49. 答え合わせ
────その時、胸元の指輪から緑色の光が放たれた。唐草模様は壊され、グリフォンは吹っ飛ばされる。
「っ!?」
そうだ、私、魔王から預かってて……。
倒れたグリフォンが体を起こしたと同時に、床に見覚えのある魔法陣が現れる。
「……やはりお前か、グリフォン」
魔王が、助けに来てくれた。
魔王は私を抱き寄せて、グリフォンに手を向ける。いつでも魔法が出せる、ということなのだろう。
「っ一体この力は」
「それはお前が知らなくていいことだ」
魔王が放った衝撃波がグリフォンの腹に直撃する。
「カハッ!」
グリフォンの口から出てきたのは黒い石だった。魔王はそれを魔法で引き寄せ、粉々にする。腕の中から見る横顔は、不器用で優しい魔王ではなく、魔界で一番の力を持つ魔族の王だった。
ああ、食堂に来ないわけだ。こんな怖い人が来たら、一般魔族たちはごはんどころではないだろう。
「お前はずっと、人型以外を見せなかったな」
魔王はグリフォンの手を、足を、体を拘束し、一歩また一歩と近づいて行った。
確かに、聖女戦の後のグリフォンは小さくなっていなかった。でも、私は前世の記憶で知っている。鷲の頭に、ライオンの下半身。正しくグリフォンのはずだった。
「いや、見せられなかったのだろう? 黒魔術に手を出すどころか、魔石まで飲んでいたとは。気づかないわけだ」
拘束されたグリフォンは為す術もなく、獣の姿へと変わっていく。その鳥に、ライオンの下半身はなかった。
「お前が何かを隠しているのはわかっていた。だが、魔族には誰しも人に言えないことくらいある。お前が害にならないのなら、それでいいと思っていたんだ」
淡々と告げる魔王の表情は変わらない。でも、私にはなぜか泣いているように見えた。
「なんのことでしょう。私は魔王様のことを思って……」
魔王は人型に戻してやり、この期に及んで言い逃れをするグリフォンの顔を掴んで睨みつける。
「あれだけ敵意を示していたお前が、エリザベスを殺しに行こうとしない時点でおかしかったな。お前は冷静に見せかけてその実、衝動的だ。自分の敵となる者には容赦しない」
「だがお前は食堂を潰す策も練らず、結界を調べるだけで壊そうとしなかった」
「俺がエリザベスを食わず、計画に狂いが出てそれどころじゃなかったからだ」
「第三形態になり魔力の増幅した俺の亡骸を回収し、世界の破壊の媒体とする予定だったのだろう?」
私のゲーム知識は、魔王を倒したノーマルクリアだけで終わっている。ただ、そういえば、ネットの攻略サイトではダンジョンでのラストボスの欄もあった。まさか……。
「ダンジョンにあった装置は壊してある。今稼働しているものはドワーフに作らせた模造品だ。お前の計画は、もう破綻しているんだよ」
グリフォンはただの四天王じゃない。ゲームの裏ボスだったんだ。
「き、貴様らのせいだろう。私はっ、私は……」
「御託はいい。ただ復讐はできなくなったと伝えているんだ。グリフォン……いや、セシリオ・エル・ガルセスと言った方がいいか」
魔王がその名を呼んだ時、グリフォンの目の色が変わる。
「亡オロレイア獣王国の王太子殿下」
……それは、魔族と人間の戦争に巻き込まれ、歴史から抹消されたこの世で唯一の、獣人の国だった。




