達に聞かせられないものをアルクィンから聞き出すのは無理だと三人は悟った。

 そんな侑人達の雰囲気を察したアルクィンは、引き続き説明を続ける。


「次に書かれているファーディナンド公爵閣下は、セルビナ王国第一騎士団の団長を勤められており、軍階級は大将となられるお方です。陛下の母方の伯父にあたり、カーティス大公殿下のお后様のお父上でもあられ、後見人も兼ねていらっしゃいます」

「あー、ちょっと聞きたい事があるのじゃが質問しても良いかの?」


 何やら難しそうな表情を浮かべたアンナが、アルクィンの説明を中断させる。

 視線を向けつつ頷いたアルクィンの姿を確認したアンナは、そのまま続けて質問を投げかけた。


「セビルナ王国の王位継承権は、男子直系という認識でよいのかの?」

「基本的にはアンナの言う通りです。例外的に未婚の姫君でしたら王位継承権は発生しますが、降嫁された際には失われ、一度失われた王位継承権が復活する事はございません。仮にですが女王陛下としてご即位される場合は、女王陛下というご身分で婿を取る形になります」

「カルロス王の母君は公爵家の出となり、ご本人には継承権は無いという認識で良いかの?」

「デア公爵家は王族の外戚にあたりますが、王位継承権はないですね」

「カーティス大公のご子息は? それとカルロス王は未婚だと聞き及んでおるが、カルロス王のご子息に当たる者はおるのかの?」

「カーティス大公殿下には、双子の男女のお子様がいらっしゃいます。まだ幼くはありますが、健やかにお育ちになっているようです。陛下に関しては以前のご婚約者様が病没して以来、その様な方がいらっしゃいませんので、必然的にご子息もいらっしゃいません。困った事なのですが……」


 矢継ぎ早に質問を重ねたアンナが一息吐く。表情は未だに晴れていなかったが、何やら思うところがありそうだ。

 この場に居る全員の目がアンナに注がれている。場の空気を敏感に察したのか、アンナは徐に口を開いた。


「という事は、ファーディナンド公爵とやらは王位継承権を持っておらぬが、カルロス王以外の有力な王位継承権所持者を手中に収めている……という事になるのじゃな?」

「その通りです。とは言いましても私個人の考えではありますが、ファーディナンド公爵閣下は信用に値する方だと思っております。ですが閣下を取り巻く状況を考えますと、アンナの言う通り注意せざるを得ません」

「信用に足る根拠は何かの?」

「一言で言えば曲がった事が大嫌いな性格をしてらっしゃいます。姑息な手段で利用しようとファーディナンド公爵閣下に近づいたら最後……」


 アルクィンは苦笑いを浮かべながら、己の首をかき切る様な素振りを見せる。

 どうやらファーディナンド公爵の人柄は、実直かつ過激だと思われる。お近づきにはなりたくないが、敵にはもっと回したくない人物という事か。


「まあ人柄はどうであれ、姑息な相手にうまい事こやつを使われたら厄介な相手になりうるの。頭が良ければいいのじゃが、悪い場合はとことん面倒そうじゃ」


 自由気ままにファーディナンド公爵を評するアンナの発言は、まさに失礼極まりないものだった。しかし言っている内容に間違いは無く、最悪の事態を想定するととんでもないピンチに陥りかねない相手だ。

 マリアは思わずアルクィンの顔を見る。するとアルクィンになんとも言えない、かなり難しそうな表情を浮かべていた。


「知性という括りで考えれば、ファーディナンド公爵閣下はかなり優秀な部類に入ります。しかし柔軟性という観点で考えますと……」

「頑固なお爺さんって事なのかな?」

「マリアの評価で正しいですね……ご本人の前ではとても言えませんが。後もう一つの欠点といいますか厄介な部分といいますか、そこが少々判断に苦しむところになりまして……」

「厄介な部分って何なのですか?」

「ええ、ファーディナンド公爵閣下は敬虔なハルモ教信者でもあるのですよ。しかもハルモ教正教会とも近しい立場です」


 マリアとアンナの脳裏にペッカートの姿が浮かび、一斉に苦い顔をする。敬虔なハルモ教信者と聞いてそんな表情を浮かべるのは、黒髪の勇者の従者としてどうかとは思うが、苦手な者は苦手なのだ。

