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14. 頭蓋骨はいらない


「連れて行けるわけないでしょ。目立つわよ」


 毎度のごとくやってきたジョン。あんた就業時間中よね、とはもはや言わない。どうせ食べ物の匂いを嗅ぎつけるか変な勘かでサボってきたんだろう。


「オイラも美味しいもの食べたいっ!!」


 じたばたするジョンとオロオロしている魔王。それを心底引いた様子で見るセシリオ。スーパーで駄々こねてる子供に困るお母さんと周りの人か!

 まったく、社食どころか休憩用おやつも食べに来てるくせに……この食いしん坊め。袖の下作戦の時に巻き込まなきゃよかった……。


「あのねぇ、そもそも魔族が行けないわけで」

「オイラ元人間なのに!?」

「え、そうなの?」


 初耳。確かによくよく考えてみるとスケルトンって人骨よね。でもそれにしては額にちょこんと一本角とかあるし、目とか怪しく光ってるし。心臓青いし。と謎に思っていたここで、解説のセシリオ君。


「スケルトンは変異個体のウィルオウィスプの集合体が人骨に入り、融合した形になります。他にもゾンビなど色々ありますが……アンデット系は死体に魔物の魂が宿ったものが多い、というのは常識でしょう」

「……なんか絶妙にグロいわね」


 ウィルオウィスプってつまり鬼火だから、死体が鬼になったっていうのと近いんだろうか。この妙に小さいサイズも、子供の骨だったからってこと? そう思うと少しは……かわいく思えないのはジョンだからだろう。うん。


「つまり魔族ってことなのね」

「そうですよ、元人間でも今は魔族です」

「ですって。だからダメっ!」


 ぴええええって嘆くジョンを慰めるようにクリームチーズケーキの最後の一口をあげる魔王。相変わらず優しすぎるんだから。甘やかさないの。


「オイラお留守番?」

「頼んだからね」


 まあでもこんだけ毎日やかましい馬鹿と一緒にいると、ちょっと寂しい気がしなくもないけど。こればっかりはしょうがない。帰ってきたら好物でも作ってあげよう。


「で、何しに来たの?」

「あー。お届け物です!」


 アホ面で扉を開けるジョン。そこに気まずそうに立っていたギガンテス。手に持っているのは小さな……いや私からすれば大きいはずの箱。

 まず、いつからそこに。大きすぎて背景みたいになってたから、全然気づかなかった。


「ワイバーン運輸が間違えテ、こっちのエリアに運んできたんダ」

「あ、そうだったの。基本食堂はオーガ配達かケンタウロス便なんだけど……何かしら」


 最初は戸惑った魔界の運送業者事情。陸上は力持ちなオーガ配達と速さ重視なケンタウロス便が有名で、空輸は竜の下位種族のワイバーン運輸が覇権を握っている。空輸は高いから戦場への物資補給とかばっかりなはずなんだけど……。


「ああ、もう届いたのか。開けてみるといい」


 どうやら魔王の頼んだものらしい。ギガンテスが中腰になりながらも床に置いてくれたから、言われた通り素直に開けてみる。質の良さそうな茶色い皮、角を守る金ピカな淵。


「……これ、旅行鞄!?」


 出張用にと私とセシリオの分をあつらえてくれたらしい。


「気を付けて行って帰ってきてほしいからな」

「ありがとう!」

「ふん、言われなくとも……」

「ほらお礼」

「っ。ありがとうございます」


 魔王は気にも留めずにニコニコしてるけど、無理やり頭を下げさせた。


 こうして初夏がきて、前のようにジメジメした空気に負けないように一足早い夏バテ防止メニューを作ったり、忙しく過ごしているうちに、あっという間に時は過ぎた。



「我々の役目は向こうの協力者と合流し、機会を見て接触すること……名目上は食堂係としての出張です」

「何その無茶な計画。誰が立てたのよ」

「私ですが?」


 こんな人の気持ち考えない計画、魔王ではなさそうだとは思ってたけど、あんただったか……。


「なるべくさっさと帰ってきますよ。目標は夏季休暇中です」

「ええ、もちろん。大陸料理を食べつくして、腕を上げるわ!」

「重要なのはそこではないのですが」


 荷馬車に旅行鞄が積まれる。

 魔王城の半数が夏季休暇を取る中、セシリオと共に魔王城を出発した……はずだった。


「「はぁ!?」」

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― 新着の感想 ―
ぢょん…残念な子。 今日のおやつはチーズケーキにしようそうしようゲヘヘ。
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