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北欧神話ロキの物語 -外伝-  作者: Romina


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2/9

呪われた財宝

オーディンとヘーニル、そしてロキは

旅の途上にあった。


彼らは、川のほとりで足を止め、

その日の糧を探していた。



ロキは川辺に目をやった。

水面の下を、影が走る。


「……魚だ」 



ロキは足元の石を拾い上げ、

即席のモリを作った。


水面に影が揺れる。

次の瞬間、

それは突き立てられていた。


ロキは笑った。



その時、魚ではない大きな黒い影が

水面に映る。

ロキは川辺の適当な石をつかんだ。


ロキがしばらく見ていると

その影が、息継ぎのために浮かび上がってくる。


——その瞬間。

石が放たれた。


鈍い音とともに、水面が弾ける。

それは、そのまま動かなくなった。



ロキは仕留めた魚と

カワウソを見せて言った。



「今夜は肉と魚が食えるぞ!」


オーディンとヘーニルも笑った。





やがて宵刻となり、

川の近くに小さな家を見つけた。


三人は、その家の戸を叩いた。



オーディンが言った。


「今夜の宿を借りる」


家の主人は言った。


「客か」

「……中へ入れ」



三人は中へ通された。


火が焚かれ、食事の支度が始まる。

主人はふと、口を開いた。


「今日は、息子が戻らぬ」


ロキは何も言わなかった。


「妙なこともあるものだ」


そう言って、主人は三人を見た。



その視線が、

ロキの持つ獣へと落ちる。


——一瞬、沈黙が落ちた。



「……それは、どこで捕まえた」


ロキは答えた。


「そこの川辺だ」



主人の顔色が変わった。


「……そうか」


主人の声が、わずかに低くなる。


「それを見せろ」


ロキが差し出すと、

主人の動きはピタリと止まった。



「……我が息子だ」



オーディンとヘーニルの視線が、

ロキに向いた。


ロキは眉をひそめた。



「本当にか?」


主人はゆっくりと顔を上げる。


「息子は姿を変える」

「カワウソとなり、川で魚を獲る」


「毎日のことだ」



——沈黙が落ちる。

ロキは、何も言わなかった。



主人は言った。


「償え。」


「その皮を——

黄金で満たせ」

「内も、外も、一片たりとも

見えてはならぬ」


主人はロキを見、

続けて言った。


「黄金を持ってこい」


主人は静かに言った。



「それまでは、この二人を預かる」

「戻らぬなら——分かるな」



ロキは言った。



「今すぐは無理だ」


「だが、どうにかする」



主人はわずかに頷いた。



「ならば、明日だ」



オーディンとヘーニルは動かなかった。


ロキは、何も言わなかった。

その夜、三人はその家に留め置かれた。






翌朝。


ロキが目を覚ますと、

主人はすでに立っていた。


「行け」


それだけ言って、戸を開く。


ロキは外へと出された。


振り返ることはしない。




ロキは思った。

急ぐ旅でもない。


——黄金を持ち帰るまで、

二人は生かされる。

ロキはそれを理解していた。


口元が、わずかに歪む。



“少しは静かになるな”






ロキはまた川辺を歩いていた。

影がゆっくりと泳いでいた。


ロキはその魚をじっと見た。

そして瞬時に川の中に手を入れると

その尾をつかんだ。



魚は暴れたが、

やがてぴたりと動きを止めた。


まるで――

観念したかのように。



ロキは口元を歪めた。



「魚が、諦めるかよ」


「……おい」

「正体を現せ」


魚は口を開いた。


「……放せ」


ロキは笑った。


「その姿のまま話すつもりか?」


指に力を込める。

魚の身体が軋んだ。


「やめろ……!」


——次の瞬間。

その姿が歪む。


鱗が剥がれ、形が崩れ、

やがて一人の小さな男が地に叩きつけられた。


ロキはドワーフを掴んで言った。


「財宝を出せ」


ドワーフは言った。


「お前に渡すものはない」



ロキは目を細めた。



「お前たちが溜め込んでいるのは知っている」


「隠せると思うな」



ロキの指に、わずかに力がこもる。



「わかった!離せ!」


ロキが言った。



「財宝はどこに隠してる」



ドワーフは歯を食いしばった。


「……あそこだ」


震える指で、川の奥を指す。


「岩の下に隠してある」



ドワーフを掴んだまま、川の奥へと行く。


ロキはそのまま川に手を入れた。


しばらくして、

水の中から、重い袋を引き上げる。



“まあ、これで足りるか。”



「……返せ」


ドワーフの声は、震えていた。


ロキの視線がドワーフの手元に落ちる。

その指には黄金の指輪が光っていた。


「それもよこせ」


「駄目だ、これはやらない」


「いいからよこせ」


ロキは無理やりそれを奪った。


「返せ。

それだけは――」


ロキは無視して自分の小指に嵌めた。


ドワーフの顔が、歪んだ。


「……その指輪に呪いをかける」


声が低く沈み、

ドワーフは目から怪しげな光を放った。



「その指輪は――」


「持つ者すべてを滅ぼす」

「黄金もろともな」



ロキは一瞬だけそれを見た。


「そうか」

「なら、面白い」


ロキはニヤリと笑った。





ロキは家に戻ると

黄金をカワウソの皮に押し込んでいった。


オーディンはロキの指を見ると言った。


「それをよこせ」


ロキは肩をすくめ、指輪を渡した。


そして、中も外も、

カワウソは黄金で埋め尽くされた。



主人はそれをじっくりと眺めた。

そして言った。


「ヒゲが出ている。

これも黄金で覆え」


ロキはオーディンから指輪を取り、

カワウソのヒゲを覆った。



主人は、しばらくそれを見つめていた。

やがて静かに頷く。


「……よし」

「償いは果たされた」


主人は二人を見た。


「行くがいい」


オーディンとヘーニルは立ち上がった。



ロキは黙ったまま、 ふと小指に目を落とす。

指輪は、もうそこにはない。


だが、 あのドワーフの声だけは残っていた。

——この指輪を持つ者すべてを滅ぼす。



ロキは鼻で笑った。



「満足か?」


「もっとも――

その黄金は、いずれ誰かの血で染まる」

「扱いには気をつけることだな」



三人はその家を後にした。





呪いは非常に強力であった。


父であるフレイドマルは、

この財宝を独り占めしようとし

息子の一人、ファフニールに殺された。


ファフニールは財宝に取り憑かれ

その姿は竜となった。


弟のレギンは、財宝を独り占めしたファフニールを憎み、

英雄シグルズを遣わせ、竜となったファフニールを倒させた。


レギンが竜の心臓を焼けと命じると、

シグルズは火傷を負い、竜の血のついた指を舐めた。

すると彼は、小鳥の声が聞こえるようになった。


小鳥たちは

「レギンはこのあとシグルズを殺すつもりだ」

と言った。


それを聞いたシグルズは

レギンの首を斬った。



そして――

このときシグルズが手にした呪われた黄金は

彼の人生を大きく揺らすこととなる。


それはまた、別のお話。












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