 そんな二人をフォローするかのように、アルクィンは言葉を紡いでいく。


「セビルナ王国軍には亜人族の者も数多くおりますが、その者達からもファーディナンド公爵閣下はある程度慕われておりますよ。厳しすぎるという文句は時々耳にしますが」

「軍務と宗教を切り分ける程度の才覚は持っておるという事じゃな」

「ファーディナンド公爵閣下に関してはそうですね。ですがそれ以下に書かれている者達を一言で表すならば、ハルモ教正教会を重視し、カーティス大公殿下を新たな国王に担ぎ上げたいと考えている一派と言えるでしょう」

「いっその事、全員を粛清してしまえばいいのではないかの? 名前が判っているなら容易いことじゃろうに」

「今のところは状況証拠しか無いのです。しかも彼らはハルモ教正教会や人族至上主義者達と近しい立場ですから、下手に手を出すとあちらこちらに禍根を残す事となってしまいます。現段階ではファーディナンド公爵閣下の良心と指導力に期待しつつ、余計な軋轢を避ける事が精一杯の情勢ですね」

「うわー、あっちこっちにハルモ教正教会が絡んでいるのね。なんか嫌になってきたよ」


 アルクィンの説明を聞いているマリアは、あからさまに嫌そうな顔をしている。アンナも眉間に皺を寄せているので、内心ではかなり不機嫌そうだ。

 そんな中、先程から一言も発していない侑人だけは別の表情を浮かべていた。腕を組んだまま机の上の一点を見つめ、何やら真剣に考えている。


「陛下は色々な考えを持つ者が居るのは当たり前だと仰っていて、いたって暢気に構えていましたが、今回状況が変わりましたので色々と手を打つ事になるでしょう。しかし陛下のご意志にそぐわないという理由だけで排斥すれば、いずれこの国には陛下を諌める者が居なくなる余り良くない未来が待ち受けてしまいます。それ以前に陛下は自分に反抗する者を好ましく思っている節さえあり、私もどのように対応すればいいのか頭を悩ませています」

「王の持つ器量が大きすぎる事の弊害じゃの。どんな考えの人間であれ使える者は使うという姿勢は好ましいのじゃが、今の状況だといささか不都合の方が大きいかもしれん」

「例えばですけど、私から見るとゲオグル伯爵閣下は武を全面に押し出しすぎて危なっかしいとしか思えないのですが、陛下はそんな性格を気に入りあれこれ仕事を押し付けています。考えなしに動くのでミスも多いのですが、ミスを叱責するやり取りさえ楽しんでいるようです」

「それはまた豪気な性格じゃの。アルクィンの気苦労は絶えんじゃろうがな」


 クーラント魔国の第一王女として国政に関わってきた過去を持つアンナは、豪放なカルロス王の下で色々と苦労しているアルクィンに同情しているようだ。

 まあ、アンナの父であるクーラント魔国の国王、ケットハルト・ストレング・ケトラーもかなり豪快な漢なので、アンナ自身も身に覚えがあるのかもしれないが。


「とにかく陛下のご意志は尊重していきたいのですが、彼らの思想がかなり過激なのは事実です。人族以外を一応認めているハルモ教の教義を快く思っておらず、それを変えようと水面下で働きかけているようです。とはいってもあまり上手くいっていない様ですが」

「ハルモ教正教会の考えはどんな感じなんですか? おじーちゃんがセビルナの司教になるから少し心配なんです。私も賛成しちゃったので、いまさらなんですけど……」

「現状は静観といったところですね。ただでさえ今の教義が人族主導ですので、それをさらに推し進めると国内外への波及が大きすぎるといった意見が大勢を占めているようです。我が国のように亜人族でも能力次第で登用する国家もありますので、それに配慮しているのではないかと思われます」

「一気に亜人族排斥の流れになる訳ではなさそうじゃの。少しだけ安心できたかもしれん」

「仮にも八百年以上続いている流れですから、それを変えるにはかなりのきっかけがないと無理ですね。しかしそういった面で考えると、ユートが現れた今があちらにとっても好機となっているのかもしれません」

「そうなると、カーティス大公を担ぎ上げようとしている一派の動きが気になるところだの」

「そうですね。今までは比較的大人しくしていましたが、黒髪の勇者光臨というこの機会に何かの動きを起こすかもしれません。また、現状は静観しているハルモ教正教会ですが、こちらも一枚岩とは言えませんし、急進派と呼ばれる派閥が内部にあると私は考えています。この二つが連動して動くと少々厄介――」

「ちょっと質問しても良いか?」


 今まで黙ってアルクィンの説明を聞いていた侑人が突如口を開く。

 説明の途中で腰を折られる形になったが、アルクィンは笑顔を浮かべながら右手を侑人に差し出し、言葉の続きを促した。


「俺の考えは外れて欲しいんだけど、ひょっとするとマリアやアンナに危害が加えられる可能性があったりするのか?」

「それは大丈夫です……。と言いたいところですが、可能性を否定できません。セビルナ王国の庇護下に入る事で、ティルト村に居た頃よりは確実に安全にはなりますが、万難を排するというところまでは正直厳しいかと思います」

