42. 即・オチ・2コマ☆
「やっと、大事なことに気づいたようね」
ギガンテスと和解して数日が経って、いつも通りのお昼営業終わり。洗い物をしている私の頬をジュリエットが揶揄うようにつつく。正直うざい、けどおかげで気づけたのも事実。
「ええ。私、魔……」
「真剣に悩みすぎちゃいけないのよ。眉間の皴は美容の大敵だって、この件でよくわかったでしょ? でもまだまだね、隈が残ってるわ♡」
え、ジュリエットの言ってた間違ってることって、単なる美意識だったの。なんか、損した気分。
「魔王様と二人にダンジョンに行くことになったんでしょお。乙女として、ちゃんと万全の状態で行くのよ」
男だけど女のピクシーに乙女とか言われるって……。というか。
「乙女と仕事に何の関係があるのよ」
あの後話を聞くと、どうやら魔王もダンジョンに用事があるらしく、危険なのと一応生贄だからお目付け役が必要ということもあって、一緒に行くことになった。ただそれだけなのに、なんでジュリエットはニヤニヤしてるわけ?
「アタシはタイプじゃないけど、魔王様って美形じゃない。玉の輿だし、人気があるのよォ。ファンクラブのやつらがこのこと聞いたら、大変だわ~」
「はー。それが?」
「イケメンとデートするのに芋でいるんじゃないわよってハ・ナ・シ!」
デート。デーツの間違いか何か? 芋はおいしいけども?
「ってアナタどうしたのよ」
「ねぇジュリエット、デートって、何?」
首からギギギって変な音がした。
前世では恋人どころか友達すらおらず、今世は王太子の婚約者でありながらも形式だけ。色恋なんぞフィクションか、自分には縁のないものだと思ってた。孤独死ってどうすれば避けれらるんだろうとか思ってた。
「アナタにはまだ早かったわね……。忘れなさい」
呆然としていると、同情するかのように小さすぎる手で肩を叩かれる。なんか、悲しい。いや、それに誰と行くかよりも重要なことが……。
「エリザベス様ーー!! なんかおやつありませんかーー!?」
バンッとドアが開いて、ジョンがスキップしながら入ってきた。
タイミングがいいんだか悪いんだか。
「あんたまた休憩室のお菓子もらいに来たの? 仕事しなさいよ」
「えっへへー!! オイラ今日は全休なんだー!!」
単に休み自慢しに来ただけだった。
ちょうどお皿を拭き終わったのもあって、早めに休憩を取らせてもらうことにした。休憩室の真ん中に置いてあるハナさんお手製のクッキーが入った缶を開ける。ご自由にどうぞ、とはいえジョンが食べ過ぎないか見張らないと。
「──というわけで、エリザベスったら魔王様とダンジョンに行くんですって」
「っエリザベス様が……? ダンジョンの魔物たちかわいそう」
「どーゆー意味よ、それ」
八枚目のクッキーに手を伸ばそうとしているジョンの手をはたき落とす。そろそろ休憩時間も終わりそうなところで、休憩室のドアが開いた。
「あっ、お疲れさ……」
「ダンジョンに行くぞ」
入れ替わりで休憩に入るマチルダさん達かと思ったら、なぜか魔王。いつも食堂の方だったからなんか新鮮……じゃなくて。
「きゅ、急すぎない?」
確かにいつ行くかは聞かされていなかったけれど、まさか今からだなんて。噂をすれば影のレベルじゃない。
ジョンは状況がつかめずにアホな顔をしてるし、ジュリエットは目を丸くしている。かくいう私もポカン。
「俺の用事の関係で今からになった」
有無を言わさずワープさせられ、謁見室の玉座の前へ。
転生者の私でも少し緊張する。だって、霧のダンジョンはエンドコンテンツ。つまりクリア後のやり込み要素。私はクリアしたところで死んだから、入るどころかマップ上で見たことすらない。
「時間が惜しい。行くぞ」
「え、ええ」
禍々しい魔法陣が現れて、暗転。
目を開ければそこには霧に包まれた巨大な塔があった。とにかく静かで、周りに何もない不気味さ。魔王城とはまた違った怖さだわ。
「くれぐれも離れるなよ」
「そんな命知らずなことしないわよ」
魔王にはそう言いつつも、内心恐る恐る足を踏み入れた……のだけど。
「っねえ、あの顔のついた巨大きのこは何? 食べられるの?」
「待てあれは毒だ。胞子をまき散らすからやめ……あああああ」




