47. メガ盛り週間
じゅー、じゅわじゅわ。
フライパンの上にはおっきなハンバーグが堂々と載っていた。プスッと差してみればぷつっと肉汁が出てくる。冥界牛は氷穴エリアの最深部にいることもあって、さっぱりとした脂が多く、甘みが強いのが特徴。
さて、もうそろそろ……。今。
まるでホットケーキのようにお皿に移して割ってみる。ぶわっといい匂いと肉汁もがあふれ出てきた。よしよし、中までちゃんと火が通ってる。
*
気になることはありつつも、結局カレーの人気が高すぎる問題はまだ解決していないわけで。
やはり原点復帰。
「値段は気にしていないと思うぞ。そもそも軍のやつらは魔王城の中でもそこそこの給料をもらっている」
「金のことはよく分かんねェ。ジョージに聞けやァ」
衝撃の事実だったのはマッチョ集団は高給取りな上に、あんまり値段を気にしていなかったらしい。どっちかっていうと味だったり量だったりが決め手なことが多いのだとか。……あと薄々気づいてたけど、チャーリーってジョン並みに馬鹿。道理でいつも支払いとかジョージの方がしてるなって。
「そうねぇ。量が欲しいって子が多いと思うわぁ」
「量?」
「ええ。たまに食堂に来た時くらいガッツリ食べたいもの」
驚いたことに、それは研かつ部も一緒だった。集中してるときは何も感じないけど、一度落ち着くとお腹が空くらしい。意外だった。なんかこう、玄米とかせいろ蒸し料理食べてる意識高い系かと思ってた。
「物足りなイ……」
ギガンテスからはやはりの一言。ドワーフのおじいさんに追加注文で大きな食器やカトラリーも頼んでるからもうちょっと待っててほしい。
意見をまとめるとシンプルに、量が欲しいってことだった。最初の頃は高いって意見が多かったけど……客層が変わったのもあるかもしれない。
でも単に量を増やすんじゃ地味だし、周知するにはどうすれば……。
────ハッ!!
*
「こんちゃっす。メガ盛りハンバーグおねしゃっす!」
「あ、自分はメガ盛り唐揚げ定食で!」
「はーい」
届いたばかりの大きなお皿に大きなハンバーグをどさっと載せる。お次は唐揚げマウンテンを建造。ピクシー達がどんどん運んできてくれるけど、足りない。ああ、楽しくてしょうがない。
「重いから気を付けてね……ってその筋肉なら大丈夫か」
「うっす!」
オーガのお兄さんは大事そうに両手で、でも軽々と持って席へ。ひょろがりが多い研かつ部のお姉さんは一個つまみ食いして運んで行った。いや、多分あれ待ちきれなかっただけだわ。
「っエリザベス、そっちは大丈夫かい?」
「あっ、はい。なんとか大丈夫です。マチルダさんは……」
「こっちは大丈夫だよ」
思いついたのは、シンプルに盛ること。
ただ増量するんじゃなく、大きくしたり山にしたり。まるでフードファイトのように、正常な思考は捨てて盛る。だって、人間も魔族も、おっきい食べ物には惹かれるもの。
おかげで満員御礼。思惑通りに注文メニューはバラけ、本当はどれがどういう層に人気なのかがわかってきた。これで随分と仕入れが楽になるはずだ。
「ごちそうさまでしたー」
「はーい、お粗末様ー」
まあ手作業で集計するのは大変だったけど、こればっかりはしょうがない。……今度バジリスクに食券機にPOSシステムみたいなのつけてもらおう。あと今は来れる人には時間をずらしてもらってるけど、やっぱりお昼時は混んでしょうがないから食券機がもう二台くらいほしい。
「お昼営業終了! さぁーあたしたちも昼食だ」
「お腹空いたわー、もうぺったんこよぉ! ぜい肉は消えてくれないけど!」
「うふふ」
おばさま方が次々にエプロンを脱ぐ。疲れたけど、やっぱりメガ盛最高。こう、血が騒ぐ。
「……魔王も来ればいいのに。あんだけ大食いなんだから」
「はー、つっかれたぁーん。ってなんか言ったかしら?」
「ううん、独り言。お疲れジュリエット」
私としては友達に来てほしいけど、まあ威厳とかあるわよね。
「それにしても平和だわ」
「これがぁ? いっそがしいじゃない」
「そうなんだけどね」
……嵐の前の静けさみたいで、落ち着かない。




