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完全に夏の夜。
この部屋にはエアコンはない。
あったとしても50畳の部屋じゃ効かないかも?
かえって扇風機のほうが使い勝手がよい。
高円寺の生ぬるい風で満足だよ。
お墓の近くなのでもう少し涼しいのかと思ってた。
そんなことよりも昼のことだ。
ど〜も源五郎たちに話しかけるのをためらってしまった。
みんな突然どうしたんだろ?
「にいちゃん、わからなかったのか?」
源五郎に問われた。
遊海にはなんのことだかわからない。
それを伝えると夜になったらいくからなと言われた。
なんでも、旗本の寄り合いに寄ってからということらしいので遊海だけは先に高円寺に戻ってきていた。
そうするしかなかった。
他の旗本の人たちの姿は視えない。
だから声も聞こえない。
全身びしょ濡れだったが夏でよかった。
夏の暑さで乾いてしまって、歩いてるうちに汗びっしょりになった。
戻ったらすぐひとっシャワー。
部屋に戻っても源五郎は現れなかった。
セーフ。
夜に来るってのがわかってたからな。
夕方になって高円寺の街に出て夕ごはん。
暑いから冷やし中華。
部屋に戻ると汗。
扇風機フル稼働。
本当はエアコンがよいのだがね。
夏でこれなら冬はあれだ。
こたつはマストになる。
50畳の広さで石油ストーブとかの暖房器具だと追いつかないのでは?
暖房費用も高くなりそうだし。
全身すっぽりの毛布みたいなのもマストだな。
テレビをつけてもまだ報道番組の時間じゃなかった。
7時くらいから徐々に今日のニュースが始まる。
ネットでは歌舞伎町の怪現象ということですでに公開されている。
遊海が知りたいのは被害者も含めた被害状況だ。
はっきりしたことがわかるのは2〜3日後くらいか?
テレビはつけっぱなしにしていた。
なんとなく地方のグルメロケの番組を見ていると源五郎たちがやってきた。
なんだかみんな元気がない。
幽霊だから病気とかってことはないだろう。
なんだ、どうしたんだろ?
「にいちゃん、待たせたな」
源五郎の声にはいつもの力がない。
「どうしたんですか?
なんだかみんなおかしいですよ?
急に暗い感じになりましたね」
「愉快な遊海殿にはなにも伝わらなかったんですね。
怨霊を倒したその瞬間、『伝えたかったこと』がいっせいに頭の中に入ってきたのです」
「遊海さんなら、アニメを見たりしてるのでわかると思うんですが···
最後に、亡くなる時に思念というのですか、そういったものを皆に送ってきたんです」
お六が引き継いで説明してくれた。
一緒になってアニメを観たりしてたので難しい言葉を覚えてる。
思うにお六と源五郎が最も現代に馴染んでいる。
「それは···
ぼくにはなにも届いてない。
ぼくにだけ、その思念が送られてこなかったのか?」
遊海は考え込んでしまった。
そうだとすると幽霊にだけ届いて現世の人間である自分には届かなかったことになる。
つまり自分の特別な能力は一部の幽霊だけが視えて会話ができることということになる。
そうなると、気になるのは怨霊が最後に伝えたこと。
その内容がみんなにショックを与えているらしい。
これって訊いてみてもいいものなんだろうかと遊海がウジウジしてモゾモゾしてるのを見兼ねて一さんから説明をしてくれることになった。
こういったことを話してくれるのは一さんが適任だ。
最初の段階から順序立てて話してくれるのでわかりやすい。