「やっぱりそうか。黒髪の勇者と亜人族の従者って組み合わせを歓迎する勢力があるなら、認めないって勢力が何かしてくるかもしれないってのは当たり前の事だよな。ハルモ教正教会だけがちょっかい出してくるって考え自体が甘すぎなのか……」

「陛下がこの部屋にユート達を呼んだ最大の目的は、それを伝える事だったと思います。私も陛下から目的を聞かされた訳ではありませんが、『俺がこうやって呼び出さなかったら、予備知識もなしにユート殿達は有象無象の相手をする羽目になっていたのだぞ』と仰っていたので間違いないかと」


 黒髪の勇者である侑人の身の安全は今のところ保障されそうだが、今度はマリアやアンナの安全が脅かされそうになっていた。

 しかしこの問題は、仮に侑人がハルモ教正教会へと赴いたとしても解決されるものではなく、もっと根本的な部分を変えていかないと駄目そうだ。


「マリアとアンナを俺から遠ざければ何とかならんかな……。あー、駄目だ。いまさらそんな事しても余計に悪化しそうな気がする」

「ティルト村での一件で、マリアとアンナの存在は周知の事実となっていますから、いまさら離れても危険が増すだけですし、それ以上にかなり大きな弊害が起こるでしょうね」

「大きな弊害? ってまさか……」

「ええ、マリアとアンナをいまさら引き離せば、黒髪の勇者はやはり亜人族を認めてはいなかったと吹聴されるでしょう。そうなると余計にマリアとアンナを危険に晒す事になります。しかも多分それだけでは済まされず、亜人族への差別がより一層厳しいものとなりそうですから、まさに急進派の思う壺ですね」

「やっぱり。あーもー! いっその事、山奥に引き篭もるかな」

「どこかに引き篭もるとしても、マリアとアンナも一緒に連れて行かないと駄目ですね。私が敵対勢力なら、二人を人質にしてユートを呼び出しますから。アンナを人質にするのはかなり大変そうですけど」


 侑人の存在が公になってしまった時の対応が、今になって色々な制約を課してきている。その事に今まで全く気づけなかった侑人は、己の迂闊さに頭を抱えて考え込んでしまった。

 しかしそんな侑人を元気づけたのは、やはりこの二人の存在だった。


「いまさらユート一人で解決しようって考えるのは、ちょっと頂けないかな」

「このたわけめ。そもそもユートだけに任せておったら、わらわは不安で眠れなくなるわ」

「かといって、私やアンナだけがユートの味方って訳でもないけどね」

「その通りじゃ。身近な存在だけで考えても、ヨーゼフ殿やアルクィンとその取り巻き達もおるじゃろう。そして幸いな事にカルロス王までがわらわ達の身を案じてくれておるのじゃぞ。いまさら一人で悩むなど大馬鹿者がする事じゃ」


 慌てて顔を上げた侑人に、皆の視線が突き刺さる。とても暖かくも厳しいその視線は、今の侑人にとって何物にも代えられない財産だ。

 一人で考え込み解決しようとしてしまった侑人は、ばつの悪そうな顔をして頭を掻いている。素直な言葉が喉まで出掛かっているが、照れもありなかなか口に出せない。

 そんな侑人の心境を察したアルクィンがいち早く助け舟を出す。


「まあ、いまさら過去を後悔しても何も変わりません。今後どうすればいいかを前向きに考えましょうか」

「ああ、そうする。皆、力を貸してくれ」

「勿論だよ。私に何ができるか判らないけど頑張るよ」

「謀略の類なら結構得意じゃぞ。先手必勝じゃろうが後の先だろうが、わらわに任せておけば良いのじゃ。久々に腕が鳴る状況じゃな。ククク……」

「なんかアンナが怖いんだけど……」

「生き生きしてるよね……」


 指折り数えながら物騒なことを考え始めたアンナが少々気になるが、後が怖いので今はアルクィンの話に集中しようと侑人は考え視線を向ける。

 侑人の視線を正面から受け止めながら、アルクィンは今後の話を進めていく。


「先ほどの私の話が途中でしたが、我が国の相談役を引き受ける事自体が、敵対勢力への牽制にもなっているのです。良い雰囲気でしたから少し黙っていましたけどね」

「「えっ?」」

「そんな事じゃろうとは思っておったわい。しかし噂では聞いておったが、アルクィンはとんでもない男じゃな。敵にしておくのは勿体ないというか、先々を考えるとそら恐ろしい気がするの。アルクィン、事が済んだらわらわに仕える気はないか? 国の半分をやっても惜しくないぞよ」

