第4章:レジスタンスとの接触
返信は、翌日の夜に来た。
『23時。○○駅の裏通り。一人で来てください』
場所だけが書かれた、簡潔なメッセージ。
罠かもしれない。危険かもしれない。
でも、俺は行くことにした。
指定された場所は、繁華街の裏通りだった。古いビルが立ち並び、人通りはほとんどない。街灯も少なく、薄暗い。
俺は、指定された時間ちょうどに到着した。
周囲を見渡す。誰もいない。
待つこと5分。
「……あなたが、メールを送ってきた人?」
背後から、声がした。
振り向くと、フードを深く被った人物が立っていた。性別も年齢もわからない。
「そうだ」
俺は答えた。
「ついてきて」
その人物は、そう言って歩き出した。
俺は、少し迷ったが、後を追った。
裏通りを抜け、古いビルの裏口に入る。薄暗い階段を下りていく。地下?
やがて、鉄の扉の前に辿り着いた。
その人物が扉をノックする。特殊なリズム。
ガチャリ。
扉が開いた。
中から、別の人物が顔を出した。
「……新しい人?」
「ああ。確認済み」
フードの人物が答える。
「入って」
俺は、促されるまま中に入った。
扉が閉まる音。
そこは、小さな地下室だった。古いパソコンが何台も並び、ケーブルが這いまわっている。壁には、資料やメモが貼られている。
そして、5、6人の人影があった。
「よく来たな」
フードを取った人物が言った。
20代後半くらいの男性だった。鋭い目をしている。
「俺は、真田。ここにいるのは、みんな『真実を知りたい』と思ってる人間だ」
真田と名乗った男が、周囲を見渡した。
「あなたも、『無思慮病』について調べてたんだろ?」
「ああ」
俺は答えた。
「何か、おかしいと思った。ただの疲労じゃない。何かが、起きてる」
「その通りだ」
真田は、壁に貼られた資料を指差した。
「俺たちは、ヘリオス・テックを追ってる。あの企業が、何かを隠してる。『無思慮病』と、関係があるはずだ」
「証拠は?」
「まだ確定的なものはない。でも、状況証拠は揃ってきてる」
真田は、パソコンの画面を操作した。
データが表示される。グラフ、数値、文章。
「ヘリオス・テックのデータセンターの電力消費量。公式発表の3倍以上だ。しかも、『無思慮病』が広がり始めた時期と、電力消費の急増が一致している」
俺は、画面を見つめた。
確かに、グラフが急上昇している。
「それだけじゃない。ヘリオス・テックの関連企業が、脳波測定デバイスを大量生産してる。でも、その用途は公表されていない」
「脳波測定……?」
「ああ。人々の脳活動を、リアルタイムで監視できる装置だ。スマホ、ウェアラブル端末、公共施設の監視カメラ……あらゆるデバイスに組み込まれている可能性がある」
俺は、背筋が寒くなった。
「それって……まさか」
「そう。俺たちの仮説は、こうだ」
真田は、真っ直ぐに俺を見た。
「ヘリオス・テックは、人々の『意識』を、何かに利用している」
沈黙が降りた。
俺は、言葉が出なかった。
「信じられないかもしれない。でも、これが俺たちが辿り着いた結論だ」
真田は、再びパソコンを操作した。
「そして、もうすぐ決定的な証拠が手に入る。内部告発者が、接触してきた」
「内部告発者……?」
「ああ。ヘリオス・テックの元エンジニアだ。彼女は、プロジェクトの内部資料を持ち出したらしい。明日、会うことになってる」
真田は、俺に手を差し出した。
「俺たちと一緒に、真実を暴かないか?」
俺は、その手を見つめた。
ここで引き返すこともできる。普通の生活に戻ることもできる。
でも、俺は知ってしまった。
何かが、起きている。そして、それは俺たちの「考える力」を奪っている。
俺は、真田の手を握った。
「頼む」
真田は、小さく笑った。
「ようこそ、レジスタンスへ」
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
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