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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
新生活

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2/6

1-2

その日、新宿に出ていた。

紀伊国屋書店から出た時に思わぬ人と出会った。


「おい、繁多じゃないか。

こんな所で会うなんて···

久しぶりだな」


靖国通り側のエスカレーターの前。

大学の時の先輩で青木さんだった。

大学を卒業して以来だから6年ぶりくらいになるのか?

遊海はまったく気づかなかった。

青木先輩から声をかけられてなかったら素通りしていただろう。


「えっ、あっ、先輩?

青木先輩。

どうしたんですか?

こんな所で?」


お互いに言い合っている。

青木先輩は1学年上。

アニメ・コミックを考える会というクラブ活動に所属していた。

学生はマンガを描いたりする実践派と出来上がったものをひたすら読む派に分かれていた。

遊海や青木は読む派だった。


「どうしたって、おまえ、今日は土曜日。

なんか面白そうな本でもないかなって探しにきたんだよ。

そしたら、まったく変わってないうらぶれた感じで正面からやってきたおまえがいたんだよ」


まったく変わってない、うらぶれたというワードが気になったが誘われるままに昼でもどうだということになった。

この昼でもというのが曲者で、もちろん、昼ごはんでもあるが昼飲みという意味もあった。

新宿なら昼飲みできる店があちこちにある。

先輩と一緒に入ったのはランチもある歌舞伎町の居酒屋。


「ところで繁多、今はなんの仕事をしてるんだっけ?」


席に着いて注文を済ませてから青木先輩から切り出してきた。

別に隠すこともないので無職になったと経緯を話していった。

その間にビールが運ばれてきたので一時中断。

ゴクリと飲んでから再開。


「ふ〜ん、そういうことか···」


ひと通り聞き終えた後の先輩からの感想。

先輩にとってはたいした問題ではないんだろう。

よくある話だ。

そして料理が運ばれてきた。

飲みながらのランチになった。

これが夜だったら晩酌と呼ぶ。

昼だから昼酌でいいのか?

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