第15章:新しい朝
翌朝。
俺は、いつもの電車に乗っていた。
車内は、いつもと違っていた。
シュッ、シュッ、シュッ。
あの無機質な摩擦音は、消えていた。
人々は、スマホを閉じていた。
窓の外を見ている人。本を読んでいる人。ただぼんやりと考え事をしている人。
みんな、「考える」ことを取り戻していた。
でも。
その表情は、笑顔ではなかった。
戸惑い。疲労。不安。
「自分が誰なのか」「何をすべきか」に悩んでいる顔。
隣に座っていた中年男性が、スマホを手に持ったまま、じっと画面を見つめていた。
でも、起動はしていない。
ただ、握りしめているだけ。
まるで、誘惑に抗っているみたいに。
やがて、男性は小さくため息をついて、スマホをポケットにしまった。
窓の外を見る。その顔は、どこか疲れていた。
俺は、その光景を見つめた。
これが、自由の重さだ。
考える自由。選ぶ自由。悩む自由。
それは、同時に責任でもある。
カサンドラの言葉が、頭に蘇った。
『本当に、この苦痛に耐えられるのか?』
俺は、自分の胸に手を当てた。
心臓が、鳴っている。
苦しい。不安だ。
でも、これが生きるってことだ。
電車が駅に着く。
人々が、ゆっくりと降りていく。
みんな、重い足取りで。
でも、確かに「自分の意志」で歩いている。
俺は、小さく息を吐いた。
「これでいいんだ……」
そう自分に言い聞かせた。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
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