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女王の結婚と、砂の国の未来

私は、シンドバッドとの結婚を決意する。しかし、元・神との結婚に、周囲は猛反対。特に、父の盟友であった、ラシード国王は、国の未来を案じ、私に、苦言を呈す。私は、女王として、そして、一人の女として、愛を貫けるのか。

水源の一件で、シンドバッドは、自信を取り戻し、私もまた、彼との、未来を、共に、歩む覚悟を、固めた。

私は、彼を、ただの、側近ではなく、私の、夫として、王配として、迎えることを、決意したのだ。

数日後、私は、国の、重臣たちを集め、その、決意を、発表した。

「――私は、シンドバッドを、夫とし、生涯を、共に、歩むことを、誓います」

その、私の、宣言に、議場は、水を打ったように、静まり返った。

そして、次の瞬間、嵐のような、反対意見が、巻き起こった。

「なりません、女王陛下!」

「その男は、どこの馬の骨とも知れぬ、流れ者ですぞ!」

「元は、魔神ジンだったと? なおさら、いけません! そのような、得体の知れない存在を、王配として、迎えるなど、前代未聞!」

彼らの、言い分は、わかっていた。国の、安定のためには、由緒正しい、貴族か、あるいは、他国の、王族と、結婚すべきだ、と。

私は、彼らを、必死で、説得しようとした。彼が、どれほど、この国のために、尽くしてくれたか。彼が、どれほどの、叡智と、誠実さを、持っているか。

しかし、彼らの、凝り固まった、偏見を、覆すことは、できなかった。

そんな中、最も、強く、私の結婚に、反対したのは、隣国マハラの、ラシード国王だった。

彼は、私の、即位を、誰よりも、喜んでくれ、そして、支えてくれた、恩人だ。

彼は、私的な、会談を、申し込んできた。

「ファラ女王。……君の、気持ちは、わかる。だが、女王という、立場は、個人の、感情だけで、動いては、ならんのだ」

彼の、声は、友として、私を、案じる、温かさと、王として、私を、諭す、厳しさを、帯びていた。

「君が、その男と、結婚すれば、君の、治世は、常に、不安定なものとなるだろう。貴族たちは、従わず、民も、いつまでも、不安を、抱き続ける。それは、この国を、再び、混乱へと、導く、火種となりかねん。……亡き、我が友、君の父上も、それを、望んでは、おられないはずだ」

彼の、言葉は、正論だった。そして、父の名を、出されたことで、私の心は、大きく、揺らいだ。

私は、女王として、国を、守るべきなのか。それとも、一人の、女として、愛を、貫くべきなのか。

その夜、私は、一人、父の、肖像画の前で、佇んでいた。

「お父様……。わたくしは、どうすれば、よいのでしょう……」

答えの出ない、問いに、涙が、こぼれた。

その時、背後から、優しい声が、した。

「……悩んでいるのか、ファラ」

シンドバッドだった。

彼は、私の隣に立つと、何も言わずに、ただ、一緒に、父の肖像画を、見上げてくれた。

「……俺は、お前の父君を、知らん。だが、お前のような、娘を、育てた男だ。きっと、素晴らしい、王だったのだろうな」

「……ええ。誰よりも、民を、愛し、そして、家族を、愛した、偉大な、父でしたわ」

「……ならば、答えは、簡単だ」

彼は、私に、向き直った。

「お前の父君が、本当に、望むのは、国の、安定か? それとも、最愛の娘である、お前の、幸せか? ……俺は、後者だと、思うがな」

彼の、言葉。それは、何の、根拠もない、彼の、ただの、願望だったかもしれない。

けれど、その言葉は、私の、迷いを、吹き飛ばしてくれた。

そうだ。父なら、きっと、そう言ってくれるはずだ。

私の、幸せを、一番に、願ってくれるはずだ。

「……ありがとう、シンドバッド。わたくし、決めたわ」

私は、涙を拭った。

翌日、私は、再び、重臣たちを、集めた。

そして、私は、一つの、提案をした。

「――わたくしの、夫として、相応しいかどうか、試練を、与えることを、提案します」

その、試練とは、古代から、この国に伝わる、王位継承の儀式。

国の、三つの、聖地に眠る、「知恵」「勇気」「慈愛」を、象徴する、三つの、神器を、手に入れてくる、というものだった。

それは、これまで、誰も、成し遂げたことのない、あまりに、過酷な、試練。

「もし、シンドバッドが、この試練を、乗り越えられたなら、その時は、彼を、王配として、認めていただきたい。……もし、できなければ、わたくしは、この恋を、諦め、生涯、独り身で、国に、尽くすことを、誓いましょう」

私の、覚悟。

そして、シンドバッドへの、絶対的な、信頼。

その、私の、提案に、重臣たちも、ラシード国王も、もはや、反対することは、できなかった。

こうして、シンドバッドの、女王の夫となるための、壮大な、試練の旅が、始まることになった。

もちろん、私も、女王の座を、一時的に、ラシードに預け、彼と、共に、旅に出るつもりだった。

「馬鹿を言うな。これは、俺の試練だ」

「いいえ。これは、私たちの、試練ですわ」

私たちは、笑い合った。

私たちの、未来は、まだ、決まってはいない。

けれど、二人でなら、どんな、困難も、乗り越えていける。

私たちは、固い、絆で、結ばれているのだから。

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