4. プルプルでとろけるやつ
「ったのもーー!!」
今度こそ、と会議室のドアを開けた……のだけれども、物々しい雰囲気は一転。和気あいあいと世間話やら最近面白かったことを話している魔王たち。ただ勢いよく突入しただけになった私。
……え?
「? ああ、先ほどは追い出してすまなかった」
「今姉御の元カレ?の話聞いてるんだぜェ!」
いち早く私の存在に気づいてくれたオルトロスたちが駆け寄ってくる。とりあえず空いていた椅子に座った。大人しいギガンテスの頬をつついて管を巻いているバジリスクと、それを真面目に聞くオルトロス。酔っぱらってないはずなのにあんだけ愚痴れるバジリスク凄い。そして、その様子をただ眺めている魔王。表情は動いてないけど、多分あれは心の中でニコニコしてる。
「だからもうどうしてあの馬鹿……ってあら小娘いつの間に。その入り口の大荷物はなぁに」
「あ、えっとこれはね」
さすが蛇なだけあって、第六感がよく効く。つい本題も忘れて、ルイスとの過去話に聞き入ってしまった。
置きっぱなしだった荷台を運んでくる。大きなバケツに大きなバッド。おまけにお皿だって大きい。気にならない方がおかしい荷物だ。
あんまり深く考えてなかったけれど、ここって飲食禁止とかじゃないわよね?
「ええっと、おやつのデリバリー……みたいな? ギガンテス、ちょっと手を貸してくれない?」
「わかっタ」
大きなお皿を蓋にしたバケツ。今回ゼラチンを使ってないから出しづらい……けどギガンテスの怪力があれば。
「バケツの底とお皿の蓋、これを両方抑えて振ってちょうだい! もう思いっきり……あ、粉砕しない程度で」
その瞬間、爆風が起こった。全員の前髪がオールバックになる。レアなギガンテスのご尊顔もお久しぶり。
「これでいいのカ?」
「え、ええ。それをお皿を下にした状態で置いて。バケツを取って」
長机の真ん中に置かれたバケツ。さあいよいよご対面。
バニラの香りと共にふるりと揺れる黄色のつるつるボディ。とろりと垂れるこげ茶色のカラメル。なによりこの、心が躍るほどのデカさ。
「……ああ、この間の」
「そう、バケツプリンよ!」
思い出している魔王と、いまいちピンと来ていない四天王。とりあえず食べて御覧なさいということで、プリンの山を削る。最初はシンプルにそのままで……はい!
もう私の料理になれた四天王達は、何も疑うことなく素直にスプーンを持つ。そのプルプル具合に驚きつつもパクリ。
「うまい」
「なんだァこれ、甘ぇぞ!」
「やだ、これ甘くて、つるんってしてて……」
「!!」
私は今きっと満面の笑みを浮かべていることだろう。上げすぎた口角が痛い。みんな欲しかった反応をくれて最高。そうでしょう、そうでしょう。おいしいでしょう。なんてったって巨大怪鳥の卵がとっても濃厚なんだもの。
けど私の攻撃はまだ終わらない。ほんの少し溶けてきた今が、きっと一番おいしい。第二弾にはアイスをトッピングよ。またもや何をしているのかわかっていない様子だけど……。
「はい、バニラアイストッピング」
「……アイスとは?」
「まあいいから、一緒に食べてみなさい」
どうやら魔王でさえアイスは知らないらしい。そういえば、人間界以外でスイーツってあんまり見ない。ハナさんたちから、クッキーとかキャラメルみたいなのはたまにもらうけど……。
なんて考えている間に第二弾もパクリ。カラメルとアイスは合う。プリンとアイスも言わずもがな。
みんなとろけている。冷たいとろとろとプルプルのハーモニーにとろけている。オルトロスの尻尾が揺れすぎて風圧が起こってる。ギガンテスは染み入ってるし。
「小娘、あなたこれ罪を犯してるわよ。大罪よ。太ったらどうしてくれるわけ?」
バジリスクにはなぜか怒られた。いつもがっつり食べていくくせに何を言っているのやら。……砂糖の量とカロリーは黙っておこう。お互いのために。
「おかわり」
「あ、はいはい」
そして静かにずっとおかわりを所望してくる魔王。ただもくもくと、幸せそうに食べてる。いつもきりっとしてる眉がへにゃっと八の字で……なんだろう、とってもかわいい。もっと食べて。魔王城のバケツの大きさだからすごく大きいわよ。
と、まぁみんなの気が緩んで、私が満足したところで。
「どう? 私を大陸に送ってモツにしたら、もう食べられないわよ? いいの?」
バケツプリンのおいしさに魅入られている魔王たちに、胸を張って言い放った。




