34 現状把握と情報共有
「まずは私たちの事から話そうか、ちーちゃん」
『!』
「なんか急に出来ること増えてるよね、二人とも」
シノさんはシノさんで光の精霊に話しかけることなく自然に『ライト』を操ってるし。
「それと『発光』と、こうがくめいさい? んー、『光学迷彩・弱』だって。ユウが騎士を焼いた後、頭に『新しいスキルが登録されました』って流れてきてさ」
「…………そうなんだ」
新スキルを発現すると登録されるって事か? だけど一日で3つもって……
光の精霊と仲良くなるルートなんて想定していなかったという事だろうか。
僕のスキル習得画面にもないスキル群。
AIが意思を持つ事で、NPCもプレイヤーと同じように覚えるスキルの方向性を決められるようになったのかも。
レベルアップと同時という事は、僕と同じでSPがある時のみ習得可能なんだと思う。
「ちーちゃんがいつの間にか光の精霊と意思疎通とれてるのは?」
「このリボンをつけると精霊がはっきり見えるようになったんだって。それで色々相談を聞いていたら仲良くなったとか」
『──⭐︎』
シノさんの話に敬礼で返すちーちゃん。
……あの時のリボン強化にそんな機能を持たせるって、精霊王様は『知』の精霊をモールス信号の開発に巻き込んだ感じかな。助かるけど頭いい人は怖いわ。
だけどちーちゃんは平和に「見ててー」とばかりに高速で点滅を繰り返している。この仲良しさにはどうしても心があったまってしまう。
「あーもう友達に迷惑掛けない! ほら、もう遅いしちーちゃんは寝ちゃいなさい」
メニュー画面を見るともう22時過ぎ、いつの間に夜更かしさせちゃった。
「じゃあこれ、まだ未完成だけど使ってみて」
『――♪』
木をナイフで強引に、力技で切って板にして、それを重ねて藁を敷いただけの簡素な寝床だ。
それでもちーちゃんは喜んでくれて睡眠に入る。
あー、お布団買ってあげたい。
ちーちゃんは寝る前にもう一度、ユズハの確認してくれたけど僕の投げ方を真似してるだけで不審な行動はしていないみたい。
一度見ただけで再現なんて無理だと思うけど、こっちの事も話したかったから苦戦してくれるのはありがたい。
「――さて、まず聞きたいのは第4騎士団の事なんだけど。知ってるんでしょ?」
「あれは何と言ったらいいか……」
やっぱり分かってて合わせてくれてたんだね、ありがたいなほんと。
「まず前の3軍の事は忘れて欲しいんだ。あそこは貴族の子供の手頃な就職先ってだけで、基準にしていい所じゃないから」
「……まあ、あんなのばっかで国をまとめられるとは思ってなかったけど」
強いには強かったけど、あまりにも連携が取れてないからそこまで怖くなかった。
だけどこの4軍というやつは──
「だからと言って騎士道を重んじてというわけではなくて……何をしてでも目的達成を優先というか……」
「……ユウみたいな?」
「僕なんか話になんないというか……」
一週目でも3軍にいた僕の引き抜きの為に部屋を荒らされたり、毎晩入れ替わり入れ替わりで騒音を出されたりで精神的に追い詰められた。
辛い任務は全部うちに回されて、思い出したくもない。
それが新型AIを搭載されたんだぞ? 人間のAIと外道、そして無法とは相性が良すぎるんだ。
物凄いケミストリーが起こってることは疑いようもない。
「第4騎士団長『ジュラ』。頭も力も強くて、本当に何でもするんだ。団員は完全にいいなり。だから統率もある意味一番取れてる」
「……ゴリラってやつね。ユズハは結構舐めてるように聞こえてたけど」
「あれは要領よさそうだから、多分まだお仕置きされてないだけだと思う」
継続的な暴力って耐えられる奴いるの? ってくらい辛いんだ。そりゃ屈しない人は格好いいけどさ。
それを良く知っているからかジュラは団員が拷問されても平気なように、部下には必ず自決用の毒を持たせてるしね。
「ふーん、そんな力を持ってるやつがアレンを狙う理由は?」
「……予想だけど、神装持ちを一騎打ちで殺すことで、その神装とクラスを奪えるんだよね。それかなー」
「それで……神装のありかを知ってるユズハを帰すわけにはいかない、と」
「あと精霊術師とインベントリ。今となってはちーちゃんも」
「…………はぁ」
シノさんは深いため息を吐く。
パーティメンバー全員がもれなく特大の地雷。
これを守ってくれる予定のアレンさんは未合流。やんなっちゃうよね。
「分かった、それで『禁止されている』ってやつはなんなの? アレンもなってたよね」
あれも説明したいけど、シノさんたちがゲームキャラっていうの説明するべきなの?
自分だったら……聞きたくない。少なくとも希望が見えない今は。
一度はサ終したこの世界の2人。それでも希望は……なくはない──と思う。
こんなの形にもなっていない夢物語だ。なのに今それに向かうわけにはいかないから──
「今は言えない」
「……あっそ。……原理も?」
「ごめんね。原理は多分だけど、元々の筋書きを狂わすことがダメなんだと……思う。正直自信はない」
それを言ったきり、彼女は黙る。
怒ったわけじゃない、こんな不誠実な答えに真剣になって考えてくれているだけだ。
「そのジュラって人は……なんで外国なんかに行こうとしていたんだろうね」
「――え?」
そんな疑問持ってなかったから分かんないけど、確かに……
「この国外交でもしてるの?」
「……いや、あのジュラなら向こうを呼び寄せそうなもんだけど……」
「なら……アレンみたいに、殺せない奴でもいたか? 国力を上げて魔族に殺してもらおうと……だから外国に避難を……いや、これは最近の不思議を繋げただけで──」
……あり得……なくもない……?
ジュラなら──うん、この程度なら罪悪感なしで出来る。余りに飛躍した考えだけど、大事なのはこれが成功してもおかしくない手段ということで……
「国力は一日一回見てね。ユズハがいる時は手話で。数字だけなら出来るでしょ?」
「そ、それはもちろんだけど、これ、もし予想が合ってたらやばくない!?」
「今の段階で判断出来ないって。
ただ、アレンを仲間にした時どのくらい下がったか、神装を手に入れてどうだったか、その他色々共有してほしい。疑似メモ帳に書いて渡してくれればいいから」
……それは、そうだ。国力2500まではまだまだで、今は検証の時かもしれない。
なんか想像もつかなかった考えを聞いて取り乱してたかも。
「最後はユズハの事だけど、やっぱり勝てないの?」
「魔法も当分使えないし、なにより投擲スキルが無理だ……勘もいいから不意打ちもキツいと思う」
「了解。まあ遅くても明後日には街に着くんだし、そこで取れる選択肢も増えるでしょ」
あれ、シノさんが落ち着いてるのはちょっと意外かも。
彼女なりに何か考えでもあるのかな……?
いや、僕だって道中床落ち素材や小物を拾って、インベントリ内は順調に充実してきている。
炭になった3軍の彼らも無事僕の悪夢に合流してくれて、強くなる環境は揃っているんだ。
焦る場面じゃない、今は「この格好……変じゃないよね……?」なんて緊張している田舎者のためにも街のことを考えよう!




