26. キョンシー騒ぎ
「道士が殺されたか、捕虜になってるか。どちらにせよ、子供だから効力が弱まっても制御できたんだろうな」
「それはどういう?」
「キョンシーってのは道士が死体を起こさなきゃできねぇ、つまり妖怪の中でも別格だ」
てっきりジョンみたいな感じかと思ったんだけど、もしかして少し違う? 人為的に存在するってこと?
そもそも、キョンシーってどんな存在なのかよく知らない。なんかお札つけてて中華っぽいやつとしか。
「岩を殴れば砂になる怪力の持ち主だ。額の札で制御しなけりゃ誰かれ襲う化け物になりやがる」
思った以上にやばいものを拾ってしまったかもしれない。
煌華帝国ではキョンシーを作る際に死体の身元確認や申請が必要になるとかなんとか。道士自体も国家資格で、役所の名簿になければ闇道士の仕業でめんどくさいだなんだとか。
「龍黒会のキョンシーが正規ルートなわけがねえ」
思わずキョンシーを見る。無表情だけどあどけない顔だし、話の内容もよくわかってなさそうだ。
「とりあえず……何を食べるの?」
頭を撫でながら一番大事な部分を聞く。
厨房からこっちに来ようとしていた大将は転びかけ、セシリオは唖然とし、白露さんが開眼した。ジョンだけがポカンとしている。
「おめえなぁ……」
「諦めてください、こういう人です」
「こらまた大物やなぁ」
流石に雰囲気で察する。私はなにか間違えたらしい。けど大事なことだし。
「オイラもお腹すいたー」
「ランチタイム終わりだし休憩入ったんじゃないの?」
「別バラってやつ!」
「そんな豚バラみたいに……」
絶対によくわかってないというか、胃がないから当然か。ジョンと一緒っていうのは癪だけど、なんて返せばいいかわかんないし。お腹空いてるならそっちの方が重要だし。
「あんたは? お腹空いてない?」
「ナナシ?」
「そう」
キョンシーがフリーズする。勝手に内心でキョンシーって呼んでるけど、本人と同じでナナシって呼ぶのもなぁ。多分このナナシってあの、記入例とかにある山田花子とかみたいなもんでしょうし。
「ここ、みんな元気」
ナナシが大熊猫軒を見回して呟く。
疲れているからこそ、みんなお昼ごはんで元気をチャージしていくし、夜の部ではビールと中華料理で明日への活力を養う。にぎやかなお店だ。社食もこのくらいカジュアルになれたらって思う。
「ナナシ、おなか、いっぱい」
「……どういうこと?」
「キョンシーは人の気ぃ奪うさかい。残った気配だけでも十分やろうな」
白露さんが煙管を吹かしながら教えてくれる。いや、それ咥えてるの反対ですけど。まだ動揺してるって隠せてないですけども。
「みんなをお腹いっぱいにすれば、この子もお腹いっぱいってこと?」
「そういうことでしょうね」
「じゃあ、ここにいさせてもいいわよね?」
「どういう理屈ですか」
セシリオに睨まれる。可哀そうというか、髪とか目の色が魔王と似てるからほっとけないっていうか。とにかく保護したい。ただそれだけ。
「そもそもあなた、ちゃんと面倒見れるんですか? どうせ私が見るのでしょう?」
詰め寄るように言われる。それって子供が動物を拾ってきたときのお母さんのセリフじゃない? 私は経験する前に死んじゃったからわかんないけど。
「……んったく。二人とも勝手に決めんじゃねえ。まず、そいつは龍黒会のもんで、向こうから見りゃ誘拐だ。真っ向から喧嘩売ったようなもんだぞ」
困った様子の大将に、二人して顔を見合わせる。
ついつい、いつもの流れになってしまっていたけど、ここは異国の地。魔王が何とかしてくれない。
「おめえらの上に相談してこい。話はそれからだ」
上……上司……行政部の責任者はここ数百年表に出てきていないらしいし……となると、そのなんとかしてくれないであろう魔王に?
「通信手段、あるの?」
次回は来週の平日はじめのお昼頃更新……の予定です。ブクマ、リアクション、コメントなど励みになります。
大変遅くなりました。別件の締め切りに追われてまして……へへへ_| ̄|○ ガクッ




