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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
影裏(えいり)

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38/55

4-3

「むぅ、これは厳しいものがある。

迂闊に近づけんぞ」


「そうじゃな、あの激しさ、剣の達人である土左衛門でも踏み込めまい」


おぉ、一さん、いつの間に長刀を。

突撃する気ですか?

あんな所に行けないです。

危ないです。

死んじゃいますよ。

えっ、あれ?

えっ、えぇっと遊海は独りでパニックになっていた。


「ここは、拙者の出番」と名乗りを上げたのがひょろっとしたお侍さん。


「おぉ、お主ならやれるかもしれん」


日本刀を手にしたものの動けないでいる土左衛門が応えている。

火と水が激しくぶつかりあっていて状況を把握できない。

それで先に進むのも躊躇してしまっていた。

どうなってるのかまったく見えない。

それは全員がそうだ。

なにがどうなってるのか見えなくなってしまっている。


「お六、あの緑色の妖怪を引っ込めてもらえぬか。

そうして視界が開けたところで突撃する」


「わかりました。

では四平をカプセルに戻します。

気をつけてくださいね」


一さんからのリクエストでお六は10、9とカウントダウンを始めた。

塩かけばあさんはそのままで、河童の四平だけを戻すことになる。


「3、2、1、戻って」


お六の手の中にパシッとカプセルに収まって河童の四平が戻った。

急に水がなくなった。

炎だけが噴射されていたが、それが止まった。

急に水がなくなって不審に思ったのだろう。

確認するために一時的に炎の噴射を止めたのだろう。


その一瞬の隙を突いて謎の剣士が動いた。

遊海は見た。

あっと思ったらもういない。

えっと思ったら30メートルくらいは離れている怨霊の側にいた。


「おぉ、行ったな。

さすが居合抜刀剣の達人」


感嘆の声を上げるのは土左衛門。

跳んでいった剣士は旗本の侍。

桜家の者ではない。

旗本の侍なら剣術を習得するのは当然のこと。

あの侍は居合抜刀剣を使う旗本としては珍しい存在。

名は佐々木小ニ(こにろう)

「居合激走剣」を使って一気に間合いを詰めている。

30メートルほどなら一足で間合いに入ってしまう恐るべき剣。

一種の瞬間移動のような一撃必殺の剣。

今回は怨霊に切っ先を入れることには成功している。


致命傷を与えてはいるだろうがまだだ。

怨霊は逃げに入ってる。

小ニ郎のさらなる秘技「居合長尺湾直(いあいちょうじゃくわんちょく)」が炸裂。

持った刀を突き刺すようにして両腕が直線に瞬時に10メートルは伸びた。

怨霊の胸を貫いた。

小二郎は、いわゆる日本刀=打刀(約60〜80センチ)は使わない。

脇差(30〜60センチ)を使う異質の剣士。

小型の刀のほうが取り回しが効くといった利点を追求している。

実際に使用しているのは刀身50センチの剣。

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