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しばらく待った。
からくり師は手鏡を見ている。
仮面のため表情はわからない。
「それで見てるんですか?」
遊海が蛇敏知に近づいていって手鏡を覗き込んでみた。
なるほど、地上が映ってる。
やはりドローンのようなものなんだなと確認。
「エェ、ソウデス。
カイダンハミツカリマセン」
う〜む、困った。
闇雲に進んでいくわけにもいかない。
なんか手はないだろうか?
「一さん、なにか聞いたりとかしてないですか?
これは想像以上に難しいです。
最初っからこんなに厳しいとは思わなかったですよ」
「う〜ん、そうじゃの···
特になにかを聞いてはおらんが···
徳川というのは方位学、風水を重視して江戸の町を作った。
そして家康様の遺骸を北に、つまりそれが江戸の町から北に位置する日光を特別な場所とした。
となると北じゃなかろうか?」
「徳川は北···
それはいいヒントかもしれませんね。
北って···」
遊海は空を見上げた。
太陽がある。
あぁっと遊海がひと言。
「一さん、ありました。
こっちです」
ほらと一さんを連れていった先は例の木の看板の前。
「これですよ、一さん。
なんでこんな所にって初めは思ってたんですが、こういうことだったんです」
文字が書かれている木製の看板の下に東西南北の看板がある。
最初は意味不明だった。
なぜこんな方位を示すような看板かと思ってた。
この方向に進めってことだったんだ。
北の方角だけ赤い矢印がついている。
「あら、ほんとじゃ。
初めから進むべき方向が示されておったんじゃな。
しかしの、この方向にまっすぐ行けるのか?」
一さんが言ってることはわかる。
なんの目印もないサバンナ地帯。
まっすぐのつもりでも斜めに進んでるかもしれない。
「それは大丈夫よ」
お六からだ。
なにか考えがあるようだ。
「なにか手はあるのかい?」と遊海は尋ねてみた。
「地面に目印を刺しながら進めばいいのよ」
あぁ、なるほど。
そうだ、それだ。
一定間隔で地面に目印をつけながら歩けば直線が維持できるだろう。
ここまではわかった。
では具体的になにを使って地面に目印を残していく?
遊海はリュックを降ろした。
なにか適当なものがないかを探さなくちゃならない。
源五郎と一さんは持ってないだろう。
お六は、もしかするとカプセル妖怪でなにか出してくれるかもしれない。
「アリマス」と力強く言ってくれたのがからくり師蛇敏知。
背中に手を回して木箱からまとめて取り出したもの。
黒地に三つ葉葵が描かれた旗。
20センチほどの竹の旗を複数手に持っている。
それにしても器用なことをする。
背中の木箱に腕を回してポンっていった感じで取っていた。
「おぉ、それは···」と一さんが感嘆の声を上げる。
源五郎とお六はふ〜んっていった感じだ。
町人である彼らにはあまり関係のない三つ葉葵。
ましてや現代人である遊海にはその「ふ〜ん」もない。
「ソラカラカクニンシナガラ、マッスグハタヲタテテイキマス」
なるほどね、上空から見て旗を立てていけばまっすぐ北に進めるってわけだ。
源五郎に言わせるとバテレンのからくり師らしいが、頼りになる人物だと遊海は思っている。
一さんが連れてくる人って頼り甲斐のある人物が多いなってとも思う。
「よし、じゃ出発じゃな。
どれくらいかかるんじゃろうか?
すぐ見つかると思うか、にいちゃん?」




