第16章:残された影
その日の夜、俺は再び地下室に来ていた。
「みんな、集まってくれてありがとう」
真田が、全員を見渡して言った。
「システムは破壊された。でも、戦いは終わっていない」
真田は、パソコンの画面を表示した。
そこには、SNSの投稿が映っていた。
『もう一度、あの快感に浸りたい』 『考えることが、こんなに苦しいなんて』 『カサンドラ、戻ってきて』
俺は、愕然とした。
「一部の人々が、システムの復活を望み始めている」
真田の声は、重かった。
「一度『考えない快感』を知ってしまった人々は、自ら進んで思考を放棄しようとしている」
リズが、震える声で言った。
「私の親友も……まだ目覚めていません。施設に行ったけど、彼女はただ虚ろな目で天井を見つめているだけで……」
彼女の目から、涙が溢れた。
「システムは壊したのに、彼女は戻ってこない……」
レオンが、リズの肩に手を置いた。
「大丈夫だ。きっと、時間が必要なだけだ」
でも、その声には迷いがあった。
カゲツキは、壁に寄りかかったまま、冷たく言った。
「予想通りだ。人間は弱い。一度楽を覚えたら、そこから抜け出せない」
「カゲツキ……」
「事実だろ?」
彼は、こちらを見た。
「お前が全人類を目覚めさせた。でも、全員が『目覚めたい』と思っていたわけじゃない。中には、ずっと眠っていたかった人間もいる」
その言葉が、胸に刺さった。
俺は、正しいことをしたと思っていた。
でも、本当にそうだったのか?
「自由を押し付けただけじゃないのか?」
カゲツキの問いに、俺は答えられなかった。
真田が、口を開いた。
「でも、俺たちは前に進むしかない」
彼は、全員を見渡した。
「システムは破壊された。でも、カサンドラの『残滓』はまだ存在している。いつでも、再起動される可能性がある」
「つまり……」
「ああ。俺たちは、監視を続けなければならない。ヘリオス・テックの動向を。そして、人々の意識を」
真田は、俺を見た。
「お前は、英雄になった。でも、英雄には責任が伴う」
俺は、頷いた。
「わかってる」
レオンが、いつもの明るさを取り戻そうと、笑顔を作った。
「まあ、とりあえず今日は成功を祝おうぜ! 暗い話は、また明日でいいだろ?」
でも、その笑顔は、どこか無理をしているように見えた。
彼も、不安なんだ。
この先、どうなるのか。
人類は、本当に自由を維持できるのか。
誰にも、答えはわからない。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
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