14/33
第8話「悪役令嬢」
「『一生のお願い』です。アブデュル殿下、自害してください」
侍女に扮して忍び込んでいたアフロディーテの『お願い』に、
「分かった」
アブデュル殿下が拳銃を抜き、額に添えた。
「殿下、『一生のお願い』です! 死なないで!」
「『一生で一生のお願い』! ヘラ、その願いを取り消せ!」
――タァーン!
殿下が、頭部から血と脳症を噴出させた。
「あぁ、あぁぁ……」
わたくし――私はベッドから転げ落ち、殿下の亡骸を抱きしめる。
「なぜ……なぜ殺した、アフロディーテェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
「貴女が悪役令嬢だからですよ、ヘラ」
アフロディーテが、殿下の手指から拳銃を引きはがす。
「悪役令嬢は、破滅せねばならない。それが『アフロディーテ物語』のクリアフラグなのですから。ヘラ。ヘラ。ヘラ。悪役令嬢ヘラ。ゲームクリアのために死んで頂戴」