発動、しちゃおうかな?
それから1か月ほど経ったころだった。
再びリリアーナの頭を悩ませることが起きた。
「や!リリアーナ嬢元気そうでなにより。」
「王太子殿下…?」
王太子の突然の来訪である。
こちらの困惑などお構いなしの王太子は、自分が通された客室の中をぐるぐると歩き回り、壺を触ったり壁を触ったりと自由に見学している。
「ふーん、いい部屋だね。」
「ありがとうございます…?」
(絶対王宮のほうがいい部屋あるでしょ。)
「あの、こちらにはどういった…?」
「あ!そうそう!本題を忘れるところだった!リリアーナ嬢、申し訳ないんだけど、今から僕と一緒に王宮に来てくれない?」
「え、嫌です。」
「断られるとは思わなかった…。」
「だっていきなり…。怖いです。」
「なにもしないよ?怖いことないよ?」
「悪い人はだいたいそう言うんですよ。」
「ひどい!」
そこで王太子はしくしくと泣き真似をしてみせた。顔はいいだけになんだかこちらが悪いような気がしてくる。
「はぁ~俺の泣き落としが通用しないとはな。」
「泣いてないじゃないですか。」
「じゃあ、仕方ない。」
椅子に座りなおし、王太子はゆっくりと長い足を組み嫣然と微笑んだ。
「権力、発動しちゃおうかな?」