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繁多遊海は今日から無職になった。
大学を卒業して新卒で入社したスーパーマーケット「きさらぎ」を退社した。
東京都内で11店舗を運営するローカルチェーン店。
遊海は調布駅前店に配属されて約5年ほど勤務していた。
他の店舗への移動などもなく調布駅前店ひとすじだった。
退社時は店長代理になっていた。
店長代理といったってちっもとすごいことはない。
人手不足もあって要はなんでも屋で激務となっていた。
その激務が原因で退社することを決めた。
とにかく休みがない、残業も多くなった。
昼も、30分も取れてなかった。
体を壊す前に4月が終わる頃になっての退職。
自分では言いにくかったので退職代行業者を利用した。
経費はかかったが精神的には重すぎる圧がすっかり消えてしまった。
就職活動では受けた企業がことごとく「御縁がありませんでした」で唯一内定をもらったのがスーパー「きさらぎ」だった。
練馬にある本社の会議室で4名での入社式。
その中で大卒は遊海だけだった。
それほどの給料ではなかったので貯金としては20万円ほどしかない。
休日出勤をしていたので、使う時間がなかったので少しずつ貯まっていただけのこと。
皮肉なもんだ。
お金もないので職探しを始めなければならない。
27歳なのでまだ転職はできるだろうと考えている。
少なくともスーパーより給料が良くて労働時間も少ない会社を希望している。
退職した日の夕方には退職代行業者から連絡が入った。
少ないけど退職金が出ること。
それと離職票を郵送するので自分でハローワークに行って失業手当の手続きをしてくださいと言われた。
遊海は退職するのが初めてのこと。
離職票というのは初めて耳にした。
送られてきた離職票を持ってハローワークに行ってみた。
遊海は調布市に住んでいる。
この住所で管轄のハローワークの場所は府中市にある。
京王線の府中駅の西に向かって徒歩7分ほどの場所。
この駅が東京競馬場の最寄り駅でもある。
離職票をハローワークに持っていって失業手当の手続きを行うことになる。
遊海のケースだと30歳未満で被保険者の期間が5年以上10年未満にあてはまるので120日間の給付金を受け取ることができる。
1日で5,733円で決定した。
ハローワークだけではなく他の転職の会社も利用していたが1ヶ月経っても決まらなかった。
まだ焦ってはいなかったのであちこち足を運ぶ日々を送っていた。
あれだけ分単位で忙しかったのが急に暇になってしまってどうやって過ごせばいいのかわからなくなっていた。
だからウロウロしている。
独り暮らしの部屋の中にず〜っといるわけにもいかない。
遊海は福岡県出身で大学進学から上京して独り暮らしを続けている。




