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その怪奇案件、私どもが頂戴いたします  作者: Kana
第一章 O中学校
3/4

違和感

 晴れているにも関わらず薄暗い山林をひたすらに進む。道路も所々整備が行き届いておらず、砂利道のようになっている場所やガードレールがなぎ倒されている場所があったりした。本当にこの先に学校などあるのだろうか。ふと、そんな不安が頭をよぎる。

「障子さん、これ道あってます?」

「ナビ通りに進んでるから、そのはずなんだがな…」

「そう…ですか。なら、いいんですけどね…」

藤堂の様子はいつもの元気千万な姿とは似ても似つかなかった。それだけ、不安ということなのだろう。

「まるで異世界にでも迷い込んでしまったかのようですね。不気味です」

「そうだな…」

真壁の言う「異世界」という言葉が今の状況に一番似合っている気がした。

「ところで気になったんですけど…。多すぎません?」

「何のこと…だ?」

一瞬、何のことか分からなかったが、言われてみると、カーブに差し掛かる度に目につく物があった。

「あれですよ、あれ」

真壁が指を指す。その先にあるのは…。

 

 お地蔵様。


確かに多過ぎる。ここまでに数十体はあったのではないか…。

「ほらあれなんて、首無し…ですよ」

「…」

得体のしれない寒気を感じる。それが良くないもの。だだそれだけは分かる。

 数十分走ると開けた道へと抜けた。村か何かだろうか。

「障子さん! 学校ってあれじゃないですか?」

「お! あれだあれだ。やっと、着いたか」

見ると、数軒の建物の中に一際目立つものがあった。

「いやー雰囲気ありますね…。あれならお化けの一つやニつ出ても仕方ありませんわ…」

藤堂はそのそれを見て、目を真ん丸くしていた。

「あれ…本当に学校なんですかね…」

「ナビが言うにはそうらしい…」

真壁は怪訝そうにそれを見詰めていた。真壁の見るそれは学校にしてはあまり大きくはないが、形は確かに学校なのだ。だが、それを作り上げている壁やら屋根は普通の学校とは少し違った。全部、木なのだ。日本の建物は基本、木造建築のため、これだけ聞くと違和感は無いかもしれないが、それは本当に全てが木、木だけしかない。木目やら木特有の線などが丸見え状態なのである。明らかに、都会の学校とは様子が違った。

「ここであたふたしたところで何も始まらない。取り敢えず中に入るぞ。依頼者さんも待っているはずだ」

「障子さん、肝が据わってますねー。少しは恐怖というものを感じてはいかがです?」

藤堂は小馬鹿にしたようにそう言った。

「余計なお世話だ」

見渡しても田んぼばかり。学校の駐車場らしきものは見つからない。

「駐車場が無さそうだからあぜ道の脇にでも車を停めるとしよう」

「そうしましょう」

私は右側にあるあぜ道へとハンドルを切ろうとした。だが、私達はあるものに釘付けになってしまう。あぜ道に立つ、一本の電柱。そこには顔写真の付きで一枚の紙が貼り付けられていた。その写真に写る少女の笑顔は年相応の無邪気さを感じさせた。


 大田ひかる 当時十三歳

 二◯二二年八月二日に登校したのを最後に行方不 

 明となっております。

 何か些細なことでもいいので、情報をお持ちの方

 は下記の電話番号にお電話ください。

 ☓☓☓ー☓☓☓☓ー☓☓☓☓ 


行方不明者を探す張り紙だったようだ。

「行方不明者ですか…。まだ若いのに…。見つかるといいですね」

「そう…だな」

物騒な世の中になったものだ。私はつくづく、そう感じるのだった。

『あれ…』

八月に登校…? 何故、登校なんてしたのだろうか…。夏休み中のはずだろうに。不思議に感じたが、土地が違ければ生活も違う。そう考えれば違和感は無かった。おそらく、夏季登校日か何かだったのか。部活があったのか。もしくは、ここら辺は夏休みの開始が通常より遅めかの三択だろう。

 私達は車を降りて、学校の校門の方へ向かう。どうやら、休日だからか校門には鍵がかかっているようだ。

「これじゃ入れないじゃん」

「困ったな…」

そのとき、そんな私達を見かねたのか一人の男性がこちらへ掛けてきた。

「あれ…誰ですかね?」

「佐々木さんかな? 顔を知らないから定かじゃないが」

「多分、そうじゃないですかね…」

すると、向こうから声をかけられた。

「皆さーん、お待ちしておりました。今、鍵を開けますね」

ガチャ。

「ありがとうございます。私、怪奇現象調査部の部長をしております怨霊と申します。それと、こちらの二人はメンバーの本郷と真壁です」

「聞いてますよ。こんなところまで遥々とお越しいただいてありがとうございます。私、この学校の体育教師をしております佐々木と申します」

佐々木さんは私達に深々とお辞儀をする。私達もそれに応えた。

「いやー本当にありがとうございます。困ってたんですよ」

「いやいやとんでもない。さあ、職員室に案内します。こちらへどうぞ」

感じのいい人で良かった。校舎がこんなだからてっきり…。

ふと、プールの方に目を向ける。

「あれ…」

「どうしました障子さん?」

「いや…何でもない」

「変な障子さんですね…」

「怨霊さんどうなさったんですか?」

続けて佐々木さんが聞いてきた。

「今日って登校している生徒さんっているんですか?」

「いや、いないと思いますよ。日曜日はどこの部活も活動してませんし…」

「そう…ですか」

おかしい。何か、根本的な何かが引っ掛かる。

「障子さん、様子が変ですけど、やっぱ何かあったんじゃないですか?」

藤堂が聞く。

「いや…人影を見た気がすんだよ」

「なんですかそれ…怖いですよ。でも、きっと気のせいですって」

「だといいが…」

私は煮え切らない気持ちで昇降口へと向かっていった。


                  第三話 完

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