実家
リリアーナは実家に身を寄せていた。
突然離縁して実家に帰ってきたリリアーナに、両親はとても驚いていたが深く追求することはなかった。
10歳下の弟もちょうどアカデミーの休暇期間で家に帰ってきていたため、久しぶりに会うことができた。
「姉さま!?なんで?なんで家にいるの?帰ってきたの?いつまでいられる?」
弟のフェルナンドは、くるくるの淡い金髪に翡翠色の目のかわいいらしい見た目をしている。
まだまだ姉に甘えたい盛りで、結婚する前はよくリリアーナの周りをウロチョロとまとわりついていた。
さすがにフェルナンドは突然帰ってきた姉に訳を聞きたがっていたが、話すわけにはいかなかった。
(こんな悲惨な結婚話を聞かされたら、将来結婚したくないなんて言うかもしれないものね…。)
実家に帰ってからリリアーナは以外にも忙しく過ごしていた。
リリアーナはもともと才女とも言われており、父の領地の仕事を補助したりフェルナンドに勉強を教えたりとやることは山ほどあるのだ。
それにリリアーナにしてみれば忙しいほうが気が紛れてよかった。
暇になってしまうとだめだ。
たとえば夜、一人でベッドに入るときにふとスチュワートのことを思い出しては胸が締め付けられる。
リリアーナはスチュワートにちゃんと恋をしていたのだから。
けれどその恋は無残に砕けて修復できなくなってしまった。
この恋は全部、欠片も残さず宝箱にしまって胸の奥に沈めた。
もう二度とあんな風に無邪気に恋はできないことを思って、リリアーナはまたちょっと泣いた。
こっそり泣いて少しすっきりした翌日、なぜかリリアーナの前には元旦那が座っていた。
「…?」