表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

第七話

「よっしゃあああ! クラスマッチ来たーー!」


ホームルームの終わり際、担任が告げた一言に、教室中が歓声に沸いた。

年に一度、クラスの名誉(と賞品の焼肉食べ放題券)を賭けて戦う球技大会、通称クラスマッチ。

貞操観念が逆転してるこの世界では、当然スポーツの主役は女子だ。筋力も持久力も、女子の方が圧倒的に上。だから、男子はおとなしく応援か雑用っていうのが暗黙のルールらしい。


種目はバスケとバレー。バスケ経験者の俺としては、ちょっと心が躍る。まあ、どうせ出られないんだろうけど。


「なあなあ橘!あんた、中学の時バスケやってたんだろ?」

「男子がいる方が絶対盛り上がるって!一緒にバスケやろうぜ!」


案の定、クラスの運動部に所属してる活発な女子たちが、わらわらと俺の席に集まってきた。

体を動かすのは好きだし、正直、ちょっと魅力的だ。


「え、いいのか? 男子が出ても」

俺が乗り気でそう返すと、途端に教室の別の場所から不満そうな声が上がった。


「えー、男子が混ざるの?」

「本気でプレイできないじゃん。怪我させたらどうすんの」


うわ、めんどくせえ。

クラスの空気が、一気にギスギスし始める。俺一人を巡って、女子たちが二つの派閥に分かれて睨み合っている。どうすんだよ、これ。


その、一触即発の空気を切り裂いたのは、凛とした声だった。


「皆さん、落ち着いてください」


我らがクラスの学級委員長、天野美月だ。

彼女はすっと立ち上がると、完璧な笑顔でその場を収め始めた。


「気持ちは分かりますが、橘くんにだけ危険な思いをさせるわけにはいきません。でも、橘くんの力を借りたいという意見も尊重すべきです。ですから……」


美月はそこで一度言葉を切ると、俺の方をまっすぐ見て、こう提案したのだ。


「橘くんには、選手ではなく、このクラスの専属マネージャーとして、チームをサポートしてもらうというのはどうでしょうか?」


マネージャー? 俺が?

予想外の言葉に、俺だけでなく、クラス中がキョトンとする。


「橘くんの運動神経は、皆さんご存知の通りです。だからこそ、一番大切なクラスの司令塔を任せたいんです。ドリンクの管理から作戦の伝達まで……あなたにしか頼めません」


その熱のこもった言葉と、非の打ち所がない提案に、クラスの空気は一変した。

「男子を守る」という大義名分と、「クラスの一員として側に置く」という独占欲の両方を満たす名案。さっきまでいがみ合っていた女子たちが、「それなら安心!」「陽太くんがマネージャーとか最強じゃん!」と満場一致で賛成し始めた。


おいおい、俺の意思はどこだよ。

まあ、面倒な争い事が収まるなら、それでもいいか。


「……そういうことなら、分かったよ」


俺が渋々頷くと、美月は嬉しそうに微笑んだ。


放課後、俺は美月に呼び出され、二人で体育倉庫に備品を取りに来ていた。


「ごめんなさい、陽太くん。あなたの気持ちも聞かずに、勝手に決めてしまうような形になってしまって」


美月が、申し訳なさそうに眉を下げる。


「いや、いいって。委員長のおかげで、面倒なことにならずに済んだし、感謝してるよ」


薄暗い倉庫の中で、二人きり。なんだか、少し変な感じだ。

美月はボールを数えながら、ぽつりと呟いた。


「でも、本当は……選手として汗を流す陽太くんより、こうして隣で支えてくれる方が……私にとっては、嬉しいかな」


「え?」


聞き返す俺に、彼女は「ううん、なんでもない!」と首を横に振って、いつもの完璧な笑顔を向けた。

その笑顔が、なぜか少しだけ、いつもと違って見えたのは、きっと気のせいだろう。


こうして、俺はクラスで唯一の「男子マネージャー」という、なんだかよく分からないポジションに就くことになったのだった。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!


少しでも「面白いな」「続きが気になるな」と思っていただけたら、ぜひ下の評価ボタン(★★★★★)をポチッと押して応援していただけると、作者がめちゃくちゃ喜びます。


投稿遅れて申し訳ございません。クラスマッチ編開幕ですね。あと二話ぐらい続く予定。今度こそ20時ぐらいに投稿しようと思います!お楽しみに!

追加で、近々ハイファンタジーの方でも領地経営系を書く予定なので、そちらもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