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39. ギガンテス、もしや


 他にも破壊されたはずのテーブルがガタガタだけど直した跡があったり、救急セットが置いてあったり……。

 もしかしなくてもギガンテスがやったのよね?


「別に殺そうとしに来てたわけじゃない?」


 じゃあ何か。コミュ障……同類だったりして?

 そうなら、視線は話す機会を窺ってたんだろうし、破壊はただの怪力だったのかもしれない。何を言っても何も返してくれなかったのも頷ける。だってコミュ障は返事を考えているうちに相手の気分を損ねるんじゃないかって思うもの。


「私、ひどい勘違いを……いやでも破壊してたし……」


 私を憎んでいるのか、それともコミュ障で他に用があったのか。

 悩んでいても答えは出なくて、とにかく手を動かす。セルフサービス用の水を用意していたところでジュリエットがやってきた。


「ジュリエットおは」

「あーもう今日はカミソリの調子が悪くて髭がうまく剃れなかったわ! ってアナタ肘の怪我どうしたのよ」


 さすがのハイテンションというかなんというか。朝から手作りグリーンスムージーを飲んでるだけあって元気。そして情報量が多い。


「えっと、昨日ギガンテスが来」

「ギガ様がぁ!? 早く言いなさいよぉ!」


 ギ、ギガ様?

 超至近距離まで飛んできてキレているジュリエット。私の怪我の心配はどこへ。というか凄い勢いで遮られたんだけども、一体……。


「お会いできたかもしれないでしょ!? いいえ、会えなくても同じ空気吸えるだけで最高だわ」


 どういうこと??


「んもうずっと手を当てていたいような胸板、枕にしたくなる太い腕、素晴らしき肉体美。あれはもう芸術品よ。上腕二頭筋をすりすりしたい♡」


 色々と気持ち悪いことを言っているような……。てかあんたの場合小さすぎてもはやベッドでしょ。

 幻聴は無視して、ええとつまり、ギガンテスってジュリエットの推しらしい。ピクシーが巨人を推すことってあるのね。さすが魔王城。


「で、ギガ様は何しに来たわけ?」

「それが……」


 無言で入ってきてどんぶりやらテーブルを破壊したこと、でも今朝来たら直ってたことを話すと、ジュリエットは「キャー無口で愛おしい」とか「パワーオブパワー。カッコいいわ」やら言っていた。解せぬ。


「でもまあ、いい機会じゃないの?」

「どんぶりが壊れたことが?」

「違うわよ。テーブルのことよ」


 大きすぎるテーブルや、小さすぎるテーブルの謎の場所が、破壊されてよかった? どうして?


「まったく鈍いわね。それはどんなお客が使うのよ」


 大きすぎる人や小さすぎる……そう目の前のピクシーのような……。


「人型に近いお客が多いって気づかなかった?」


 ジュリエットに言われてから初めて気づいた。

 確かに魔王城には人型じゃない魔族もいる。なのに、食堂に来るのは人型ばっかりで。他の種族が使っているところを見たことがない。


「昔は、他の種族も食堂に来てたってこと?」

「そうね、来てたんじゃない?」


 ギガンテスはそのことを伝えようとして、うっかり破壊してしまった。

 でも、なんでギガンテスが気にするのか。


「ギガンテスも、食堂に来たかったのかしら」

「それか、他の魔族がそういう話をしてたのを聞いたんじゃないかしら」


 もしそうなら、新しくテーブルを用意して来られるようにしたい。それに、なんで来なくなったのかマチルダさん達に聞かなきゃいけない。

 看板メニューより先にやるべきことがあった。


「どんぶりはわからないけど、テーブルはこういうことだと思うわ。あの方はね、花を踏まないように歩くんだから」


 ドヤ顔で推しを語るジュリエット。

 やっぱりコミュ障なだけだった。全ては私の勘違い。


「日を改めてって言ったけれど、来るかしら……」


 わからなかったとはいえ、謝りたい。

 あと、どんぶりの破壊は一体どういうことだったのか聞きたい。


「来るわよ、きっと。そうじゃなきゃ困るわ」


 また私を揶揄うような顔してそう言うジュリエット。

 困るって何に……。

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