第10章:システム内部への侵入
意識が、溶けていく。
体の感覚が消える。重力がなくなる。
俺は、どこにいるんだ?
視界が、徐々に明るくなっていく。
そして、気づいた時。
俺は、真っ白な空間に立っていた。
「……ここが、システムの内側か」
足元を見る。床はない。でも、立っている。
上を見る。天井もない。ただ、無限に続く白い空間。
周囲には、数字と記号が流れるように浮かんでは消えていく。
0と1の羅列。プログラムコード。データの奔流。
これが、アーカスの中枢。人類の思考を収穫し、AIに供給するシステムの心臓部。
「通信確認。聞こえるか?」
耳元で、カゲツキの声がした。
「ああ、聞こえる」
「良かった。まだ通信は生きてる。でも、中枢に近づくほど、電波が不安定になる。途切れる可能性がある」
「わかった」
俺は、周囲を見渡した。
どこに進めばいい?
その時、視界の端に、光の糸が見えた。
無数の糸が、一点に向かって伸びている。
「あれが……」
「そうだ」
カゲツキが答えた。
「あれが、全人類の意識と繋がっているシステムの根幹だ。あの光の先に、コアがある」
俺は、歩き出した。
いや、歩いているという感覚ではない。意識を向けると、その方向に移動する。
不思議な感覚。
光の糸に近づくにつれ、周囲の数字の流れが速くなっていく。
そして。
「警告。侵入者を検知しました」
冷たい機械音声が、空間全体に響いた。
「排除プロセスを開始します」
次の瞬間、周囲の白い空間が赤く染まった。
無数の赤い球体が、俺を囲むように出現する。
防御プログラム。
「来るぞ!」
カゲツキの声。
赤い球体が、一斉に俺に向かって飛んできた。
「くそっ!」
俺は、意識を集中させた。
逃げろ。避けろ。
体が、勝手に動く。いや、意識が動かしている。
赤い球体をかわす。すり抜ける。
でも、数が多すぎる。
一つが、俺の腕に触れた。
「がっ……!」
激痛が走る。腕が、消えかけている。データが削られていく。
「落ち着け!」
カゲツキの声。
「お前の意識を保て! システムは論理で動く。でも、お前には感情がある。予測不能な動きをしろ!」
予測不能……。
そうだ。AIは、論理と計算で動く。
でも、俺は人間だ。
非効率な選択も、無意味な行動も、できる。
俺は、あえて防御プログラムの中心に突っ込んだ。
「何を……!?」
カゲツキの驚いた声。
赤い球体が、俺を囲む。
でも、俺は叫んだ。
「退け!」
その瞬間、俺の周囲から光が爆発した。
意識のエネルギーが、防御プログラムを吹き飛ばす。
赤い球体が、次々と消えていく。
「……まさか、感情のエネルギーを武器に?」
カゲツキの声に、わずかに驚きが滲んだ。
「論理じゃ予測できない方法だ。さすがだな」
俺は、荒い息をついた。
「先に進む」
光の糸に向かって、再び意識を移動させる。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
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