2-6
あまりにも強い炎で土左衛門は怨霊に対してあと一歩踏み込めなかった。
怨霊も土左衛門ではなく、ばあさんの振り撒くものによってかなり怯んだとみるべきかもしれない。
それほど意表をついた展開になっていた。
それでも当初の目的を果たしたようなので怨霊は姿を消した。
残ったのは大火事だけ。
「火事をなんとかしないと···
どれだったかしら···
これだ、これのはず」
えいっと言ってお六がまたなにかを投げた。
スモークが発生。
霧が一気になくなったあとにそこにいたのは緑色の怪人。
「お願い。火をなんとかして」とお六が訴える。
そいつはキョロキョロと周囲を見渡してふ〜むといった感じでいる。
状況判断をしているようだ。
そして右手を空に向かって突き上げた。
「水集め」と叫んでいる。
言葉が、日本語が話せるんだと驚きの連続でいる遊海は我を忘れて見入っている。
あっと遊海と源五郎は声を上げるしかなかった。
緑色の怪人が天に向かって腕を伸ばしたさらに上に水たまりが出来上がっていってる。
どんどん水たまりが広がって大きくなっていく。
遊海からすると巨大な水のフリスビーのようなものが空中に浮いてるように見えている。
「集水投擲」とやたら甲高い声が響いた。
たまりに溜まった水(ひょっとして水蒸気なんかを急速にかき集めたもの)、なん十トンになってるかわからないような大量の水を燃えている建物のま上にドバアァァって落とした。
線状降水帯どころじゃない水の量が一気に落とされた。
その大量の水によって遊海は濁流にのまれて流された。
ウオォォって叫んだつもりだったが声になってなかった。
その代わりかなりの量の水を飲んでしまったがどうにか生きている。
どこまで流された?
酸素を求めるようにガバッと上半身を起こすと公園があった。
大久保公園?
それだと100メートルほど流された?
見渡す限りは全部が水びたしだ。
火事は鎮火している。
思ったより被害は少なかったのかもしれない。
遊海は立ち上がった。
怪我などはしてない。
痛いところもない。
ただ苦しいだけ。
水の飲みすぎだ。
ゲホゲホ苦しんでる時に源五郎たちが見つけてくれた。
「にいちゃん、大丈夫かい?」
「だ···ハァハァ、だい···ハァハァ」
「強烈な水やったもんな。
無理せんとそこに座っとったらええ。
それにしてもや、えらいことになったの」
周辺には一般の人たちがいない。
火事と水害とで避難したようだ。
数人の制服警察官の姿は見える。
東京健康プラザ、ハイジアには交番がある。
そこの交番からいち早く出動してきたんだろう。
それにしても大惨事になった。




