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ワーカホリック  作者: 茶ノ木蔵人
王都に響き渡る唄
42/45

第10話:セビルナ王との謁見

「なんじゃこりゃー!」


 王城の客室に備えられた浴室内で、侑人の叫びが響き渡る。助けたチンピラにいきなり撃たれた程ではないが、それなりの衝撃を侑人は受けているようだ。

 浴槽からお湯をすくい身体にお湯をかけようとした中途半端な体勢のまま、侑人は硬直している。マリアやアンナであればサービスシーンになっただろうが、残念ながら野暮ったい侑人のあられもない姿を見て喜ぶ者などほぼ居ない。


 ちなみに理解不能な場所で謎の美幼女との邂逅を果たし終えた直後に、侑人はベッドの上で飛び起きていた。大量にかいた汗の影響で寝巻きは身体に張り付いており、鼓動は早鐘の様な状態だった事も付け加えておく。

 朝食にはかなり早く、寝なおすには微妙に足りない時間帯に飛び起きた侑人がまず行ったのは、先程の出来事が夢なのか現実なのかの確認だった。

 侑人の目にまず飛び込んできたのは、暗闇に閉ざされた室内。とはいっても窓の隙間からは軟らかい光が漏れており、完全な闇とは程遠い状況だ。

 しかし窓が閉め切られ“困惑の霧(ネブラ)”によって湿度が増した室内は、屋外の温度上昇の影響をもろに受けてサウナ一歩手前の状況に陥っていた。

 ベッドに座ったまま呆然と室内を見渡しつつ、侑人は思考に没頭する。

 合わせて昨晩の痕跡が残っていないか、視覚や聴覚そして魔力を駆使して探り続けた。

 だが結局、昨晩の痕跡どころか怪しい箇所すら発見できなかった侑人は、またあの美幼女に会えた時に考えればいいやと問題を先送りしに、閉め切った窓を開け放しつつ浴室へと移動して、今の状況に陥ったのだ。


「痣? 傷?」


 侑人の視線は己の左胸に固定されている。

 異世界生活によって鍛えられた侑人は、筋肉質とまでは言えないがそれなりに締まった身体つきをしていた。修行や戦闘行為ではなく、家事や作業で付いた筋肉が主なのが侑人らしいのだが。

 侑人自身も身体つきの変化をひそかに喜んでいたりもする。服を着てしまうと判らない程度の違いだが、人に見せて誇示するものでもないし自己満足の範囲内で十分だったのだ。そして日本に居た頃と比べ、髪の長さ以外での外見上の違いはそれだけだったのだが。


「もしかして刺青? なんで? なんで?」


 侑人の左胸に、トライバルタトゥーの様な模様が刻み込まれていた。

 平凡が座右の名だと言い切ってもおかしくない侑人が、己の意思で左胸に刺青を入れる事はありえない。仮にその模様が短い二本の曲線だけだとしても、遭えて他者との違いを誇示するような真似を侑人はしないのだ。

 マグナマテルに召喚されてしまったせいで唯一無二の存在となってしまったが、侑人本人が望んで今の立場に居る訳ではない。既に黒髪の勇者として振舞う覚悟は決めたのだが、できるだけ目立たず平穏に過ごしたいなと未だに考えていたりもする。


「洗えば落ちるかな……」


 ショックから再起動した侑人は、希望的観測を口にしながら左胸を一生懸命擦り始める。しかし結果は思わしくなく、肌が赤くなりヒリヒリするまで擦ってもその模様は消えなかった。

 最後の手段として“癒しの水(サニタテム)もどき”を自身に使ってみたのだが、それでも消えなかったのだ。過去の傷跡すら消し去る侑人の“癒しの水(サニタテム)もどき”が通用しないとなると、今の時点でこの模様を消し去るのは不可能かもしれない。

 刃物で皮ごと削ぎ取れば消える可能性もあるのだが、さすがにそこまで試す気にはならないかった。生命の危機を感じる状況ならば決意できるが、現状では模様がある以外に不具合は無いからだ。

