第5話
啓示が降りてから5時間、江戸は両親の安否を確かめるため、両親の住む島まで、上空400mを飛んでいた。
「めちゃくちゃ寒いな」
春といっても、風はまだ冷たい。寝巻にパーカー一枚では、不十分だ。
(俺が世界を滅ぼす終読者。頭がぐちゃぐちゃだ。考えたいけど、飛ぶのに集中しなきゃ真っ逆さまだ)
「ん?」
真横から何か当たる。触ると、濡れている。
「雨だ」
雨は勢いを増してくる。
江戸は能力を使い、雨から自分を守る空気の層を作る。
(飛び続けて二時間半くらいか、能力にもだいぶ慣れてきた)
下を見ると、車が大渋滞している。
(海に出た怪物のせいか)
今自分はその海に向かっている。江戸は不安を飲み込み、飛び続ける。
江戸は、それから一時間、少し余裕もできてきて、技名を考えていた。
山を越え、街が見えた。現在位置確認をするため、高度を下げると、そこには、逃げる人達が大勢いた。
(まだ海まで距離があるだろ。何から逃げてんだ?)
すると、はるか前方から地ならしが聞こえる。雨の中、目を凝らすと、ビルほど大きい触手が見えた。
「あれが怪物?てかちょっと待て、海はまだ先だぞ。海だけに怪物が出たんじゃねーのかよ」
この超常現象の被害の規模を想像して、背筋が凍る。
「助けてくれー!!」
がれきの下から声が聞こえる。がれきをどけると、足を負傷している人を見つける。
「しっかりしろ、立てるか?おぶるから、早く逃げよう」
「悪いな、ありがとう」
江戸は負傷者を背負い、再び飛ぼうとするが、能力がうまく扱えず、飛ぶことができない。
「おい、なにしてんだ。早く逃げようぜ」
仕方なく走って、怪物から離れる。
(なぜだか分らんが、人が近くにいると、能力が乱されるのかもしれない)
負傷者を病院前の避難スペースに置き、簡単な応急処置をした。
「本当にありがとう。ここまでで大丈夫だ」
「じゃあ、俺はここで」
「どこ行くんだ?っておい!」
江戸は触手が見えた方向に飛ぶ。地ならしは急に激しさを増す。上空から近づき、怪獣の全貌を見た。
「あれは、ウツボか?さっき見えたやつはしっぽか」
そこにいたのは、全長300mほどの、正に超巨大ウツボだった。ウツボが通過したと考えられる場所では、家々が押しつぶされたような状態になっていた。
「これをどうやって、倒すんだ。さっき考えた技も通用しそうにないな。これなら、近くの人の避難を手伝った方がいいか」
その瞬間、動き方を考えている江戸を大きな口が捉えた。
「!?」
江戸は間一髪で丸のみを避けたが、ウツボの体にぶつかり、地面に激しく打ち付けられた。
「く、そこまで痛くないけど、危なすぎ」
ウツボの方に視線を向けると、ウツボと目が合う。
ウツボが大きく口を開けると、口の中に光線がたまり始める。
「え!打つの??」
すぐに空中へ飛び上がると、ウツボは溜めるのをやめ、江戸を追いかける。
「埒が明かねえな。ぶっつけ本番だけど、さっき考えたやつやるしかない」
空中で体をひねり、ウツボと向かい合う。
『空気砲!!!』
突進するウツボが吹き飛ばされる。
全力パンチで、拳に当たる空気を飛ばす技だが、威力がおかしい。
「なんか、めちゃくちゃ飛んでったな・・・ま、ナイスキル!」
しかし、ウツボはまだ動く。
ウツボが口を開ける。
「さっきのやつか、後ろがやばいな。避けたら人にあたっちまう。一か八かだが、『空気砲』」
5発打ち込んだが、1発しか当たらず先ほどの威力もない。
「やっぱり遠すぎる!」
ウツボがから光線を出した瞬間、それはウツボの目の前で爆発した。
「え、、、どした。空気に火が付いたみたいに燃えた。まさか、俺の能力は『空気』じゃなくて、『酸素』なんじゃね。すごいな、地球温暖化を解決できそうじゃん。いやいや、今はそれどころじゃない。進もう」
自分の本当の能力に気が付いた江戸は、がれきの山となった町をあとにして、両親が住む島へと向かう。




