結婚生活の終わり
嫌いな妻の顔をみるのはたいそうつらいだろうと、リリアーナは徹底的に夫を避け続けた。
時折夫が何か言いたそうにしていたが、リリアーナは決して目を合わせることなく、夫が立ち去るのを待った。
そんなリリアーナを見て、夫が話しかけることは終ぞなかった。
そしてリリアーナは離縁書に自分の記入するべきところはすべて埋め、あとはスチュワートが押印するだけにして執事へ書類を手渡した。
「セバスチャン、この書類に旦那様の押印をもらってから提出しておいてもらえる?」
書類の提出くらいはしてもらっても罪はないだろう。
「はい…。しかし、奥様…。本当に旦那様と離縁なさるので?」
「そうよ。セバスチャン、本当はあなたが一番わかっていたんじゃない?旦那様が私を邪魔だと思っていたことは。」
「…。」
夫のことを一番よくわかっているだろう彼からは、否定の言葉もでなかった。
「セバスチャン、今日までありがとう。長く居られなくてごめんなさい。さようなら。」
それから世話になった数人の使用人にそれぞれ挨拶をかわし、リリアーナは半年という短い時間を過ごした屋敷を後にした。
当然ながら、スチュワートは見送りにこなかった。
本日は2話投稿でした。