 侑人はげんなりした表情を浮かべつつ湯船に浸かると、誰に聞かせる訳でもなくボソッと呟く。


「あの幼女め……。意地でも見つけ出してやる……」


 室内には残っていなかったが、己の身体にあからさまな痕跡が残されていたのだ。昨晩起こった出来事は実際にあった事だと侑人は認識していた。

 そしてあの美幼女は正体不明であり、自分より遥かに格上の存在だとも侑人は理解していた。発している存在感は人間レベルを遥かに超え、万が一でも敵対すれば指先一つでこの世から抹消されるだろうとも。

 だが今の侑人にはそんな事は障害にならないのだ。


「刺青消すのに幾ら掛かると思ってやがるんだ! 絶対に消させるか払わさせてやる!」


 浴室に侑人の決意の言葉が響き渡る。

 理由が何であれ、相手に飲まれないで相対できる事は良い事……かもしれない。

 とにかく侑人は美幼女の正体がもう少しはっきりするまで、マリア達に相談しないと決めていた。その事が後日あるトラブルを巻き起こすのだが、美幼女に対する怒りに震えている侑人は気付いていない。




 火の月の第六週の五日。侑人とマリアとアンナは、セビルナ王国の国王、カルロス・ディートフリート・デア・クローゼに謁見する為、七階にある謁見の間の近くにある謁見待機室に集合していた。侑人達をエスコートするのはセビルナ王国宰相を勤めているアルクィンであり、先日の一件もあったため比較的和やかな雰囲気だ。

 セビルナ王都の司教候補になっているヨーゼフは、既に先日一人で謁見を済ませているのでこの場にいない。今日は現司教との引継ぎの為、城から出て教会であれこれと打ち合わせをしているのだ。

 これから司教戴冠の儀までの間は多忙を極めるので、暫くの間は別行動となってしまうが、こればかりは仕方ないと侑人達も諦めている。本当ならば侑人達の保護者を兼ねているヨーゼフには側に居て欲しかったが、そんなわがままでヨーゼフの手を煩わせる訳にはいかないのだ。

 国王の謁見が二日続けて行われるのは結構珍しい事のようで、謁見の間の周囲は何となく慌しい雰囲気で満たされている。

 侑人達の姿はかなり人目を引くのか、この部屋に移動するまでの間、通りがかる近衛兵や従者達の視線をかなり感じていた。どうやら国中で噂になっている一行の姿を、横目でチラチラと覗っていた様だ。


「私の姿ってそんなに変かな?」

「わらわの魅力に城中の者どもが夢中のようじゃな」


 正反対の言葉を発する二人の姿を見てアルクィンは少し微笑む。同じ物を着込んでいるはずなのに、全く正反対の反応をするとは二人の性格を表している様だ。

 マリアとアンナはアルクィンが用意した特注の従者服を身に着けている。今後城内ではこの格好で政務を行う事になっていた。


「お二人ともすごくお似合いです。急いで用意をしたかいがありました」

「わらわは何を着ても似合うからのぅ」

「そう……かな?」


 アンナはアルクィンに対して胸を張ってそう答え、マリアは少しオドオドしながら上目使いで侑人を見つめている。


「俺もそう思うぞ。ここまで似合う奴はなかなかいないんじゃないかな」

「ほんと?」


 マリアの顔が急に明るくなる。

 先ほどまでのオドオドしていた雰囲気はなくなり、見るからに上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら洋服の裾の辺りをいじり始めた。

