第13章
一巻13章
帰りは極めて順調だ。ひとけのないエントランスや廊下を通り抜けて、あとは自分の部屋へ行くだけ。早くしないとみなみ達が帰ってきちゃうから急がないと!
そうドアノブに手をかけて思い出した。私って、布団の中に私が居るような細工をしてきたよね?
もしみなみ達が帰ってて、それで「あ、マリンは寝てるんだ〜」みたいに納得してたら……入ってはダメなのでは?
手を慌てて引っ込める。でももしまだ帰ってきてなくて、「なんで部屋の外にいるの?」とかなったら……私たちの部屋は階段から近いし、エントランスからの物音に気がついてもそんな猶予はない。うーん、どうしよう!?
二人が部屋に居るか確かめる方法はないのかな?そもそもるーちゃんのおまじないはどれくらい時間がかかるんだろう?シェルはなんて言ってたっけ?
頭を抱える私に、良い考えが舞い降りた。エントランスの靴箱を見にいけばわかるんじゃないかな!
掃除当番で行き違ってしまったときに、よく学校でも靴箱を見て先に帰ってしまったか確認したりする。それの応用だ。
すぐ近くの階段をサッと降りて靴箱をチェックする。薄暗くて見づらいけどきっと見つけられる。えっと、シェルの出席番号が7番だから……
そこまで考えて私は思い出した。ここは宿舎だし、靴箱に出席番号なんて書いてなかったんだった!
二人の靴を探せば良さそうだけど、海の合宿では「汚れてもいい運動靴」を履くから、みんな似たり寄ったりの黒いスニーカーばかり。どれが誰のかわからないよー!
がっかりしてドアの前に戻る。もうとりあえず部屋に入ってみようかなぁ……こんなことしてる間に帰ってきちゃいそうだし。
やけくそになって、勢いよくドアを開ける。
部屋は真っ暗。私はほっとして電気をつける。片手に持っていたカーディガンを置いて手洗いうがいをしないと。
机にカーディガンを置くと、明らかに布だけじゃない音がする。私、それ以外に何か持っていてたっけ?
びっくりしてぐるぐる巻きのカーディガンをほどくと、一冊のノートがでてきた。もしかしてこれ……「魔法のノート」!?
さっき見つけて、何も書いてないのを確認した後は置いてきたつもりだったよ……
高速で手洗いうがいを済ませて、ベットの上にノートを持って寝転がる。どうすればいいんだろ、返した方がいいのかな?
ぼんやりしていると、ガチャっとドアノブが動く。私は自己最高速度で布団を被り、枕の下にノートを滑り込ませる。けど、時すでに遅し。電気がバッチリついたままの部屋に、シェルとみなみが戻ってきた。
頭の中に色んな考えが浮かぶ。起きてたのに行けなくて、シェルとか怒るかな?みんなで行くのが楽しい分、怒られても仕方ないんだけどね。
素直に、おまじないしてたこと言えばいい?でもマリエのプレゼント無くしたことは……さすがに姉のプライドが……うん、言えない!
しょうがない、オールナイト説教フルコースでもありがたく受けとめよう。そう覚悟を決めるまでおよそ1秒。私は布団から上半身を起こす。
「やっぱりマリンは起きてたでしょ」
誇らしげなみなみ。え、予測済みだったの?つまりシェルは怒らない?怒らないよね?
怒られる可能性が減って嬉しいけど、内密行動を徹底したのにバレてたなんて、複雑な気分。
「ふっふふ〜!マリン、隠しても無駄だよ!
私たち、マリンがこんな遅くまで起きてられた理由までわかってるんだから!」
シェルがドヤる。えっーと……そんなことある!?
いくら私がボロ出してても、マリエのプレゼント無くしたところから知られてるなんて……そこまで私、わかりやすいっけ?怒ってなさそうな幼馴染に安心するけど、複雑な気持ちが二倍に膨れあがる。
「マリンが遅くまで起きてたのは……ズバリ!
私たちが居なくて寂しかったからでーす!」
「……へ?」
ノリノリで告げたシェルと対照的に、私は呆気にとられる。あ、これはそういうことにしちゃうべき?
「ジ、ジツハソウダッタンダヨネ〜
丸わかりだったかぁ〜」
我ながら怪しすぎる。最初にびっくりしちゃったし。
「やっぱり!?やっぱりそうだよねぇー!
みなみ、見てた?私の推理当たってたよぉー!」
ラベンダーの三つ編みがぴょんぴょん揺れる。上手くいった……これで一安心だね。
「マリン、最初は驚いてたけど……」
みなみのジトっとした目つき。ヤバい、騙す人はもう一人いたんだった!
「もぉ〜そりゃマリンだし……私が当てたのにすっごいびっくりしちゃったんだって!ね、マリン?」
ファインプレーだよ、シェル!
「もちろんソウダヨ〜」
「まぁ、マリンなら有り得るかも」
うーん、なんか複雑すぎる。これで本当に一安心だ。
そう思ったら眠くなってくる。私、昨日もあまり寝てなくて寝不足だったよね。そう思い出すと自然な眠気に包まれていった。
あとがきーこれからも応援お願いします!




