第3章:ネットの深淵で
その夜、俺はパソコンの前に座っていた。
「無思慮病」。
ニュースで、そう呼ばれ始めていた。全国的に広がる「意識の空白時間」の増加。集中力の著しい低下。記憶の欠落。
専門家は「現代社会のストレス」「情報過多による脳の疲労」などと説明していた。
でも、俺にはそれだけじゃない気がした。
検索窓に、キーワードを打ち込む。
「無思慮病 原因」
「意識の空白 不自然」
「スマホ 同期 集団行動」
出てくるのは、ありきたりな健康記事ばかり。
でも、検索結果の奥の方に、妙なタイトルを見つけた。
「【削除済】思考が奪われている……誰か気づいて」
クリックする。
404エラー。ページが見つからない。
削除されている。
俺は、さらに深く潜った。匿名掲示板、海外のフォーラム、アーカイブサイト。
そして、見つけた。
削除されたスレッドの断片。
『脳内で微弱な「思考の残響」が観測されている。ボーッとしている間、何かが脳から抜き取られているような……』
『ヘリオス・テックの名前が出てくる。あの企業、何か隠してる』
『データセンターの電力消費が異常。公式発表の3倍以上。何に使ってる?』
ヘリオス・テック。
世界最大級の技術開発企業。AI、クラウド、IoT……あらゆる分野で最先端を走っている。
でも、なぜその名前が、「無思慮病」と結びつくんだ?
俺は、さらに調べ続けた。
そして、ある投稿を見つけた。
『同じことを調べてる人、いますか? 安全な場所で話したい。連絡ください』
投稿日時は、1週間前。
返信はゼロ。
でも、その下に、小さく暗号化されたメールアドレスが書かれていた。
俺は、しばらく画面を見つめた。
これは、罠かもしれない。
でも、このまま何もしないで、真実が見えてくるとも思えない。
俺は、メールを送った。
『同じことを調べています。話をさせてください』
送信ボタンを押す。
画面が暗くなる。
返信が来るかどうか、わからない。
でも、俺は待つことにした。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
この作品を楽しんでいただき、応援していただけたら嬉しいです。 レビューや感想をいただけると、姉弟ともに大変励みになります。




