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電車の中。
高円寺から総武線に乗って新宿まで。
それにしても不思議だ。
一さん、お六、源五郎とともに電車に乗っている。
そこそこの乗客がいる中で誰1人として視えてない?
「わいは電車ちゅ〜もんに乗ったんは初めてや」
源五郎の声は大きい。
それでも乗客たちには声も聞こえてない。
「あたしもぉ、動いてるのは見たことあるけど乗ったのは初めて。
どうやって乗ればいいのかもわからなかったし···」
お六が言ってることも無理はない。
お六が生きていた時代には電車なんてなかった。
メインになる移動手段は自分の足。
宿場町で生まれ育っているので馬はよく見ていたそうだ。
早馬というやつなのかな。
現代の車とか飛行機などは知っている。
車なんか嫌になるほど見かけるし空を見上げれば飛行機が飛んでたりする。
電車に関しては乗る機会もなかった。
どこか遠くへ行く用もないわけだし見たことはあるよって程度のものだった。
「なんや、ここは···」
源五郎が驚くのも無理はない。
地方から出てきて初めて新宿駅に足を踏み入れた時に多くの人がそう思うだろう。
1日の平均乗降車数が300万人を超える世界一の駅。
遊海も初めて新宿駅にきた時はわけがわからなかった。
さらに地下街に入った時は混乱してしまって人に酔ってしまった経験がある。
新宿駅を東口に出て歌舞伎町まではかなり歩くことになる。
人の多さについては源五郎たちは特別なにも言わない。
3人とも江戸の町で暮らしていたので人の多さには慣れている。
昔の江戸の町は世界一の人口密集地帯だったみたいだ。
かえって遊海のほうが不慣れだ。
「おぉ、で、どうじゃった?」
信号を渡ってセントラルロード入口。
ドン・キホーテをちょっとだけ通りすぎた場所。
一さんが誰かと話している。
でもその前には誰もいない。
遊海には見えてない。
どういうことだ?
「にいちゃん、見えんのか?」
遊海が不思議そうに一さんを見ているのに気づいた源五郎が声をかけてきた。
「えっ、え〜っと、一さんは誰と話してるんでしょ?」
お六があぁっと言い、源五郎がなるほどって言ってる。
2人には理由がわかってるようだ。
解説をお願いしたい。
「まずな、幽霊を視ることができるのって数十万人に1人、あるいは数百万人に1人、もっとかもしれん。
にいちゃんはその中の1人やったからわいやお六が視えてる」