 機嫌が良くなったマリアの姿を侑人は少し不思議そうに見つめ、そんな二人の姿をアンナは少し呆れたような顔をしながら見守っている。


「まあ、ユートはユートじゃから仕方ないの」

「何か言ったか?」


 多分気のせいじゃと言いながらアンナは周囲を見渡す。室内は落ち着いているのだが、扉の外では従者達が忙しそうに動き回っているのか、少し雑多な気配を感じていた。


 通常の従者服は、白を基調とした生地で作られている比較的簡素な服である。

 従者の職務は肉体労働系の仕事も多く、王城に勤めているとはいえ華美な装飾は施されていない。あくまで実務優先であり、機能性を求められた結果こういう形で落ち着いたのだ。


「少し派手かなって心配してたんだよ。私は普段こんな服を着ないからね」

「わらわにとってはまだまだ地味な領域じゃぞ」


 しかし二人に用意された特注の従者服は、従来の物と形状は同じであるが、黒を基調とした生地に金糸で刺繍が施された豪華なものである。その服は従者服でありながら周囲に圧倒的な存在感を放っていた。


 アルクィンがこの服を用意したのには、三つの理由がある。


 一つ目は、この二人が黒髪の勇者である侑人の専属従者である事を、周囲の者達にひと目で判別させる為だ。通常の従者と違ってこの二人に指示を出せるのは、基本的には侑人ただ一人である。

 アンナはともかくとして、マリアは他の人に何かを頼まれたら断る事ができず、そのまま黙って仕事をしてしまいそうだとアルクィンは考えたのだ。周囲に黒髪の勇者の専属従者である事をアピールする事により、マリアの負担を減らす意図がある。


 そして二つ目の理由だが、不用意な揉め事を避ける意味合いがあった。マリアとアンナは同世代の女性と比べて非常に整った容姿をしており、大多数の者が振り返るほどの美貌は、城に仕える男達の興味を必ず引くはずだ。

 通常の従者服を着て仕事をしていれば、その容姿に惹かれた誰かが要らぬ行動を起こすかもしれない。アンナなら一蹴しそうだが、マリアは下手をすると深く傷ついてしまう可能性がある。

 もしそのような事が起こった場合……アルクィンはその光景を想像して思わず身震いし、小さな声で独り言を呟く。


「ユートが本気で怒ると、とんでもない事になりそうですからね……」

「俺がどうかしたか?」


 アルクィンは侑人の質問に笑顔で何でもありませんと答えつつも、ハルモ教正教会に少しだけ感謝していた。

 ハルモ教正教会の関係者が侑人を襲撃した事件は喜ぶべき事ではないのだが、一連の事件のお陰で侑人とマリアがどうやらただならぬ関係であるという、非常に重要な情報を得る事ができたのだ。

 厄介な存在でも使い方によっては案外役に立つものだとアルクィンは考えている。

 二人の姿を見ているとそこまで深い関係ではない様にも見えるが、アンナの話では既に夫婦のようだという事らしい。

 嬉々としながら二人の事を話してくれたアンナの言葉を全て信じる訳にも行かないが、かといって軽々しく扱って良い問題でもないのは明白なのだ。

 順調に進んでいた事が男女間の問題で駄目になってしまった話など、巷に売るほどありふれている。それが伝承の存在である黒髪の勇者に関する内容ならば、どれだけ気を使っても無駄になる事など一つもない。


「犬も食わないとは良く言ったものです……」


 世の中で一番理屈や道理が通じない、男女の関係に関しての情報をもたらしてくれたハルモ教正教会の失敗に感謝しつつ、アルクィンは再度思考の海に潜っていく。


 アルクィンが特注の従者服を用意した三つ目の理由は、アンナの素性を出来るだけ隠す為である。

 普段のアンナは非常に軽装だ。その為ヴァンパイア族の証である、黒い羽が常に見えていたのだ。体をすっぽりと覆う従者服はアンナの羽を隠し、黒い色は白地だと透ける可能性がある黒い羽を透けさせず、目立たなくさせる効果があった。

 生態数の少ないヴァンパイア族であるアンナは人目を引く。何も対策をせず放置しておけば、誰かが不審に思い素性を詮索する可能性が出てくるはず。その結果クーラント魔国の姫君というアンナの素性がばれると、セビルナ王国どころかハルモ教法王庁教圏国家群全体を巻き込む重大な事態になるのだ。

