胸を張って言うことですか!
オズワルト公爵直属の上司である王太子殿下に離縁したことを伝えていないなど、ありえるのだろうか?
いやな予感がしてリリアーナは、スチュワートのほうを見た。
元旦那は不自然に顔を背けている。
「…オズワルト公爵?」
ひやりとした温度でリリアーナが呼びかけると、スチュワートは肩をびくっと震わせそぉ~っとリリアーナのほうへ体を向ける。
「…はい。」
「わたくしは確かにあなた様に離縁書をお渡しいたしましたわね?それは、きちんと提出されましたでしょうか」
「…まだ、です。」
リリアーナは怒りで頭に血が上っていくのを感じた。
「なぜですか?わたくしはあなたの望み通りにしたまでですが?一刻も早く離縁したかったのでしょう?」
「…」
「わたくし、ぐずぐずと女々しい方は嫌いなんです。さっさと書類を書いていただけます?今度は忘れないようにわたくしが!提出に!行きますので!」
「っここに書類はない!」
「なんで威張ってるんですか!?」
「君が女々しいのは嫌いだといったから!」
「だからって胸張って言っていいわけないでしょ!?」
(くぅ…!怒りでめまいがするなんて初めてよ!あぁ!手に力を籠めすぎて扇が折れそう!)
普段こんなに大声を出すことなどないリリアーナはすぐに息が切れてしまう。
スチュワートに対して怒鳴るなど今日が初めてだ。
「まぁまぁ、お二人さん。そんなに興奮しないで。とにかく、その書類はスチュワートが持っているんだね?」
「…はい。家にあります。」
「じゃあ、すぐに持ってこさせて。」
「しかし、殿下!」
「んー?あ、リリアーナ嬢は今日はもう王宮に泊まりな?書類持ってこさせるにしても、今日中には無理だろうから。」
「…はぁ。わかりました。ではお世話になります。」
「うん。素直でよろしい!」
こうしてリリアーナは書類を受け取るまで王宮に留まることになった。