4-3
「むぅ、これは厳しいものがある。
迂闊に近づけんぞ」
「そうじゃな、あの激しさ、剣の達人である土左衛門でも踏み込めまい」
おぉ、一さん、いつの間に長刀を。
突撃する気ですか?
あんな所に行けないです。
危ないです。
死んじゃいますよ。
えっ、あれ?
えっ、えぇっと遊海は独りでパニックになっていた。
「ここは、拙者の出番」と名乗りを上げたのがひょろっとしたお侍さん。
「おぉ、お主ならやれるかもしれん」
日本刀を手にしたものの動けないでいる土左衛門が応えている。
火と水が激しくぶつかりあっていて状況を把握できない。
それで先に進むのも躊躇してしまっていた。
どうなってるのかまったく見えない。
それは全員がそうだ。
なにがどうなってるのか見えなくなってしまっている。
「お六、あの緑色の妖怪を引っ込めてもらえぬか。
そうして視界が開けたところで突撃する」
「わかりました。
では四平をカプセルに戻します。
気をつけてくださいね」
一さんからのリクエストでお六は10、9とカウントダウンを始めた。
塩かけばあさんはそのままで、河童の四平だけを戻すことになる。
「3、2、1、戻って」
お六の手の中にパシッとカプセルに収まって河童の四平が戻った。
急に水がなくなった。
炎だけが噴射されていたが、それが止まった。
急に水がなくなって不審に思ったのだろう。
確認するために一時的に炎の噴射を止めたのだろう。
その一瞬の隙を突いて謎の剣士が動いた。
遊海は見た。
あっと思ったらもういない。
えっと思ったら30メートルくらいは離れている怨霊の側にいた。
「おぉ、行ったな。
さすが居合抜刀剣の達人」
感嘆の声を上げるのは土左衛門。
跳んでいった剣士は旗本の侍。
桜家の者ではない。
旗本の侍なら剣術を習得するのは当然のこと。
あの侍は居合抜刀剣を使う旗本としては珍しい存在。
名は佐々木小ニ郎。
「居合激走剣」を使って一気に間合いを詰めている。
30メートルほどなら一足で間合いに入ってしまう恐るべき剣。
一種の瞬間移動のような一撃必殺の剣。
今回は怨霊に切っ先を入れることには成功している。
致命傷を与えてはいるだろうがまだだ。
怨霊は逃げに入ってる。
小ニ郎のさらなる秘技「居合長尺湾直」が炸裂。
持った刀を突き刺すようにして両腕が直線に瞬時に10メートルは伸びた。
怨霊の胸を貫いた。
小二郎は、いわゆる日本刀=打刀(約60〜80センチ)は使わない。
脇差(30〜60センチ)を使う異質の剣士。
小型の刀のほうが取り回しが効くといった利点を追求している。
実際に使用しているのは刀身50センチの剣。