 アンナには城内だけでなく、城外に出歩く時も背中の羽は隠して欲しいと前もって伝えてあった。その言葉に対してアンナは不用意な事態を招かないように協力すると渋々ながら納得し、常にフード付きの外套を着てくれたのだが、今の季節ではアンナの身体的な負担が大きすぎる。

 用意した従者服を気に入ってもらえなかったらどうしようという危惧は、今のアンナの喜びようを見れば杞憂である事が分かり、アルクィンは心底ホッとしていた。


「謁見の準備が整いました」


 王の準備が整った事を知らせる従者の声が響く。アルクィンは従者の言葉に軽く頷いた後、侑人達を振り返る。

 漆黒の従者服を着ているマリアとアンナはアルクィンに対して無言で頷いたが、侑人だけは少し心配そうな顔をしていた。


「俺はこの格好で本当に大丈夫なのか? めちゃくちゃ心配なんだけど」


 侑人は異世界に召喚された時に着ていた服で、カルロス王との謁見の場に臨んでいたのだ。

 下はジーパン、上はグレーのトレーナーと黒のジャケット姿という、元の世界では人ごみに石を投げれば、ダース単位で同じ様な格好をした奴にぶち当たる……好意的な表現をすれは、動きやすくラフな服装で、一国の主と会えと言われた侑人はかなり動揺している。


「大丈夫です。むしろその格好が好ましいと言えます」

「そんなもんかね……。はっきり言って普段着どころか寝間着に近い格好だぞ……」

「この世界では珍しい服装ですから、黙っていれば誰にも判りません。それに良い効果を周囲に与えてくれるでしょうから、ぜひともそのままでお願いします」

「アルクィンがそう言うならいいけどさ」


 不承不承ながら侑人も一応は納得したようだ。そんな雰囲気を察したアルクィンは、次の行動に移っていく。


「では皆さん参りましょうか。それとユートは最初に陛下へ向かってご挨拶をしなければなりませんが、堂々としかも丁寧にを心掛ける感じでお願いします。まあ、陛下には私から話を付けてありますから絶対に悪い事にはなりません。むしろ過剰な演出をしそうで怖いくらいです。最終的に今宵の晩餐会にユート誘ったら謁見は終わりになると思いますので、参加の意志をはっきりと伝えて下さい」

「判った。俺にできる範囲で頑張るよ」

「ユートの存在感を示す事が今回の主目的です。成功は間違いないですから、気楽に行きましょう。」


 アルクィンの言葉に対して皆は笑顔で頷き、それに反応するかの様に扉が開かれていく。一世一代の大舞台の幕が開いたのだ。


 八百余年ぶりにマグナマテルに召喚された、黒髪の勇者が歴史の表舞台へと躍り出る――

――この瞬間に世界の歯車が大きく動き出した。




「黒髪の勇者様御一行の御入来です」


 従者の報告を受けた謁見の間では皆の緊張感が高まっていく。伝説の存在がついに目の前に姿を現すのだ。緊張しない者の方が珍しいと言える。

 未だに侑人達と触れ合った事の無い大臣達や、王を守護する近衛兵達はあからさまに動揺していた。いつも通りの落ち着いた姿を見せるのは、王座に悠然と座るカルロス王と、両側に控え王を守護するクリスとエディエスだけという有様だ。

 謁見の間の入り口を守る近衛兵によって、重厚な扉がギギギと音を立てて開く。

 謁見の間に居る者全ての目線が扉に注がれ、宰相アルクィンの後に続いて入場してきた侑人の姿を見た全ての者の動きが完全に止まる。

 王座に座るカルロス王を涼しげな眼で見つめる黒髪の男は、誰も見た事がないような人間業とは思えないほど細かく編みこまれた服を着ていたのだ。

 縫い目もほとんど判らないほど細かく丁寧な仕上げが施されており、どこの国の王族でも着ていないような不思議な服だった。

 勇者本人は筋肉質には見えない少し長身の優男だったが、黒髪を湛えた風貌は圧巻であり、不思議な服装の雰囲気と相まって、下手をすれば周囲の者に恐怖感を与えるほどである。

