53. 勝手に殺すな
転移魔法陣でいつもの中庭に出る。
まず向かうはギガンテスのところだ。聖女が突破したからって増援が来られても困る。復活させて、魔王城を守ってもらわないと。
古の戦場エリアも近いし、ついでにジョンも見つけられたら嬉しい。
「なっ、エリザベスさんなぜここに……っぐ!?」
途中で研究員さんに会ったからおにぎりを口に入れて黙らせた。厳戒態勢の中をおにぎりという武器で乗り越えて、魔王城の城門へ着く。妙に人だかりができていた。
その真ん中には……地に伏している青髪の美少年がいた。え、凄い美形。ここだけ作画違くない?
昭和の少女漫画みを感じて惚けてしまう。いやしっかりしなさいよ私。あれ魔力を取られたギガンテス。
「ちょっとどいて」
「生贄がなんでここに!?」
「しょ、食堂係さん!?」
ざわつく周りを無視して、おにぎりを口に捩じ込んだ。お茶も用意できたらよかったんだけど。
「っうぅ」
うめき声が聞こえたと思ったら、急に大きくなった。他の四天王たちはボフンだったけれど、今回はニョキニョキが正しい。まるでアスパラガスのように伸びていった。
キョロキョロと見回すギガンテス。回復したとはいえダメージを負ったんだから無理しないでほしい。
「大丈夫?」
「……アリガトウ」
「いーえ、生きててよかったわ」
さっきの美少年が拝めないのがちょっと惜しい……なんて思ってないわよ。流石に不謹慎だもの。うん。
話を聞くと、聖女はギガンテスの不意をついて魔法でワンパンしたらしい。
「なんていう外道な戦い方……」
「いいや、オレが弱かっタ」
絶対そんなことない。こんな惨い光景にして、骨になった魔族まで……ん? この骨、見覚えがある。何度も壊したし拾ったやつ。
「ジョン!! あんたバラバラになって……ということは無事ね」
お得意の死んだふりだ。
元に戻って泣きながら抱きついてくる。
「エリザベス様ぁーーーー!!」
「あんた涙腺ないのにどっから涙出してるの?」
ジョンの背が低いせいでお腹らへんがびちょびちょに。
「聖女は全部知ってたんだよ!! だから光魔法で影を作れなくするし、ゾンビ軍曹を吹っ飛ばしてぇ……!!」
「ギガンテスから話は聞いたわ」
推測するに、グリフォンは聖女と繋がっていたということか。攻略法を全部教えたから、こんなに早くやってきたんだ。
「そのゾンビ軍曹はどこ?」
「あそこ……死んじゃった……」
「アンデットなんだから最初から死んでるでしょ」
魂の浄化の魔法はクリア後に習得できる魔法だから、大丈夫。とりあえず口におにぎりを突っ込んだ。
「む……これは一体……。貴様ら、何をしている! 位置につけぇ!」
「落ち着いて、もうここに聖女はいないの」
「い、生贄!? 貴様なぜ食われておらんのだ!! このままでは魔王様が……キエエエエエエエエ!」
「エリザベス様っ!」
錯乱したまま切り掛かってきたゾンビ軍曹から、ジョンが身を挺して庇ってくれる。
え?
切れてバラバラになったジョンの口に咄嗟におにぎりを突っ込んだ。一瞬で復活した。
「おにぎりうまっ!」
「……それはよかったけれども」
びっっくりした。なんて呑気なやつなの。こっちは心臓が止まりかけたってのに。
「今軍曹を助けてくれたのはエリザベス様です! 恩を仇で返してはならないって軍曹いつも言ってるじゃないですか!」
さっき切られたくせに歯向かうジョン。ハラハラしたけども、どうやらゾンビ軍曹は厳しくも誠実なアンデットらしい。
「ぐ、ぐぅ……。しかしだな!」
「大丈夫よ。これ全部届け終えたら、魔王のところに行くつもりだから」
「え?」
ゾンビ軍曹とジョンが目を丸くする。なんであんたたちが驚くのよ。
「エリザベス様死んじゃやだーー!!」
「だったらさっさとおにぎりを届けるわよ。手伝いなさい」
「ふぁい……」
ギガンテスたちに予備のおにぎりを渡して、場内に戻る。
酷い惨状だ。自分がゲームをプレイしていた頃は全然思ってなかったけれど、もう聖女の方が魔王なんじゃないだろうか。こんだけ魔族を倒して……。光魔法で一気に倒してくれているおかげで死んでいないのが幸いだけど。
「早く行かないと」
こうなったら私怨も込めて聖女にグーパンチしてやる。




