帰還、そして、王配の誕生
全ての試練を乗り越え、私たちは、王都へと帰還した。三つの神器を手に、民衆と、重臣たちの前で、シンドバッドは、私への、愛を、誓う。ここに、ザルバード王国、初の、王配が、誕生する。祝福の、鐘が、鳴り響く。
数ヶ月に、及んだ、試練の旅を終え、私たち、ファラとシンドバッドは、王都へと、帰還した。
私たちが、三つの神器を、全て、持ち帰ったという、報せは、瞬く間に、国中に、広まり、王都は、熱狂的な、歓迎ムードに、包まれていた。
民衆は、私たちの名を、呼び、その、偉業を、称えた。
「ファラ女王、万歳!」
「シンドバッド様、万歳!」
もはや、彼のことを、「得体の知れない、流れ者」と、呼ぶ者は、一人もいなかった。彼は、その、知恵と、勇気と、そして、私への、深い愛で、国民の、信頼を、完全に、勝ち取っていたのだ。
数日後、王宮の、大広間で、神器の、奉納の儀が、執り行われた。
重臣たち、各国の、使者、そして、隣国マハラの、ラシード国王も、見守る中、シンドバッドは、三つの神器を、祭壇に、捧げた。
知恵の宝珠、勇気の盾、そして、慈愛の王冠。
三つの神器が、一堂に会した時、それらは、互いに、共鳴し、まばゆいほどの、光を、放った。
そして、その光は、一つの、巨大な、王冠の形となり、シンドバッドの、頭上へと、ゆっくりと、降りてきた。
それは、古代の、王位継承の儀式が、完了したことを、示す、奇跡の、光景だった。
彼は、神々に、そして、この国の、意志に、王の、伴侶として、正式に、認められたのだ。
その、神々しい光景に、最後まで、私たちの結婚に、懐疑的だった、重臣たちも、もはや、何も、言うことはできなかった。彼らは、その場で、膝をつき、新たな、王配の、誕生に、深く、頭を垂れた。
ラシード国王もまた、満足げな、笑みを浮かべ、私たちに、心からの、祝福の、拍手を、送ってくれた。
その夜、王宮では、盛大な、祝宴が、開かれた。
私は、女王として、そして、シンドバッドは、王配として、民衆の、祝福に、応えた。
バルコニーから、眼下に広がる、楽しげな、民の、笑顔を見ながら、私は、万感の、思いに、浸っていた。
長かった。本当に、長かった。
国を追われ、舞姫として、生き、復讐を誓った、あの日々。
ジンである、彼と出会い、共に、戦い、そして、愛し合った、激動の、日々。
全てが、この、瞬間のために、あったのだと、思えた。
「――何を、考えている、俺の、美しい女王陛下」
隣で、シンドバッドが、優しく、微笑んだ。
「……私たちの、これから、について、ですわ。私の、愛しい、王配殿下」
私たちは、互いを、新しい、称号で、呼び合い、そして、くすくすと、笑った。
「……ありがとう、シンドバッド。あなたがいなければ、わたくしは、ここに、いなかった」
「礼を、言うのは、俺の方だ、ファラ。お前がいなければ、俺は、今も、退屈な、永遠の時を、一人で、生きていただけだ。お前が、俺に、生きる意味を、教えてくれた」
私たちは、そっと、手を取り合った。
彼の、人間の、温かい手。
もう、彼は、何でもできる、神様ではない。
けれど、それで、いい。
ううん、それが、いい。
私たちは、これから、二人で、悩み、迷い、時には、喧嘩もしながら、この国を、そして、私たちの、家族を、築いていくのだ。
遠くの、教会の、鐘が、私たちの、結婚を、祝福するように、鳴り響いている。
私は、彼の肩に、そっと、頭を、もたせかけた。
私たちの、試練の物語は、ここで、一つの、終わりを告げる。
そして、ここから、始まるのだ。
女王と、王配の、長くて、幸せな、愛の物語が。
この、砂漠の国が、愛と、慈愛に満ちた、緑豊かな、楽園となる、その日まで。
私たちの、旅は、まだ、続いていく。