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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
影裏(えいり)

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6-1

6


「にいちゃん、いるか?邪魔するぜ」と威勢よく源五郎が部屋に入ってきた。

真夏の夜、あつ〜い夜。


「あぁ、源さん。

えっ、誰?」


遊海は帰ってきたばかり。

仕事が終わって高円寺の街に出て夕ごはん。

熱いものは避けたいので冷やしきつねうどん。

それに梅干しおにぎりひとつ。

暑いからこんなもんでしょ。


「うん、実はな、また事件や。

この子のことなんよ。

独りで泣いておったのをわいが見つけたんや。

いろいろ訊いてみたんやがな、ど〜やらお母さんとはぐれてしまって探してるらしいんや。

にいちゃんも話を聞いちゃってんか」


遅れて一さんとお六が部屋に入ってきた。

こんなに暑いのに着物姿だ。

汗も出てない。

いいなぁと思う。


「困ったことになったの。

母親と会うまではずっと彷徨(さまよ)うことになってしまう。

なんとか母親を見つけんことにはのう」


一さんもかなり困っている。

それらを聞いた遊海にはちょっとひらめいたことがある。

一さんたちにはできないが遊海にならできること。

それがネット検索。

名前から、あるいはなにか検索できるような条件さえあれば少女の身許がわかるかもしれない。

ダメもとでもやってみる価値はある。


「え〜では訊いていきますね。

わかるところだけでいいからね」


少女は落ちつかないようだ。

こんな見知らぬ部屋に連れてこられたんじゃ誰だってそうなるよ。

遊海は少女の視線の高さに目を合わせてできたるだけ優しく声をかけた。

緊張をほぐすために笑顔も忘れない。

少女のすぐ後ろにお六がいる。

そのお六のほうがガチガチに緊張しているような?


「まず、お名前を教えてください。

言えますかね?」


少女のペースに合わせてゆっくりとした会話が始まった。

幽霊だから飲みものの用意もいらない。

疲れることもないだろうから休憩もいらないだろう。

遊海のほうが大変だ。


女の子の名前は渡井未来(わたらいみらい)

名前はすぐ教えてもらえたけど苗字がなかなか手強かった。

辛抱強くゆっくりと思い出してもらった。

年齢は4歳。

これは亡くなった時の年齢だと思われる。

お母さんの名前はよくわからないと言ってる。

渡井なんとかさんということになる。


気になる発言があった。

恵比寿に住んでいる。

ここまでは教えてもらえた。

ここからは少しでも楽しいお話になるようにと細心の注意をはらいながらいくつものキーワードを聞き出すことができた。

それらをさっそく検索してみることにした。

こういった時はネットって便利だなとつくづく思う。


「恵比寿」「交通事故」「渡井」と検索ワードを入れるだけですぐ出てきた。

あっ、これはと遊海はこの事件のことを覚えている。

テレビなんかでも連日放映されていて大騒ぎになっていた交通事故だった。


事故が起こったのは2020年5月4日のゴールデンウィークまっただ中。

場所は渋谷区。

目黒通り沿いに目黒寄生虫館がある。

そこからJR目黒駅方向に進む。

ほんの少し進めば山手通りと交差してる信号がある。

そこには目黒大鳥神社がある。

事故はその場所で起こった。

午後2時34分。

信号待ちをしている歩道に車が突っ込んでいった。

数人を、車がぶつかっていってはじき飛ばしていた。

車体前部にいた渡井親子は乗っていた自転車ごと車に押される形になった。

そのまま神社の壁に圧しつけられた。

それでも車は止まってなかった。

ずっとアクセルを踏み続けているのだろう。

車は壁にあたって進めやしないんだがタイヤは空回りしてるような状態だった。

車のエンジン音だけが悲鳴を上げてるような状況がしばらく続いた。

たまたまその場にいて被害を受けなかった歩行者たちが運転手に駆け寄っていった。

無理やりドアを開けて運転していた男を外に引きずり出した。

外に出されるまで男はアクセルを踏み込んでいたようだった。







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