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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
影裏(えいり)

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47/52

6-2

車の周辺は血だらけだ。

自転車に乗って信号を待っていたのは渡井茉瑠(わたらいまる)(当時32歳)と長女の未来(当時4歳)。

2人とも車と神社の壁に挟まれて圧しつぶされていた。

体の半分以上は原型をとどめてなかった。

自転車もひしゃげていた。


この事故で被害にあったのは渡井親子2名と高齢女性1名が死亡。

負傷者は10名。

車を運転していたのは山形顕久(やまがたあきひさ)(当時38歳)。

同乗者なし。

山形はこの時は農林水産省の現役官僚だった。

事故の原因は居眠り運転。

本人の証言によると運転する前にカゼ薬を飲んでいた。

その薬の影響だろうと思うが、運転してる時に急に眠くなってしまった。

それがちょうど目黒大鳥神社の近くでのことだったのだろうと本人は主張していた。


現行犯逮捕されて裁判が始まった。

驚くべき展開になった。

山形としては事故のことはいっさい記憶にない、そのため謝罪に関しての言葉は最終判決が出た後になっても本人の口からは出てない。


争点になったのは危険運転致死傷罪か過失運転致死傷罪のどちらに該当するのかというところから始まった。

1審の東京地方裁判所では過失運転致死傷罪ということで2年6ヶ月という判決になった。

これを受けて世間はざわついた。

東京大学から農林水産省でのエリート官僚、上級国民だから甘すぎる判決になったんだとして国民から多くの反発の声が上がることになった。

2審の東京高等裁判所では危険運転致死傷罪として実刑12年が確定した。

それを受けて山形顕久は最高裁判所への上告はしなかった。

時間がかかるだけで判決がくつがえることはないだろうと判断したのかもしれない。

その代わり今に至るまで謝罪の言葉はいっさいない。


「むっ、なんというヤツじゃ。

自分の非を()びんとはの···

徳川の役人でも不正を働いて謝りもしなかった役人がおった。

いつの時代になっても変わらんもんじゃの」


一さんが心底あきれている。

お六も難しい顔でいる。


「この子の素性はわかった。

それとは別に、母親がいったいどこにいるのか?」


遊海は見当もつかなかった。

これが生きてる人間だったらこの世界のどこかに必ずいることになる。

亡くなっていて幽霊になってるんなら見つけることができるのか?

娘の未来ちゃんは視えているが、その母親の渡井茉瑠さんを視ることができるのか?

それに幽霊の世界のことがよくわからない。

遊海としては自信なんかない。

どうやって探し出せばいいんだとすでに混乱している。

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