54. 聖女様は苦戦している《裏》
「なんか、敵が強すぎる……」
魔王城の砦、最後の四天王ギガンテスを倒して、中に入れた私たちでしたが、一階でこんなに苦戦するなんて思ってもみませんでした。
右にはミミックキング、左にはデュラハン、前には2階への階段を守るゴーレム。
やっぱり、レベルが足りていないんじゃ……。
*
『貴方たちにお話ししたいことがあります』
天空の頂にて四天王グリフォンを倒した時、彼はダメージを受けた様子もなく、他の四天王のように逃げることもしませんでした。
剣を握り直す殿下を見て、グリフォンは両手を上げます。
『私の話を聞いてください。私は貴方達の味方、魔族に滅ぼされた獣人村の生き残りです。魔王を倒そうとグリフォンに扮し、潜り込んでいました』
衝撃の事実に驚くと同時に、何かがカチッと切り替わったような気がしました。
漠然とした不安が胸を襲い、自分が正しいのかわからなくなります。
『……獣人村なんてあったのか?』
『はい、とても小さなものでしたから、誰にも知られていませんでしたが』
殿下や先輩、ジャックが話を聞こうとしているのがすごく危ない気がしました。
何より、グリフォンの目に光が宿っていないのが引っかかって……。
『殿下、信じちゃダメです。私たち、さっきまで殺されかけてたんですよ!』
みんなは驚いた顔で私を見ました。
あれ、私、今まで人を疑ったことなんてなかったような……。
『……その節はお詫び申し上げます。私に負けるようであれば魔王になんて勝てませんから。私は貴方たちに助けてもらいたいのです』
目を伏せ傷ついた様子で語るグリフォンに、自分が悪い人になったようで、何も言えません。
そう、ですよね。グリフォンは魔族の被害者で、守るべきで、私は何を疑っているのでしょうか。
『急がないと悪き魔王によって聖魔法が封じられ、世界が乗っ取られてしまいます』
グリフォンは、魔王はバジリスクを捨て駒として使い、聖魔法を研究していたと言うのです。
私はグリフォンの言うことを聞き、聖魔法のレベル上げを第一優先にしました。他にも古の戦場エリアのギミックやモンスターたち、魔王城の敵の弱点などを聞き、最速で向かうことになりました。
*
「くっ、攻撃が入らない!」
「魔法も駄目だ。なんでこんなレベル以上に強いんだよっ」
「俺が抑えるよ! スピカ、今だ!」
「聖なる光!」
どうにか聖魔法で気絶させます。消費が激しくて、このままでは魔王戦の前に魔力切れになってしまうかも。
「また敵が湧いてくる前に早く二階へ行こう」
「えっ、ああ、はい!」
殿下が差し伸べてくれた手を取るのに、躊躇ってしまいました。
「どうかしたのか?」
心配そうな顔のみんなに、打ち明けるべきか迷います。
「いいよ、言ってよ!」
ハッキリと言うジャックに背中を押されます。
……大丈夫、ですよね。今まで一緒に冒険してきた仲間なんだから。
「その、ずっと、不安を感じているんです。何かが変わってしまったような気がして」
自信や正義が揺らいでいる聖女なんて。
……みんなの顔が見れません。
「それは魔王を倒してから考えればいいんじゃね?」
けど、先輩が肩に手を置いてウィンクをしながらそう言います。
「俺はどんなスピカにでもついていくよ!」
ジャックが笑顔でそう言ってくれて。
「……スピカ、この世界を守ろう」
決意のこもった殿下の言葉に、今まで出会った人たちの祈りを思い出しました。
「はいっ!」
手を取って、二階へと登ります。
不安なんて気にしなくていい。やれるか、じゃなくてやらなきゃ。この世界の人々のために!




