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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
段地四(だんぢよん)

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2-1

2


ついにだ。

五重塔に関しては調べられるだけ調べた。

ほとんどが一さんの調べなんだけどわかったことがいくつかある。

その中で遊海が最も驚いたことがある。

あの五重塔の空間に入ると現世での時間の流れとはまったく違うものであることが判明した。

あの五重塔で1年や2年が経過していても現世では0秒ということになるらしい。

つまりあの空間内は現世での時間がすぎることはない。

前回は短い時間だったので気づくことはなかった。

それを聞かされて遊海は内心ホッとした。

五重塔の内部は外観からは想像ができないほど広大なエリアになっている。

これは覚悟して行かなければと思っていた。

数日どころじゃ終わらないかもで長期休みを申請しなければいけないんじゃないかと考えていたところだ。

こういった時間の流れだったら、例えば午前0時に出発しても、あの中で1年がすぎていても現世に戻ってきた時は午前0時だ。

なんか、助かったよ。


遊海はこの日のために準備していた。

なんといっても生身の人間は遊海だけ。

食べものに水はどうしても必要だ。

登山用のリュックを購入している。

ただし大型のものではない。

そりゃ、大きいことにこしたことはないのだが機動性の確保もしたい。

バランスをとらなければならない。

こんな時は飲み食いのいらない幽霊っていいなと思う。


昼間は、さすがに人の目があるので夜になってからの出発になる。

夜も9時をすぎた。

周辺には誰もいない。

好き好んでわざわざ夜の墓場に集まるような物好きはいない。


お墓に偽造した異次元へのドアの前に5人がそろった。

一さんが鍵を使ってドアを開ける。

源五郎、お六、遊海、そして謎の人物。

最後に一さんが入ってきた。

全員が入ってしまうとドアは自動的に閉じてしまう。


謎の人物は一さんが連れてきた。

旗本の仲間から必ず役に立つ男だと推薦されたので一緒に来てもらった。

軽業師のような姿で背中には木箱がある。

白い仮面を被っているので人相はわからない。

一さんでさえ初めて会った謎の男。

からくり師で蛇敏知(だびんち)という名である。

なんでも江戸時代末期のからくり人形などで有名な天才機械技術者の田中久重の弟子だと自称している。

本当かどうかはわからない。

お六がう〜むといった感じで見ているのがおもしろい。


橋を渡って五重塔の入口に着いた。

お堀の水の中には魚がいるとかはないようだ。

風もないので水面は穏やか。

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