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幽霊さん  作者: 弁財天睦月
新生活

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12/52

2-8

その声が届いたようでドアの外側からソッと覗き見ている人物がいる。

顔の半分だけが見えている。

ジ〜っと室内の様子をうかがっているようだ。


「このにいちゃんなら大丈夫だ。

噛みついたりしないから入っといでぇ」


いやいや、犬じゃないんだから、ワンワン。

で、おずおずと室内に入ってきたのは着物姿の少女。

初めましての少女。


「これが幽霊仲間のお(ろく)

そしてこれが全裸になりたがりのにいちゃん。

愉快なにいちゃん」


「そうですか、初めまして。

愉快な方なんですね」


少女らしい声音だ。

でも幽霊なのか。

着物姿ってことは明治前の時代か?


「いや、愉快じゃなくって、遊海という名前なんです」と実際にノートに漢字で書いてみた。


「そうやったんか。

愉快なにいちゃんやと思っとったぜ」とノートをのぞき込みながら源五郎の大きな間違いを正してやった。

えっ、そんな覚え方してたのか。

びっくりするわ、源五郎のおっちゃん。


「それで、なに?」


ちょっとつっけんどんになった遊海。

大人気なさが残る27歳。


「うむ、実はな、このお六がど〜してもちゅう頼みごとがあるんや。

これがなかなかなもんでわいにはお手上げや。

そいでにいちゃんやったら頼まれてくれるんやないかって思ってな、連れてきたんや」


「そういうこと···

なんだか大変な話になってきましたね。

まずその頼みごとってのを聞いてみないとなんとも言えませんが」


「そりゃそうやな。

ではそれがいったいなんなのかを話してやっておくれよ」


源五郎に促されてお六と呼ばれた少女がとつとつと話し始めた。

お六は徳川の11代目家斉が将軍だった頃に生きていたらしい。

周りにいた大人たちが上様は徳川家斉と言っていたのを覚えていたからだ。

確証はないんだが、もしそうだとすると1800年前後あたりの年代ということになる。

死亡理由は流行り(はやりやまい)だったらしい。

当時の記録だとハシカだったのではないか?

享年満17歳。


頼みごとというのは家のこと。

自分が亡くなったあと家族はどうなってしまったんだろうかということを調べてもらいたいということだ。

言うのは簡単だが調べるのって難しすぎるんじゃないの?

そんな200年以上も前のことってどうやって調べたらいいんだ?


「お願いします」と言われてうむむと唸って引き受けてしまった。

さぁ、困った。

あまりにも漠然としすぎていてどこから手をつけていいのかわからない。

いろいろと訊いていくと実家は八百屋を営んでたそうだ。

それで八百屋お六と呼ばれてた看板娘であったらしい。

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