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32. お、お疲れ様です……


「話についていけないから!? 浮気していい理由にならないでしょう!! 何よ四股ってぇ!!」


 ダァンとテーブルを殴って、机に突っ伏すバジリスク。

 あれここ社員食堂よね?? 飲み屋じゃないわよね??


「元から遊びだったって素直に言いなさいよ、馬鹿ルーカスゥゥゥ!!」


 oh……。四股男さん、ルーカスって言うんだ。バジリスクと付き合うってことは魔族よね。怖いもの知らずだわ。というか女王様、ご自慢のモノクル割れてますよ。


「もううんざりなのよ! ここ百年間こんなことばっかりで!!」


 しかも割と長期間同じことを繰り返してるらしい。男運悪すぎない?


「っあのー」


 ここまでの話から予想するに。


「彼氏がいたけど浮気されて別れたの?」

「そうよ! 何か悪いかしらぁ?」


 えええええええ……。

 話が繋がらない。聖女戦は関係ないじゃないの。私は負けて悔しいのかと思って。


「しかもあの聖女とかいう女ったら、美形の男をたくさん引き連れてぇ!」


 そりゃそういうゲームだし、なんならエンディングでは選んだ誰かと結ばれるのよ。なんて口が裂けても言えない。


「そ、その聖女戦は?」

「そんなのどうでもいいのよぉ!」


 顔をぐしゃぐしゃにしてルーカスへの恨みつらみをブツブツ言っているバジリスク。いや、魔王軍としては最優先事項です。あなた四天王。


「いたぶってくるとかすぐ帰ってくるとか言ってたじゃない」

「っ仕方がないでしょ。なぜか力は出ないし、イケメンを見るとルーカスを思い出して腹が立つし」


 なぜか、じゃなくて徹夜のせいだとバジリスクの目の下、濃い隈が告げてくる。


「もしかして、私の依頼のせいで寝てなかったからじゃ……」

「馬鹿にしないでちょうだい。あの程度のこと一週間で終わるわよ。他の研究が進んでなかったの」


 よかった死罪にならなかった。そういえば珍しく難航してたってあの秘書さんが言ってたな。


「研究中にも、ルーカスが思い浮かんで……あの馬鹿ァァァ!!」


 ……ルーカスが戦犯すぎる。ほんとに誰なんだルーカス。

 完全無欠の天才四天王がまさかの痴情で陥落とか、世の中ってわからないものだなぁ。


「ん? 待って、じゃあ隠れてた理由は?」

「こんな惨めな姿で人前に出れるわけがないでしょ。セイント魔法のせいで魔力吸われちゃったのよ」


 聖魔法……。あの主人公特有のやつか。バジリスク戦で使えるようになるんだっけ。負けかけた時に天から授けられる激アツ展開。


「まあ、データは取ってきたし、魔王様が戦うときまでには無効化できる魔道具を作っておくから問題ないけれど」


 あの縛りプレイの原因、あんたか。前世で散々苦しめられた。聖魔法のレベル上げしたの無駄になって、初戦は第一形態の時点でボロ負け。

 怒ってるのか泣いてるのかよくわからなかったバジリスクだけど、自分の天才さに酔いしれていつもの調子に戻ってきた。


「……お、お疲れ様です」

「っふん!」


 落ち着いたらしいから厨房に行ってお味噌汁を温め直して持ってくる。バジリスクは卵焼きを食べていた。


「……美味しいじゃない」


 出汁と砂糖の優しい甘さで頬が緩まない人はいない。

 少し冷めて艶のある卵焼き。箸で掴むとふんわり凹む。そしてそのふんわりの秘訣こそがマヨネーズに含まれるお酢なの。


「丸呑みしなきゃ最初の一個目からそうだったわよ。はい、味噌汁」


 素直に飲んで少しした後にほぅっとため息。五臓六腑に沁みるあの感覚が、いいのよねぇ。味噌汁特有の安心感っていうのがあるのよ。


「……料理“は“そこそこできるようねぇ。資料は杜撰で、思いついたままに書いた子供の落書きのようだったけれど」


 そっぽを向いてそう言うバジリスク。言葉通りに受け取ったら嫌味だけれど、これって。


「料理が気に入ったってこと?」

「……そこじゃないわよ。部屋の中で栽培なんて馬鹿げてるって言ったの。随分と自信家ねぇ。私は解けない問題を求めているから、あのくらい馬鹿げていた方がいいけれど」


 つまり自分にはない発想だったわけね。そりゃ別世界の叡智だから当たり前だけども。


「とはいえ、作ってあげてもいい程度だっただけよ。勘違いしないでちょうだい」


 うーんツンデレしてるなぁ。ちょこちょこ思ってたけど、バジリスクの方が悪役令嬢に向いてる気がする。


「はいはい。で、ルーカスはもういいの?」

「っお黙り。貸し一つ、よ」


 か、貸し……?

 頭によぎったのは現代での相棒たちだった。

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