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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
新生活

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16/52

3-3

最初に紹介されたのは桜一(さくらいち)さん。

14代将軍の徳川家茂の統治下の時代で亡くなった女性。

徳川家茂は13歳で即位して20歳で亡くなっている。

1858年から1866年の間の8年間と短い。

その家茂時代に夫である桜英安(さくらえいあん)は勘定奉行に任命されていた。

1,000石の旗本であった。

1,000石の禄高であったので侍5名、立弓(りっきゅう)1名、鉄砲1名、槍侍2名、甲冑侍2名、草履取(ぞうりとり)2名、長刀(なぎなた)1名、挟箱持侍(はさみばこもちざむらい)2名、馬の口取2名、押足軽(おしあしがる)1名、沓箱侍(くつばこざむらい)1名、小荷駄(こにだ)2名の計21名の供をそろえるという規定がある。

それとは別に女中は5〜6名。

1,000石なら拝領する屋敷はおよそ900坪ほど。

桜家では経済的な問題もあってその半分ほどの供の者でギリギリの生活をしていた。

勘定奉行でもあるので侍としての見栄を張らなければならない時もある。

そんな時は日払いのアルバイトを雇って頭数だけはそろえるようにしていた。


一が亡くなったのは満32歳の時。

火事によって屋敷が全焼。

江戸の時代は木造住宅ばかり。

1度でも火が起こればまたたく間に広範囲に燃え広がってしまう。


お願いの依頼者はもう1人の女性。

桜一はたんなる付き添いだ。

その女性は夏目りんという名前で満31歳で亡くなっている。

なんでも宴会で出されたフグの毒にあたって亡くなったのだそうだ。


亡くなったのは徳川9代目の家重の時代。

在任期間が1745年から1760年なので、その間のどこかで亡くなっている。

家は日本橋で両替商を営んでいた。

両替商には本両替と銭両替がある。

夏目りんの家は銭両替。

主に一般庶民を相手に金貨、銀貨の少額両替を専門に扱っていた。

江戸時代は変動相場制であったので生活するにはなくてはならない存在だった。


遊海はなるほどと聞いていた。

銭屋としての屋号も夏目屋としっかりあるのでお六の時よりは探しやすいだろうと思っていた。


ところが調べるのは難航した。

本両替と呼ばれている両替商は現在の三井住友銀行だとか三菱UFJ銀行として続いている。

銭両替は小規模な店が多くて、小さい店ほど記録を探すことができなかった。

夏目りんさんから聞かされていた話でも主人がいて奉公人と女中を合わせて4人で営業していたということだった。

その店が長く営業していて有名だったとかなら別だが、短期間での営業しかしてなかったら難しいものがある。

それほどの小さな店であるなら専門的に研究などしてる人じゃないと探っていくのは難しい。

遊海にはそんな専門家に知り合いもいなければツテもない。

残念ながら断念するしかなかった。

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