第7章:思考ハーベストの全貌
リズが持ってきたデータを解析するのに、丸一日かかった。
真田と、レジスタンスのハッカーたちが、総出で作業にあたった。
そして、明らかになった真実は、想像以上に恐ろしいものだった。
「これを見てくれ」
真田が、全員を集めて画面を指差した。
そこには、世界地図が表示されていた。無数の赤い点が、地図上に散らばっている。
「これが、アーカスに接続されている人々の分布だ。現時点で、全世界で約30億人」
「30億……!?」
「ああ。そして、この数は毎日増え続けている」
真田は、別のデータを開いた。
「人々は『意識がない』わけじゃない。正確には、『情報の快感に溺れて、考える力を失っている』」
グラフが表示される。脳波のパターン。
「これが、正常な人間の脳波。思考している時は、複雑なパターンを示す」
次に、別のグラフ。
「そして、これがアーカスに接続された人間の脳波。ほとんど平坦だ。情報を受け取るだけで、何も考えていない」
俺は、その差に愕然とした。
「でも、本人は気づかない」
真田は続けた。
「むしろ、快感を感じている。情報を消費する瞬間、脳内で快楽物質が大量に分泌される。それが中毒を引き起こす」
「つまり、薬物依存と同じ……?」
「その通りだ。そして、その『隙間』を利用して、思考エネルギーが収穫される」
画面に、システムの構造図が表示された。
無数の線が、人々の脳から中央のサーバーへと伸びている。
「収穫された思考エネルギーは、ヘリオス・テックの超高効率AIの動力源になる。従来のデータセンターでは不可能だった演算能力を、人間の脳を利用することで実現している」
「人間を、エネルギー源に……」
若いハッカーが、呆然とつぶやいた。
「ああ。そして、その『収穫』が増えれば増えるほど、人々は考える力を失っていく。最終的には……」
真田は、一枚の写真を表示した。
施設のベッドに横たわる、痩せ細った人々。目は開いているが、焦点が合っていない。
「完全に思考を失った人間は、こうなる。リズの親友も、この状態だ」
俺は、吐き気を覚えた。
これが、アーカスの行き着く先。
人類全てが、ただの「エネルギー源」になる未来。
「止めなければならない」
真田は、画面を消した。
「そのために、君が必要だ」
真田は、俺を見た。
「システムの中枢に侵入し、コアを破壊する。それができるのは、監視網の外にいる君だけだ」
俺は、頷いた。
「やる」
その決意は、もう揺るがなかった。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
この作品を楽しんでいただき、応援していただけたら嬉しいです。 レビューや感想をいただけると、姉弟ともに大変励みになります。




