45. 緊急女子(?)会
……朝から散々だった。
間違えて出勤してマチルダさんに注意されて、帰ろうとしたらオルトロスにぶつかって、迷った末に転んでジョンをバラバラにして。
それもこれも全部、昨日魔王と事故で……。ああああ思い出すだけで頭が爆ぜそう。
「……ちょっと、ねえ、聞こえてる? エリザベスっ!」
気が付いたら壁の前で突っ立っていた。何かに髪を引っ張られている。
「ジュリエット?」
「無視するなんて酷いじゃ……あらやだアナタ、何かあったのね♡」
目が合っただけで何かピンと来たらしいジュリエットが野太い声でキャーキャー言っている。
寮の部屋まで案内させられ、お茶を淹れさせられた。そのうちにバジリスクがやってきて勝手に飲み始めた。おかしい、私が部屋の主のはずなのに。
そしてどうやらこれは女子会とやららしい。果たしてジュリエットは女子なのか。というかそこ仲良かったの。
「それでぇ? 何があったのかしら」
「……別に」
爛々とした目でじっと見てくる二人に、なんとなく顔を逸らす。
「別にじゃないでしょ、別にじゃ!」
「さっさと話した方が身のためよ」
目の前で飛ばれ、肩を揺らされ。とにかく騒がしい。
「な、なんでそんなに楽しそうなのよ!」
「恋バナが楽しくないわけじゃない」
「しかも小娘のとなれば余計よぉ」
うわっ……。というか恋って……。あぅ……。
どうせ話すまで解放してくれないだろうし、私も話しちゃった方がいっそ楽になるかもしれない。
「その、えと、事故で」
「「事故でぇ??」」
「キ、キスしちゃって……」
「「キャーーーーーー!!!」」
黄色い歓声のはずが野太いしねちっこいしで頭がバグりそうになる。
「なぁにアナタ急展開じゃない♡」
「で、どうなったのか早く言いなさい」
より一層詰めてくる二人。
ああもうやだこの空気。恥ずかしさとこそばゆさで床に転がって暴れたくなってくる。
「責任取るとか言われたから……と、友達になった」
部屋は静まり返った。二人が顔を見合わせる。
「……まずはお友達から、とかそういうやつ?」
「付き合うとか恋とかよくわからないし、そもそも友達もいないのにってことで」
「まあそこは置いておくわ。じゃあキスしただけぇ?」
「だけじゃないわよ、大事件よ」
そう言い返せば、盛大なため息を吐かれた。なんなんだこいつら。この世界に生を受けて早十八年。友達すらいなかったのよこちとら。
「はーーーつまんないっ! まあ何かあったら相談しなさいよ♡」
「小娘と恋バナなんて百年早かったかもしれないわぁ」
言い返すこともできず黙っていると、二人は私の存在をすっかり忘れて雑談し始めた。くっ!
「で、バジリスク様はまだ新しい彼氏作ってないの? 過去最長じゃない?」
「なんだか忘れられないのよねぇ。当分いいかもしれないわぁ」
「やだ、そんなにいい男だったわけ?」
「まぁねぇ~」
すごい疎外感。恋バナもできなくて悪かったわね。でも私は浮気された上に別れてなんてないし。友達だってできたし!
……だから話に入れないのか。
「ああ、そういえばグリフォンが負けたらしいわぁ。いい気味」
「いい気味ってバジリスク様ねぇ……。城内決戦もあり得るってこと?」
「あの聖女様も、さすがにギガンテスちゃんに勝てるわけないわよぉ」
「そうね! ギガ様が負けるわけないわ!」
グリフォンって、あの四天王の? え、負けたの?
そして話を聞く限り、もしかして四天王って一枚岩じゃない?
「バジリスクはグリフォンのこと嫌いなの?」
「あの堅い態度が気に食わないのよぉ。四天王の中では新入りのくせに生意気で」
恨みつらみがあるらしく、お酒かって感じに紅茶を飲み干すバジリスク。
「小娘も気をつけなさい。あいつの予算管理は血も涙もないわよ」