 気を張っていないと自然と膝が震えてくるほどの威圧感を放つ黒髪の男は、落ち着いた様子で王の前までゆっくりと歩を進めると、王に向かって深く一礼をし言葉を発した。


「ユート・コサカです。この度は王城へお招き頂き、ありがとうございます」


 黒髪の男の声は決して大きい声ではなかった。しかし部屋中に響き渡るような澄んだ声をしている。

 侑人の特異な雰囲気に飲まれた周囲が感じる、ある意味錯覚のようなものだが、とりあえず今のところはアルクィンの狙い通り効果的に作用していた。

 その声を聞いたカルロス王は、何の言葉も発さずに王座から立ち上がる。そんな王の行動に周囲はどよめいたが、カルロス王は何も気にせず侑人の前まで歩を進めていく。

 そしてカルロス王は侑人の前まで辿り着くと、何の前触れもなくおもむろに跪いた。


「長旅でお疲れの中、我が求めに答えて下さった感謝の意を表すると共に、領民をそのお力で救ってくれた事をこの場で改めてお礼申し上げる。セビルナ王国はハルモ教の勇者様を歓迎致します」


 いきなりカルロス王から跪かれた侑人の思考は真っ白になりかけたが、アルクィンから先ほど聞いた過剰な演出という単語が頭に浮かび、何とか表面上は平静を保つ事ができた。

 この世界の正式な作法など全く判らないが、とにかく跪くのを止めて貰おうと考え、右手を差し出しながら何とか言葉を紡ぐ。


「跪くのは止めて下さい。こうして会って貰えただけで感謝している位ですから」

「御意に」


 カルロス王は差し出された右手を掴んで厳かに立ち上がる。

 その際、侑人だけに判る位の小さな笑みを浮かべたのだが、緊張感でいっぱいいっぱいになっている侑人には気づけなかった。


「歓迎の意を込めて、今宵に晩餐会を執り行おうと考えております。お疲れが残っていないようでしたら是非ご参加下さい」

「ありがとうございます。是非参加させて下さい」

「そう言って下さると、我が面子は保たれます」


 予想に反してカルロス王は、いきなり本題である晩餐会への招待を切り出してきた。参加の意志を聞いたカルロス王は満足げに頷くと、握っていた侑人の右手をそっと放す。

 王の謁見と言われていたのでかなりの長丁場を覚悟していたが、正直に言ってこの展開はありがたい。緊張感で限界に近いのを悟って予定を前倒ししてくれたカルロス王の好意に、侑人は心から感謝した。

 そんな侑人の様子をよそに、カルロス王は周囲の者達を見渡す。そして宣言するかのように、力強く言い放つ。


「黒髪の勇者様とのご歓談は、晩餐会の場で改めて行おう」

「「「仰せのままに」」」

「アルクィン、話があるから黒髪の勇者様を送り届けたら直ぐに政務室へと来い」

「陛下の仰せのままに」

「では謁見は以上だ。黒髪の勇者様とその従者殿達、まことに大儀であった」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

「うむ、賢王と名高いカルロス王と会えて光栄じゃったぞ」


 三人は各々お礼を述べ、謁見の間から退出していく。最後のアンナの態度が黒髪の勇者としての対応としてベストだった気もするが、いまさら侑人にはどうにもできない。

 しかし侑人の存在感だけで今回の謁見は成功に終わっていた。むしろ黙って立っているだけでも十分だったかもしれない。

 その証拠に、アルクィンに連れられた侑人達の姿が見えなくなると、謁見の間のあちらこちらから安堵の溜息が漏れるのであった。

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