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「てぇへんだ、てぇへんだ」と慌てふためいて源五郎が部屋に入ってきた。
その後ろから「大変、大変」とお六と一の奥方様が部屋に飛び込んできた。
横になって自堕落なスタイルでテレビをボ〜っと見ていた遊海は飛び起きてしまった。
「な、なに、なに、な〜に?」
夜になるとここで独りっきりの生活になって静かになるなって思ってたのにち〜っとも静かじゃなかった。
調布で独り暮らしをしてた時より賑やかになってしまった。
それにしても不思議だ。
大工の源五郎と八百屋お六は互いに町人だから波長が合いそうだ。
旗本のお殿様の奥方様である一さんも気が合うようで3人はつるむようになった。
一、五、六って数字が入った名前もおもしろい。
「にいちゃん、のんびりしとる場合やないでぇ、てぇへんなことになった」
源五郎の慌てぶりからどうやらふざけてるとかではない。
緊急を要する可能性が高いものに思える。
「そんなに慌ててどうしたんですか?
まさか巨大隕石が地球に落ちてくるとか?
そりゃ、大変だ」
「なにバカなことゆ〜とるんじゃ、てぇへんなことになったんやでぇ」
大変だ、大変だとどうにも要領を得ない。
もっと具体的に言ってもらいたい。
「源さん、ここはあたくしから」
「お願いします」
一の奥方様なら安心だ。
落ちついて的確に伝えてくれるのはやはり奥方様になる。
「以前から、突然現れていつの間にかいなくなってしまう怨霊がいるのです。
その怨霊がまた現れたのです」
怨霊?
幽霊の上位の?
「お、おんりょう···
いきなりですね。
そいつが現れたってことは、具体的にはどうなるんですか?」
「おぅ、てぇへんなことをしでかすぜ。
わいのダチの魚屋の留吉が殺られちまったい」
それは···えっ、殺られたって?
幽霊なのに殺られたってどうゆうこと?
これは訊いちゃいけないか。
「そうなのです。
怨霊は生きてる人間、例え幽霊に対しても災いをもたらすのです。
それが急に出てきたようです」
怨霊は何人もいるらしい。
怨霊退治の専門チームがいるのだが倒しても倒しても新しい怨霊が現れている状況になっている。
怨霊というのは、生きてる間になんらかの事情によって恨みを持ったまま亡くなってしまった者が、とんでもない力を手にして誰彼かまわずに災いをもたらす存在になった者。
「そうだったんですか。
ぼくがまったく知らない世界の裏側ではそんな壮絶な戦いが繰り広げられていたんですね。
でも怨霊が現れる?
いつ、どこでってわからないんですよね?」