「大変ありがたい評価ですが、謹んでご遠慮させて頂きます」

「じゃろうな……。カルロス王が羨ましいわい」


 アンナは既に気づいていたようだが、侑人の相談役就任には二重三重の意図が含まれていたらしい。賢王の右腕という評価は伊達でなはい。

 困難な状況を見極め効果的な策を施すアルクィンの手腕は、マグナマテル随一と言っても過言ではなかった。


「陛下のご威光を効果的に使ったまでです。正式な役職でないとはいえ、陛下の相談役やその従者に手を出す勇気はなかなか持てないはずですから。ただでさえ陛下は変わり者と見られ、行動が読めないと恐れられておりますから、相手も慎重になると思います。油断は禁物ですけどね」

「セビルナ王国に仕えているなら、なおさらカルロス王は怖いって事か。なんかアルクィンの言う事を聞いていれば、全部が何とかなるような気がしてきた」

「私もそう思うよ。アルクィンさんって味方にするとこんなに頼もしいんだね」

「ありがとうございます。そう言って頂けるのは嬉しいですけど、私もまだまだですよ」


 とにかく侑人の相談役就任以外の効果的な策は今のところない。

 その上で相手の出方を待つしかない事を確認した侑人達は、晩餐会以降の行動をアルクィンと話し合う。

 とりあえずカーティス大公の取り巻きに対しては刺激をしない程度に対応し、チャンスがあるなら情報を聞き出す事が取り急ぎの目的として設定された。


「今日まで私以外の接触がなかったのは、陛下がユート達への接見を禁止していたからです。長旅の疲れを癒して頂く為に、黒髪の勇者殿一行へ余計な話を持ち込むなと厳命しておりました。しかし本日の晩餐会はその理由が使えませんし、明日からも同じ事です。くれぐれも注意して対応して下さい」

「判った。本当にありがとう」

「私も気をつけます。私の場合はユートの側に居れば良いのかな?」

「そうですね。万が一の時に身を守ってくれる存在と一緒に居るのが一番安全ですし、その点で考えるとユートが適任です。アンナもできればそうして頂きたいのですが、戦闘能力から考えるとアンナは多分大丈夫でしょうね。ですが、くれぐれも素性を明かしてしまう様な行為だけは避けて下さい」

「判っておる。大恩ができてしまったアルクィンの頼みは守るゆえ、安心してくれて構わんぞ」


 一通りの話を終えた侑人達が和やかなやり取りをしていると、奇妙な三人組を引き連れて部屋から出て行ったカルロス王がようやく帰ってきた。カルロス王はかなりご機嫌だったが、クリスとエディエスは少し疲れたような素振りを見せている。


「……………」


 そしてガイウスは一言も喋れないほど憔悴していた。いきなりカルロス王の側近に召抱えられたあげく、ろくな説明もないまま一緒に過ごした疲労感は計り知れない。


「まあ、俺の目が黒いうちはユート殿達を悪いようにはせん。アルクィンの悪知恵もかなり役に立つからな。そうだアルクィン、晩餐会でどうすれば良いか既に考えてあるのだろう? このまま説明してくれないか」

「それを判っていて、私をこき使っているのは陛下でしょう。全ては陛下の思し召しです」


 そんな事を言いながらアルクィンは紙の束を懐から取り出し、一つをカルロス王へ手渡すと残りを侑人達に手渡した。

 その紙へは晩餐会で行うやり取りが台本形式で書かれており、既に準備は万端といった様子だ。


「色々とありがとうございます。今日の晩餐会も宜しくお願いします」

「ああ、こちらこそ頼むぞ。ユート殿が今晩の肝と言ってもいい位だからな。勿論マリア殿とアンナ殿の役目も大事だ。演技は大げさな位で丁度いい」

「俺なりに頑張ってみます」

「私も頑張ります」

「わらわに任せておれ。それより着替えはどうすれば良いのじゃ? この場で着替えるのはさすがに厳しいぞ」

「隣の続き間に衣装は用意してある。アルクィンから渡された内容を覚えながら着替えるといい。アルクィン、払った従者を呼び戻せ」

「陛下の仰せのままに」


 人数が増え賑やかになった王の私室では、晩餐会までの短い間、楽しそうな声が響いていた。

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