22. めんどくせえこと
「えっとこれは、その……あいつを消せば許されたり、しない?」
多分まだ伸されてるはずだから、今すぐ連れてきて鍋にでもしちゃえばなんとか……。あれ、ネズミって食べれるんだっけ?
「火鼠は逃げ足が早いからな……もういないだろ」
「えっ」
「それよりも、いつまでどんぶり被ってんだぁ?」
「アッ」
眉間を抑えている大将。頭のどんぶりから担々麺のひき肉が落ちた。流石にこれは食べられない。3秒ルールの度を過ぎている。
どんぶりを脱ぐと、麺がズロロロッと落ちた。
「勿体無い……」
「え、じゃあオイラ食べ……るのはやめとく」
「G入りで私の頭に被った上に床に落ちてるんだから、これで食べたら一緒のベッドで寝ないわよ」
「……いいから洗ってこい」
大将に言われてシャワーを浴びて戻ってくると、床にぶちまけられた担々麺は綺麗に片付いていた。セシリオが自分の手際の良さにドヤ顔してる。
「はいはい、綺麗ね。さすがだわ」
「そうでしょう」
可愛げがあるといえばいいのか、ナルシっていえばいいのか。
そもそもお昼営業は終わりだしとドアの札をひっくり返して、数少ないテーブル席に座る。大将が口元あたりでちっちゃな指先を組んでいる。パンダとはいえ、怖い。
「……まずは、大丈夫か?」
「っえ、はい!! 大丈夫です」
心配してくれるとは思わなくて、声が裏返った。クビ宣告かと思った。
「危ない目に遭わせちまってすまねえな」
「い、いえいえ、ぶっ飛ばしちゃってすみません」
ついカッとなって……ってこれじゃ殺したみたいなことになる。
あの火鼠はどこに逃げたんだろうか。いっそ皮衣にして皇帝に献上すればよかったかもしれない。
「……まぁ、面倒なことになっちまったな」
大将が頭を掻く。
「まず、大陸は主に三つのファミリーと四人の大将軍、一人の皇帝によって治められてるんだが……」
大陸はかなり広いらしくここは端っこも端っこで、敵もあいつらだけじゃないんだとか。
三つのファミリーの一つがさっきの龍黒会。北西部から南西部を牛耳っており、三つの中では一番新しい。小さな派閥をまとめたもので、一枚岩ではない。らしい。なんで知ってるのか。いや、この国では常識なのかもしれないけど。
ジョンなんて理解不能すぎて自分の骨で遊び始めた。
「将軍というのが、東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武将軍だが……」
東西南北で分かれて……ん?
「あれ、ここって誰?」
「それが曖昧なんだよ」
港自体は北判定だから、玄武将軍の管轄。だけど港から少し離れた西との境目であるこの街は曖昧で、問題が起こってもどっちがくるかわからない。それもこれも、龍黒会ができる前に壊滅した派閥がドンパチやったせいらしい。んで、ここはその時に自治区としてなんやらかんやら……。
「ええと、つまりぃ?」
「めんどくせえことになった」
訳ありな土地でぶん殴っちゃったってことか。
「元々、大将はここら辺で顔が利く人で、機を狙って将軍と会わせていただき、恩を売ったり懐柔する予定でした」
「え、そうなの」
「皇帝との謁見なんて将軍クラスにならないと不可能ですから」
そういえば、向こうの協力者と合流し、機会を見て接触することって言ってたわ。誰とかちゃんと言いなさいよ。
「知り合いの北の将軍……つまり玄武将軍は亀に蛇が巻き付いた神獣で、人化形態では男と女の二人組なんだが……まあ男の方が守り特化なやつでな。攻撃的なやつを嫌う」
今サラッと攻撃的なやつ判定されたんだけど。
「女の方は耳が早ぇから……このことも、まあもう知ってるだろうな」
「困りましたね。いっそのこと徹底的に、敵を将軍に差し出して恩赦を狙いますか」
「はぁ!?」
ちょっと聞きました? セシリオの方が十分攻撃的ですよ。世界を滅ぼそうとしたやつですよ。
「まずは敵の情報を集めなければ……」
え、何。なんでこっち見てるの?
「ちょうど、出前という手段もあることですし」
魔王城に、今すぐ帰りたい。




