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立ち止まってしばらく待つことになった。
このあたりは人通りは少なくなるが遊海だけが所在なげに突っ立ってるようにしか見えてないだろう。
「きた」と一さんが発した。
うん、本当にきた。
まっ白な毛並みの犬だ。
どこからともなくやってきた犬は一さんの前でハッハッてせわしなく息を出しながらお行儀よく座った。
「桜家の飼い犬のうららじゃ。
ちょっと太ってきたのが玉にキズじゃがお利口だ」
いやいや、太ったとかそんな問題じゃないでしょ。
立っている一さんよりちょっとだけ大きいじゃないの。
太ったっていうよりも巨大な犬だ。
犬種はよくわからん。
「この犬···うららが怨霊を見つけてくれるんですか?」
「そうじゃ、うららなら敏感じゃからのぅ。
怨霊がいれば見つけてくれるぞ」
「どれくらいの範囲内ならわかるんですか?」
「う〜む、どれくらいかの?
町内ひとつ分?
もっとか?
わからんからうららに訊いておくれ」
うららが答えてくれるんやろか?
普通の犬ではなさそうだし···
もしかするとがあるかもしれない。
「うらら、怨霊がいたら教えておくれよ」
お願いされたうららはジ〜っと遊海を見ている。
思いのほか優しい顔立ちの犬だった。
お六がしきりとかわいいと言ってるのがわかる。
柔らかそうなモフモフの毛並みを撫でてる。
遊海も撫でてみようと手を出した。
なんの感触もなく伸ばした手はうららの体の中にスカッと入っただけ。
遊海の身長は170センチ。
遊海の目線とうららの目線がちょうど同じくらい。
パトロールを再開した。
うららも加わって夜の歌舞伎町をまたグルッと回ってみる。
夜の歌舞伎町を歩くのは初めて。
人の多さは昼間と変わってない?
「一さん、ちょっと訊きたいことがあります」
疑問に思ってたことがある。
先頭を進むうららの隣を歩く一の奥方様が「なんじゃ?」と遊海のほうにクルッと振り返った。
「怨霊のことなんですけど、現世に影響を与えるってことですけど、それはどの程度のことなんでしょう?」
「すべてじゃ。
怨霊の力は強いからの、なにもかもが現世に影響してくる。
人によっては視えるかもしれんな。
遊海殿なら、おそらく視えるじゃろう」
怖ろしいと思った。
視たくはないよとゾッとする。
でも戦わなければ被害者は出る。
決断しなければならない。
やれるところまでやる。
ちょっとだけ無理はする。
そういうことだ。




